貴景勝が横綱・稀勢の里の引退理由となった左大胸筋を負傷、またも将来に不安が立ち込める結果に

 2019年の大相撲・秋場所千秋楽の優勝決定戦で左胸を負傷した貴景勝が左大胸筋の肉離れを負っていたことが明らかになったと NHK が伝えています。

 肉離れは「部分断裂」ですが、程度が重ければ断裂と変わりありません。そのため、回復状況によっては横綱・稀勢の里と同じ結果になる恐れがあるとでしょう。

 

 関脇 貴景勝は、22日の千秋楽で行われた関脇 御嶽海との優勝決定戦で左胸付近を痛めていました。

 師匠の千賀ノ浦親方は、東京 台東区の千賀ノ浦部屋で報道陣の取材に応じ、貴景勝が23日都内の病院で検査を受けたことを明らかにしました。

 そのうえで「左大胸筋の肉離れで、治療におよそ6週間かかるということだった。手術は今のところ考えておらず治療とリハビリに時間をかけるしかない」と説明しました。

 千賀ノ浦親方によりますと、貴景勝は来月5日から始まる秋巡業を休場する見込みです。

 

“綱取り” を狙うのであれば、怪我を治しておく必要がある

 関脇・貴景勝は秋場所で10勝以上すれば、特例での大関復帰が決まる状況にあり、千秋楽を迎えた時点で来場所の大関復帰を決めていました。

 11月の九州場所では「大関・貴景勝」として、“綱取り” の起点を作ることが期待されていたと言えます。しかし、そのためには「万全に近い状態で九州場所を迎えること」が必要不可欠です。

 綱取りには「大関の地位で優勝がそれに準じる成績を2場所連続で残すこと」が求められます。したがって、状態に不安のある中で12勝以上の成績を残すハードルが高いことは言うまでもありません。

 貴景勝の場合は「6週間の治療を要する」との見立てですから、休場を選択することも視野に入れるべきと言えるでしょう。

 

負傷箇所は稀勢の里と同じだが、相撲の取口が稀勢の里と異なることが救い

 「左大胸筋の負傷」と言いますと、横綱・稀勢の里が引退する要因にもなった大怪我です。そのため、同様の悪夢が貴景勝に襲いかかることを考えたファンもいることでしょう。

 ただ、稀勢の里と貴景勝の取口は大きく異なるため、稀勢の里ほどの影響は出ないと考えられます

 第72代横綱・稀勢の里は『左四つ』や『左おっつけ』を武器にした力士で、「左を捻じ込める(≒ 差せる)か」が勝敗の大きな分岐点でした。「強烈な威力を持った『左』に依存した取口をしていた力士が負傷によって “最大の強み” を失ったのですから、致命なダメージを受けるのは当然です。

 一方で貴景勝は『突き押し』に特化した力士で、まわしを必要としません。左大胸筋の負傷で「左の突きの威力が低下する」ことはあっても、頭や右での突きで相手を崩せます。したがって、「左手の可動域が確保されているか」の方が影響度としては大きいと言えるでしょう。

 

貴景勝は「右ひざのケア等に充てる期間」と完全に割り切っても良いのでは?

 左大胸筋を部分断裂した貴景勝は「治療に6週間を要する」との診断が下されたと報じられています。ただ、これは順調に回復した場合の話で、稀勢の里のように(肉が厚すぎて) MRI に映らないなどのケースも想定する必要があるはずです。

 したがって、出場できるかが微妙な九州場所は休場を視野に入れるべきです。

 貴景勝の懸念は「右ひざの回復状況」であり、こちらの方がキャリアの致命傷となる可能性があるからです。そのため、「秋場所を戦い抜いた右ひざの徹底したケアを優先する」と割り切り、年内は「右ひざのケアと左大胸筋の治療」に専念すると決断すべきでしょう。

 大関には最高位に上り詰める資格が与えられますし、貴景勝は最高位を狙える力士です。「横綱不在の場所」とは言え、復帰直後の場所で12勝をした実績がそれを物語っています。

 連続優勝をするために必要な準備・調整期間と割り切り、自らのコンディション作りをどれだけ優先できるかに賭かっていると言えるのではないでしょうか。