安倍首相が「温室効果ガス削減の技術開発に今後10年で30兆円の投資」を表明も、原発再稼働で得られる効果との比較を怠るのは欺瞞

 NHK によりますと、安倍首相が「環境保護と経済成長の好循環の実現」を念頭に今後10年で官民合わせて30兆円の投資をする考えを明らかにしたとのことです。

 「この方針は最善策ではない」と言えるでしょう。なぜなら、原子力発電所を再稼働すれば、年3兆円の燃料費を削減できる上、その分の温室効果ガスも削減できるからです。

 

 環境保護と経済成長の好循環の実現に向けて、安倍総理大臣は来年春に、クリーンエネルギーに関する国際的な研究拠点を立ち上げるとともに、温室効果ガスの削減につながる技術開発に、今後10年間で官民合わせて30兆円を投資する考えを明らかにしました。

 (中略)

 安倍総理大臣は「脱炭素社会」の実現を急ぐ必要があるとして「世界の英知を結集しなければならない。G20各国の研究機関をつなぎ、12万人の研究者の知見をこの分野に集中する」と述べ、水素エネルギーのコスト削減など、クリーンエネルギーに関する国際的な研究の拠点を来年春に立ち上げる方針を示しました。

 そのうえで、温室効果ガスの削減につながる技術開発に関する政府の戦略をまとめ、この分野に今後10年間で官民合わせて30兆円を投資する考えを明らかにしました。

 

原発停止による追加の火力発電用燃料費は年3兆円

 東日本大震災以降、日本の行政は原子力発電所の運転を法的根拠のないまま停止に追い込みました。それにより、火力発電による発電量が増加。

 追加の燃料費は年3兆円を超え、温室効果ガスである CO2 の排出量も 1.1 億トン分の増加を記録する事態となったのです。

 つまり、「今後10年で30兆円の投資」に意欲を示す前に「1年3兆円規模の追加燃料費を要していること」の是正に乗り出さなければなりません。なぜなら、毎年それだけのペースで国富が流出しているからです。

 ただ、この問題は「法令に従い、定期点検が完了した原子力発電所から運転を順次再開させて下さい」と言えば解決します。それをしていないのですから、安倍政権は怠惰と言われても止むを得ないでしょう。

 

「原発の運転を再開させ、電気代を押し下げること」が最も現実的かつ効果的な対策

 G20 で歩調を合わせた方針を打ち出すのであれば、「原子力発電所をフル活用する」を共同声明で打ち出すことが最も現実的です。

 しかし、民主主義国家は原発に過剰なまでの安全規制を設け、自ら経済力を削いでいる状況です。これでは民間が技術開発に費やす余裕を持つことは難しく、『脱炭素社会』は実現することなく頓挫することでしょう。

 なぜなら、現時点で確立されている原子力発電を活用するどころか全否定し、発電コストが高額で不安定な再生可能エネルギーに “オールイン” する方針で突き進もうとしているからです。

 責任を取る必要のない活動家は自らの懐が潤うため、『脱炭素社会』を猛プッシュします。また、選挙を睨んでポピュリズムに乗る政治家も現れることでしょう。その代償は一般人に押し付けられることになるのです。

 「既存技術を有効活用することで研究開発費を捻出する」という考えは軽視されるべきではないと言えるでしょう。

 

 利用可能な資源を有効活用せず、その分のビハインドを背負った上で実用化の目処の立っていない技術に大金を投じることはギャンブルです。

 「原発などの既存技術を上回る」を目標にした現実的なアプローチが採られるべきであり、『再生可能エネ』を過剰評価した政策は自制しなければならないと言えるのではないでしょうか。