EU がイギリスの離脱期間を最大3ヶ月延長することを全会一致で決定、イギリス議会総選挙の可能性も浮上する

 NHK によりますと、イギリスを除く EU の27の加盟国が最大で来年1月末までの離脱期限の延期を認めることで合意したとのことです。

 これにより、今月末のハードブレジット(=合意なき離脱)は回避されることになりました。しかし、現状は期限が少し先延ばしになっただけであり、根本的な解決はされていません。

 ジョンソン首相は総選挙も視野に入れていますが、議会が応じるかは不透明です。新たに取りまとめられた離脱協定案が可決される見込みは低いため、混沌が続くと予想されます。

 

 EUは28日午前、日本時間の午後6時からイギリスを除く27の加盟国の大使が集まる会合を開いて、イギリス政府から要請があった離脱期限の延期を認めるかどうか協議しました。

 EUのトゥスク大統領はツイッターで、「EUの27か国がもっとも長くて来年1月末までの延期を認めることで合意した」と発表し、今後、書面による正式な手続きを進めるとしています。

 これを受けて今月末の「合意なき離脱」は避けられる見通しとなりました。

 

EU は「イギリスの EU 離脱期限の延長」に踏み切るものの、イギリス側が離脱を完遂する保証はない

 イギリスを除く EU 加盟国(=27ヵ国)は「イギリスの EU 離脱期限の延長」に合意しました。最大で3ヶ月ですが、『合意なき離脱』を引き起こした犯人にされることは回避したと言えるでしょう。

 これにより、“ボール” はイギリス側に渡ることになりました。

 ただ、イギリスが結論を出す可能性は低いと思われます。ジョンソン首相が取りまとめた離脱協定案に議会は反対していますし、ジョンソン首相が12月の実施を目論む総選挙にも否定的です。

 「総論賛成・各論反対」により時間だけが経過する可能性が現時点では高く、離脱を期限を(最大で)3ヶ月先に伸ばしたとしても、状況が変化する見込みは小さいと考えられます。

 

「12月に総選挙の実施」を図るジョンソン首相

 イギリスのジョンソン首相は「12月の総選挙」を考えています。これは解散・総選挙で『EU 離脱』を掲げる与党・保守党などが勝利すれば、離脱協定案を実施するなどの形で離脱を実現できる可能性が高まるからです。

 しかし、そのためには「議会を解散すること」が大前提です。ところが、イギリスで議会・下院を解散することは簡単ではありません。

 日本は「衆院の解散権は総理の専権事項」ですが、イギリスでは「議会での議決以外で首相は解散権を行使できない」と改められています。そのため、現在のように少数与党が巻き返しを図った解散・総選挙に打って出ることはイギリスでは議席数の関係で難しい状況なのです。

 特に、離脱協定案に反対するだけの野党第1党の労働党は議席数を減らす恐れがあることから、解散については反対の立場を採ることでしょう。その結果、時間だけが経過する事態を招いてしまうことが予想されるのです。

 

イギリスの議会総選挙が決定しない限り、大きな動きが生じる可能性は低い

 イギリスの EU 離脱ですが、次に大きな動きが起きるのは「イギリスの議会総選挙が決定した時」でしょう。EU 側が『ジョンソン首相が提示した離脱協定案』を容認する姿勢を採ったため、可能な譲歩は既に行っています。

 したがって、イギリス側が時間を無駄に消費しても「EU はできることをすべてやった」と主張することができます。これはハードブレジットになった場合でも「イギリス(議会)の責任」と言えるため、EU 側が汗をかく必要がなくなったと言えるでしょう。

 一方でジョンソン首相も「やるべきことはやった」と言える状況にあります。EU とは『新しい離脱協定案』で合意していますし、議会には『政権の進退を賭けた解散総選挙』を要求しています。

 ただ、イギリス議会が「『新しい離脱協定案』は反対、『解散総選挙』は困る」と矢面に立つことを拒んでいるのです。この状況が続く限りは時間だけが経過することは避けられません。

 勝てる保証のない選挙を歓迎する “現職議員” はいないでしょう。そのため、ジョンソン首相の「解散総選挙での勝利から離脱協定案を議会で承認する」との目論見は頓挫した状態になる可能性が高いと現段階では言えるのではないでしょうか。