首里城の火災: 出火原因と防火対策の確認が最優先だが、再建費用を地域振興予算から拠出できることは不幸中の幸いだろう

 10月31日未明に発生した火災で主要な建物が焼失した首里城で、警察が現場検証を行う予定であることを NHK が報じています。

 観光の目玉スポットが全焼したことは大きな痛手ですが、火災原因と特定と採られていた防火対策の確認は必要不可欠です。再建した首里城が同様の理由で焼失しては話になりませんし、再発防止策を講じることが欠かせないからです。

 ただ、再建費用の心配をする必要はないでしょう。なぜなら、(毎年3000億円規模で得ている)地域振興予算の使用用途に合致していると主張できるため、この点は不幸中の幸いと言えるでしょう。

 

 那覇市にある「世界遺産」の首里城跡に復元された首里城で起きた大規模な火災では、「正殿」など主要な建物が全焼し、琉球王国時代から伝わる貴重な収蔵品の多くが焼けたものとみられています。警察などは、あす(1日)午前から現場で検証を行うなどして詳しい出火原因を調べることにしています。

 

首里城火災の出火原因と防火対策を確認することが最優先事項

 まずは火災原因となった出火元の特定が最優先です。警察が首里城で発生した火災の現場検証を始める予定であり、火元は(ある程度)特定されるでしょう。

 現場は『首里城祭』のための照明機材など準備されていましたが、火災との因果関係は不明です。

 この点は警察の捜査で明らかになるはずです。それと並行して「防火対策が機能していたのか」を確認する必要もあります。

 沖縄県は1日、沖縄美ら海水族館(本部町)と首里城正殿などの有料区域(那覇市)の管理を始めた。今後は県が指定管理者に指定した沖縄美ら島財団(本部町)が両施設の実質的な管理・運営を担う。指定管理の期間は2019年2月1日から23年1月31日まで。これまで両施設は国が管理してきたが、県へ管理が移行した。

 琉球新報によりますと、首里城の管理・運営責任は沖縄県にあります。どのような防火対策が採られていたかを確認する必要がありますし、今回の火災に対してどのように機能していたのかをチェックする必要があると言えるでしょう。

 

「清水寺のような防火対策が採られていたか」が焦点

 次に焦点となるのは「首里城の防火対策」です。世界遺産であるのは『首里城跡』であり、首里城跡の上に復元された首里城は世界遺産ではないのです。この点は議論をする上で認識しておくことが前提となります。

 首里城には火災の初期消火で威力を発揮するスプリンターの設置義務はありませんが、それと同等の消火能力を備えて運用されているべきだったと言えるでしょう。

 そのため、比較対象となるのは「世界文化遺産に登録されている京都の清水寺」です。寺院や周辺住民が任意団体を結成して防災活動に当たっていますし、京都市消防局も訓練を行っているからです。

画像:清水寺での防火訓練の様子

 首里城の建物周辺には消火栓設備はあったと思われますが、それを活用できる人材の育成がきちんと行われていなければ宝の持ち腐れになるからです。

 「消火に必要な体制が構築され、運用されていたか」を調査し、その結果を公表することが重要なのは言うまでもありません。現状では「適切な管理体制だったのか」も疑われている状況であり、疑念は1つずつ晴らしていく必要があるからです。

 

「地域振興予算から『首里城の再建費用』を拠出すべき」と主張できることは不幸中の幸い

 観光の目玉スポットが火災で焼失してしまったことは沖縄にとって大きな痛手です。しかし、再建するための予算を拠出する目処が立っていることは「不幸中の幸い」と言えるでしょう。

 なぜなら、毎年3000億円規模の額になっている沖縄県向けの地域振興予算を使う十分な理由と言えるからです。

 首里城の復元に費やした費用は総額で240億円言われていますが、沖縄県が手にしている地域振興予算の年間額の10分の1にも満たない額です。したがって、「首里城の復元予算分を上乗せして欲しい」と沖縄県知事が政府に頭を下げれば、予算は簡単に得られるでしょう。

 その後は「政府から得た復元予算を使って沖縄県内の職人に仕事を発注すれば良い」のです。

 首里城の観光スポットとしての機能は低下しますが、県内に “新たな雇用” を作ることはできます。また、未完成の建築物でもスペインのバルセロナにあるサクラダファミリアのように見せ方の工夫次第で観光客を呼ぶことは可能です。

 沖縄は観光ビジネスに自信があることを度々発信しているのですから、影響は軽微なものに留まることでしょう。

 

 首里城を復元したとしても、原因が不明のままで防火対策が現状維持では再発のリスクは高いままです。まずは出火元の特定と現在の防火対策を踏まえ、有効な再発防止策を加える形での『首里城復元計画』を実施する必要があると言えるのではないでしょうか。