フィテッセと契約した本田圭佑、「ボランチとして東京五輪に出場し、久保や堂安を活かすことが理想」と抱負を述べる

 オランダのフィテッセと契約した本田圭佑選手が Abema TV に出演し、「ボランチとして東京五輪に出場する」との意気込みを語っています。

 「見返してやる」と言い切っていますから、高いモチベーションがあることは伺い知れます。しかし、拘ってきたトップ下ではなく、守備的 MF のボランチとして出場に意欲を見せたことは意外と言えるでしょう。

 その理由を考察したいと思います。

 

東京五輪の U-23 サッカー代表のトップ下は激戦区

 日本代表での本田選手の希望したポジションは「トップ下」でした。オリンピックに出場する U-23 日本代表にオーバーエイジ枠で加わる場合もトップ下で挑むことが有力と考えられたため、ボランチでの挑戦は意外と言えるでしょう。

 ただ、トップ下は「ハードルが高い」という現実があります。五輪メンバーに入るなら、トップ下よりもボランチの方が可能性が高いと考えるのは現実的と言えるはずです。

  • 五輪の登録メンバーはオーバーエイジ枠を含めて18名
  • U-23 日本代表の基本システムは 3-4-2-1

 この部分だけなら、本田選手がトップ下のシャドーとして計算される可能性は十分にあるように思われます。しかし、トップ下のポジションは「人材が豊富」であり、オーバーエイジ枠を使う必要がない現状があるのです。

堂安 律
(21, PSV)
フローニンゲンから PSV に移籍。A代表にも選出される実力者
久保 建英
(18, マジョルカ)
レアル・マドリードが保有権を持つ将来性が最も期待される攻撃的 MF。注目度は群を抜いて高い
三好 康児
(22, アントワープ)
U-23 日本代表で10番を背負い、攻撃を牽引してきた存在。計算できる選手
食野 亮太郎
(21, ハーツ)
マンチェスター・シティが保有権を持ち、ハーツで武者修行中。先月のブラジル遠征で頭角を示す

 控えのフィールドプレーヤーを6人しか登録できないため、トップ下のシャドーを務めることが有力視される上記4選手が全員選ばれるかは微妙です。1人外れたとしても不思議ではないでしょう。

 だから、本田選手が「トップ下」ではなく、「ボランチ」でオーバーエイジ枠に入ることを目論んでいると考えられるのです。

 

「『ボールを “タメれる” 選手』だから(選出される)価値がある」と考える本田圭佑

 本田選手がオリンピック代表に選出される自信を見せている理由は「他の候補選手とは異なる特性を有している」と考えているからでしょう。これは「テクニック・走力・球さばきが良い選手は多いがボールを “タメ” れる選手は少ない」と Abema TV で述べていたからです。

 ただ、この認識が的確であるかは不透明です。

 「ボールをタメること」は重要です。ボールをタメてキープをすることで相手選手を(本来のポジションから)誘き出すことになり、そうすることで相手の守備陣系が崩れることにもなるからです。

 しかし、誘い出す場所を間違えると大きな痛手を負うことになります。「ボールをタメる」のであれば、「相手のプレッシングの餌食になる」というリスクを取らなければならないからです。

 プレスに来る相手選手をギリギリまで引き付けた分だけ、相手の守備陣系は本来の形から崩れます。ただ、自分たちのリスクもそれだけ大きくなるのですから、どのポジションの選手が誘い出すかは重要な要素です。

 「前後左右からプレスの餌食になる可能性があるボランチ」にボールをタメる役割を任せるチームは皆無に近いでしょう。「背後を気にする必要のないセンターバック」か「タッチラインを利用できるサイドの選手」でなければ、“タメる能力” が評価されないことを認識する必要があるはずです。

 

「ボランチとして要求される守備力はあるのか」という問題もある

 また、問題となるのは本田選手に「ボランチとして要求される守備力があるのか」という点です。

 森保監督は東京オリンピックに臨む U-23 日本代表はダブルボランチを使うシステムを採用することが濃厚です。つまり、ボランチの2選手には「攻撃陣と DF 陣のサポートをする運動量や走力」が必然的に要求されることになります。

 “攻守に貢献できるボックス・トゥ・ボックスのボランチ” が今の U-23 日本代表にいるなら、本田選手を希望ポジションで起用することは可能でしょう。しかし、そのような選手は(A代表でも)見当たらないため、ボランチの2選手で攻守の仕事を分担することが不可避と言わざるを得ません。

 したがって、本田選手がボランチでプレーするなら、DF の盾として機能する守備力を持っていることが大前提です。バルセロナのような特殊チームでプレーする際はインターセプト能力が備わっていれば、フィジカル面が弱点になることはないでしょう。

 しかし、時間が限られる上に選手の入れ替えが頻発しやすい代表チームではチーム力を成熟させることは簡単ではありません。だから、ボランチとしての守備力が問われることになるのです。

 

 「東京オリンピックにオーバーエイジ枠で出場すること」が見返すための条件であるなら、「エールディビジ屈指のボランチ」として実績を残すことが不可欠です。

 まずは「昨シーズンまでヘーレンフェーンに所属していた小林祐希選手が残した成績を上回ること」が本田選手に課されたノルマと言えるのではないでしょうか。