秋季キャンプで山本昌臨時コーチの指導を受ける阪神・藤浪、来シーズンに捲土重来を果たせるかが注目点

 スポニチによりますと、復活を目指す阪神・藤浪晋太郎投手が「ボールの回転数」で進化を示しているとのことです。

 藤浪投手は制球が定まらず、自滅するパターンで苦しんでいます。ただ、高卒1年目のシーズンから先発投手として10勝をあげるなど、ポテンシャルは球界屈指です。

 そのため、制球面での課題を臨時コーチとして招かれている山本昌氏が克服するよう導くことができるかが大きな注目点と言えるでしょう。

 

 復活ロードを歩む阪神・藤浪が、ボールの「回転数」で進化を見せつけた。秋季キャンプで初めてトラックマンによる計測を行うと、シーズン中の平均1800回転から最高で2128回転へ急上昇していることが判明。キレキレの投球を披露した。

 (中略)

 臨時コーチを務める山本昌氏が「エグい球だな」と太鼓判を押した直球は平均でも今季を上回る1900回転後半をマーク。途中で抜け球や引っかけることもなく、威力ある投球で好感触だった。

 

藤浪投手の課題は「手首が寝ることで制球が定まらないこと」

 藤浪投手が抱えている課題は「制球が定まらないこと」ですが、その原因は「手首が寝ること」です。「手首が寝る」というのは野球用語であり、具体的には「ボールをリリースする際に手首が傾くこと」を意味します。

 この状態を説明するには『週刊ベースボール』で元阪神の藪恵壹氏が質問に回答するコラムで用いられている横山英史氏のイラストが分かりやすいと思われます。

画像:横山英史氏のイラスト

 要するに、藤浪投手はボールをリリースする際に手首が寝て(=傾いて)しまい、右手が正面を向いていないまま投げてしまっていたのです。だから、ボールがシュート回転してしまったり、右打者のインコースに抜けてしまったりしていたのでしょう。

 

手首が寝ることへの修正方法は知られているが、「効果的な対処策を選手に授けられるか」は指導者の力量にかかっている

 手首が寝ることでボールがシュート回転するなどの問題が生じた場合、修正方法は「手首を立ててタテ回転をする」が理想であることは藪氏が上述のコラムで回答しています。

 しかし、問題となるのは「指導者が手首を立てて、縦回転をするための修正方法を知っているか」です。また、「提示した修正案を当の投手が試すか」も問題ですし、「その修正案で投手が期待する効果が得られるか」も問題となります。

 阪神タイガースの秋季キャンプで臨時コーチを務めた山本昌氏が藤浪投手に授けたのは「縦のラインを意識したフォーム」と「チェンジアップ」の2つです。前者は「意識付け」に該当するもので、後者は「フォームの確認」の意味合いが大きいでしょう。

 チェンジアップは「手首が正面を向いた(= 立った)縦回転の投球フォーム」でなければ、制球が難しい球種です。つまり、チェンジアップを上手く制球できれば、同じフォームでストレートも投げ込めるため、制球難を改善できる可能性があるのです。

 だから、山本昌氏は「チェンジアップを習得すること」で、藤浪投手の投球フォームが『手首が立った縦回転』になるよう修正を図っているのでしょう。当の藤浪投手も提案された修正案を受け入れて改善に取り組んでいますから、良い効果が現れることが期待できると思われます。

 

『ボールの回転数』に固執する必要はない

 “指にかかったボール” を投げることができれば、回転数は自然と高くなります。シーズン中は平均1800回転だった回転数が今回の秋季キャンプでは平均1900回転後半にまで上がっているのですから、良い兆候にあると言えるでしょう。

 ただ、ボールの回転数に固執しすぎることは自重しなければなりません。

 なぜなら、投手に期待されることは「打者を抑えること」であり、「回転数の高いボールを投げること」ではないからです。藤浪投手は「角度」と「球速」という強力な武器を持っているのですから、回転数の呪縛に囚われて投球フォームを見失っては本末転倒です。

 藤川球児投手の “火の玉ストレート” は魅力的ですが、藤川投手レベルの回転数を出せる投手は極めて稀でしょう。したがって、藤浪投手にそれを強いるべきではないのです。

 

 藤浪投手の当面の課題は「打者がいる場合の制球を安定させられるか」です。ブルペンでは好感触を得ている様子ですから、春のキャンプなどの実戦で継続できるかが復活に向けた分かれ目と言えるでしょう。

 山本昌氏を秋季の臨時コーチとするだけでなく、春のキャンプでも招聘する価値はあると考えられます。実戦で現れることが予想される藤浪投手の課題に対しても取り組んでもらう意味はあると言えるのではないでしょうか。