日本サッカー協会が「女子のプロリーグ発足」を決定した背景は「2023年の女子サッカーW杯誘致」が大きな目的

 朝日新聞によりますと、日本サッカー協会が理事会で「2021年に女子のプロリーグを発足すること」を決定したとのことです。

 プロリーグ発足を機に女子サッカーの規模拡大を図りたいのでしょう。また、日本は2023年の女子W杯開催地に立候補しているため、誘致材料という点での利用を念頭に置いていると思われます。

 しかし、プロリーグとしての経営が成り立つだけの土壌があるとは言えず、協会の目論見どおりに女子サッカー界が成長するかは極めて不透明と言わざるを得ないでしょう。

 

 日本サッカー協会は14日の理事会で、2021年に女子のプロリーグを設立することを決めた。現在の日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)とは別の新リーグを発足させる。なでしこリーグはアマチュアリーグとして存続する。関係者によると、秋に開幕し春にシーズンを終える日程で検討を進めている。

 プロ化を起爆剤に女子サッカーの普及を進めることや選手のレベルアップを図ることが設立の目的。日本女子代表(なでしこジャパン)は近年は不振で、今夏のワールドカップフランス大会は16強止まりだった。

 関係者によると、プロリーグは8チーム程度で始める構想。なでしこリーグから数チームが参加する見込みで、女子部門をもっていなかったJリーグクラブも参加の準備を進めている。

 

「オリンピックからプロリーグ発足、女子W杯の開催」という青写真

 日本サッカー協会(= JFA)が描いている青写真は次のようなものでしょう。

  • 2020年: 東京オリンピック
  • 2021年: 女子プロリーグの設立
  • 2023年: 女子W杯(= 開催地は2020年6月に決定の見込み)

 オリンピックで躍進し、その人気を女子プロリーグの立ち上げに活用したいことが見え見えです。また、開催地が決まっていない『2023年の女子W杯』の誘致にも活かせるのですから、そうした背景もあると言えるでしょう。

 ただ、女子のプロリーグは「維持」が簡単なことではありません。そのため、参加クラブの大多数が経営を軌道に乗せることができなければ、すぐに行き詰まることになると思われます。

 

プロチームが抱える最大の課題は「採算性」

 プロリーグを発足させると男女に関係なく「採算性の問題」に直面します。なぜなら、チームを維持していくために必要な採算性を独自で維持できなければ、リーグそのものが成り立たなくなってしまうからです。

 サッカー界の主な収支は以下のとおりでしょう。

  • 収入源
    1. 入場料
    2. 放映権料
    3. スポンサー料
  • 支出
    1. 選手や監督への年俸
    2. スタジアム利用料
    3. 練習場などの減価償却

 収入源は男女ともに同じですが、金額面に大きな差があることが現実です。

 支出面では「スタジアム利用料」や「練習場などの減価償却費」は男子と同額水準になるため、これらの支出面は女子チームであっても稼がなければならない金額となります。この部分が女子プロリーグの足かせになるでしょう。

 

『J3のクラブ』に勝るとも劣らない収益力を『女子のプロクラブ』が示せるかがポイント

 平均観客動員数で見ますと、女子サッカーの1試合あたりの観客動員数は約2000人がトップレベルです。これはJ3の平均と同水準であるため、収益力があればプロリーグとして成り立つ可能性はあります。

 ただ、スポンサーが男子のJリーグと同水準の単価を提示するかは「厳しい情勢」と言わざるを得ないでしょう。

 例えば、クラブの大きな収益源である放映権は Youtube の『なでしこリーグチャンネル』にシフトしています。無料配信だと放映権収入を手にすることはできませんから、クラブの売上高に貢献することはありません。

 また、女子サッカーの競技レベルは「良くて男子の高校生レベル」です。どのJリーグのクラブチームも保持している “アカデミー部門のユースチーム” よりも実力的に劣る女子のトップチームが高いメディア露出度があるとは考えにくいため、良い単価を提示するスポンサーを見つけることは簡単ではないでしょう。

 

 幸いにも「男女平等」を訴える朝日新聞が日本サッカー協会のサポーティング・カンパニーに名を連ねています。朝日新聞が「男子よりも低いスポンサー額」を提示することなど起こり得ない訳ですから、資金力のある巨大メディアを引っ張ってくる活動が今後の最優先課題になると言えるのではないでしょうか。