「第三極=ガラパゴス」の意味なら、Yahoo! と LINE は “世界の第三極” になれるだろう

 日経新聞によりますと、ヤフーと LINE による経営統合の基本合意を発表した Yahoo! 側の川辺健太郎社長が「GAFA や中国勢に次ぐ世界の第三極になる」との意気込みを記者会見で述べたとのことです。

 この目標を達成するには「世界の市場で通用するコンテンツ」が必要不可欠ですが、ヤフーや LINE は現時点でそのようなコンテンツを持ち合わせていません。そのため、今後の開発による結果次第と言わざるを得ないでしょう。

 

 川辺社長は18日の会見で「対等の精神に基づく経営統合だ。志は1つ。(米『GAFA』などに次ぐ)世界の第三極になるということだ」と強調した。LINEの出沢剛社長は「互いの手を取り合ってさらなる高みを目指そうという大きな決断をした」と述べた。

 統合で規模を拡大し、時価総額や売上高で上回る米中の巨大IT(情報技術)企業に対してAI投資を加速することで対抗する。出沢社長は「あらゆるモノがネットにつながる『IoT』の時代に、基盤になるのがAIの技術だ」とし、AIを軸として中長期の事業開発などを強化する考えを示した。

 

Yahoo! も LINE も “日本市場だけに特化しすぎたガラパゴス企業”

 日本国内の大手 IT 企業同士の経営統合ですから、国内市場に与える影響は軽視できるものではないでしょう。川辺社長が言及しているように「LINEは若い利用者、ヤフーはシニア層が多い」という “補完関係” にあるからです。

 しかし、これは日本国内に限った話です。「経営統合によって世界の第三極になれるか」は日本国外の海外市場での結果次第だからです。

 ヤフーも LINE も海外市場では苦戦中です。

 ヤフーはアメリカのインターネット関連サービスを行っていた “草分け” の1つでしたが、現在はベライゾンの傘下となり、事業形態が投資会社に変貌しています。ソフトバンク傘下の『ヤフー・ジャパン』がポータルサイトとして世界市場に進出することはブランドの面からも難しいと言えるでしょう。

 一方で LINE は「日本国内で人気のメッセンジャー・アプリ」からの脱却に苦労しています。提供するサービス事業を幅広く展開していますが、いずれも海外市場で結果を残せるのは言えない状況となっています。

 

AI は「今後の研究成果次第」の分野だが、ソフトバンクが研究・開発に資金を投じ続けるだろうか

 巨大 IT 企業は AI (=人工知能)分野に注力していますが、まだ未完成の段階です。したがって、研究・開発の成果によって収益が激変する可能性は大いにあると言えるでしょう。

 研究や開発で成果を出すためには「豊富な開発資金と優秀な人員」が必要不可欠ですが、ヤフー側に多額の開発予算を計上し続ける覚悟があるのかは疑問が残るところです。

 ヤフー・ジャパンの親会社に該当するソフトバンクは「研究開発や設備投資に予算を投じるのには消極的な企業風土」です。他社のインフラに “タダ乗り” したり、企業買収による経営規模の拡大を軸に据えて来た企業ですから、企業体質そのものを変える必要があります。

 実務に当たる従業員だけでなく、消化をする側のマネージャーや会社も『評価基準』を変える必要があるのです。「会社ごと技術を買えば良い」との企業価値観を変えることは並大抵ではないと言わざるを得ないでしょう。

 

人口減少が予想される日本市場以外でシェアを確保できなければ、ガラパゴス化することは不可避

 日本は人口減少が予想されており、それに比例する形で市場規模も縮小することでしょう。そのため、日本市場を抑えるだけでは「ジリ貧」になることは避けられない状況です。

 延命策になる可能性は十分にあるものの、アマゾンのように市場のニーズを掴むことに成功した外資系サービスにシェアを奪われずに済む保証はないからです。

 『ガラパゴス化』してしまえば、それが参入障壁となるため、外資系の攻勢を防ぐ要因となります。その反面、自分たちのサービスが “外の市場” に受け入れられにくくなるというデメリットもあります。

 日本の企業は業種に関係なく、日本以外の市場ででも業績を残すことが求められています。それができない企業は緩やかに衰退していくことになるでしょう。

 現在進行形で提供中のサービスを運用するための人員に加え、別の新分野に対する研究・開発費をヤフー・LINE 連合が出し続けることができるのかが大きな注目点と言えるのではないでしょうか。