運転手のなりすまし問題に十分な対応策を採ることができなかったウーバー(Uber)、ロンドン交通局から免許更新を拒まれる

 日経新聞によりますと、イギリスのロンドン交通局が配車サービスを提供するウーバー(= Uber)に対し、安全面での問題を理由に新たな営業許可を与えないとの決定を下したとのことです。

 「運転手のなりすまし」が明るみに出たのですから、根本的な解決策が提示されるまでは許可が保留となるのは止むを得ないことです。『配車サービス業』は日本に本格上陸することが予想されるため、他国で発生した問題点を把握しておく価値はあると言えるでしょう。

 

 ウーバーの順法意識を問題視してきた英国のロンドン交通局は25日、同社に対する営業免許を更新しないと発表した。ウーバーにとって欧州最大の市場であるロンドンからの撤退を迫られれば、世界展開に打撃となるのは避けられない。

 (中略)

 同交通局は25日、営業免許の更新を認めなかった理由について「ウーバーのシステムが違う運転手の写真をアップロードできるように変わったことが主因だ」と説明した。無免許や無保険の可能性がある車に、客を乗せることは認められないという判断だ。

 交通局によると、他の運転手のアカウントを使って客を乗せるなどしたケースが1万4千件あったという。その中には交通局によって免許を取り消された運転手も含まれていた。

 

安全を蔑ろにした『配車サービス』に営業免許を与えるべきでない

 ロンドン交通局が問題視しているのは「ウーバーの安全面」です。「失敗が繰り返されている」との批判が出ており、当局が営業免許を与えることに難色を示すのは止むを得ない状況となっています。

  • 『他人のアカウント』に『自分の写真』を掲載することが可能
  • 2018年末から2019年頭にかけて、1万4000件の不正運行
  • 免許を取り消された運転手でも、ウーバーで営業が可能

 “営業運転を行うために必要な免許を持つ人” を偽ることが可能な『配車サービス』を容認する当局はまずいないでしょう。なぜなら、安全面に大きな欠陥があるからです。

 無免許や無保険なら、車の運転そのものが論外です。それを「利便性があるから」との理由で容認されるなら、リスクは他者(や他車)に転嫁されるのです。交通局が免許更新に否定的な姿勢を示すのは当然と言えるでしょう。

 

責任を負わない立場の『配車サービス会社』を野放しにする理由は見当たらない

 ウーバーなどの『配車サービス』に当局が否定的なのは「トラブルが起きた際に責任回避をするから」でしょう。「自分たちは “配車” をしただけで、事故を起こしたのはドライバーの責任」と主張することが想定されるからです。

 ただ、その主張に説得力を持たせるためには「ドライバーの身元確認がしっかりされていること」が不可欠です。

 しかし、ウーバーは登録確認が雑で、「なりすましをすることが可能」と指摘されたのです。“正規の資格を持つ他人” になりすまして営業ができるなら、チェック機能が働いておらず、犯罪行為の温床になることは避けられません

 また、不法就労を助長することにもなるのですから、利便性を理由に容認することはできません。「ドライバーの質」に自信があるなら、利用客とのトラブルが起きた際に配車サービス会社が立替金を支払うためのデポジットが用意されているべきでしょう。

 そうした部分の整備が不十分な配車サービス会社の事業は承認される方がおかしいと言わざるを得ないからです。

 

リスクを利用者や他者に転嫁すれば料金は引き下げられるが、どこまで許容するかが大きな問題

 リスクを度外視すれば、コストを引き下げることは可能です。タクシーなどの公共交通機関は「運転手の技量」を度外視すれば、その分のコストを引き下げることが可能になるため、料金が安くなるというメリットがあります。

 その一方で「未熟なドライバー」に当たった際のリスクを利用者や他車が担うことになるのです。ロンドンでは無免許・無保険のドライバーが営業行為をしていた訳ですから、日本でも(将来的に)同じ問題が起きる可能性は否定できません。

 配車サービス会社に対して「業務停止命令」が下せるような法体系は整備されているべきですし、自己責任で規制が野放しになることは避けなければならないと言えるのではないでしょうか。