イギリスの総選挙で与党・保守党が圧勝、2020年1月末までの『EU離脱』に道筋ができる
12月12日にイギリスで行われた議会下院の総選挙で与党・保守党が過半数を大きく超える364議席を獲得したと NHK が報じています。
保守党は「『ジョンソン首相の離脱協定案』に基づき、2020年1月末までの『EU離脱』」を掲げて選挙に臨んでいましたから、離脱に向けた動きが活発化することでしょう。「離脱するかどうか」で続いていた混乱が終息に向かうことは朗報と言えるはずです。
イギリスの総選挙は12日、投票が終了し、開票の結果、議会下院の650議席のうちほとんどの議席が確定しました。
公共放送BBCによりますとEU離脱を公約に掲げる与党・保守党は選挙前より大幅に議席を伸ばし、日本時間の午後5時50分現在、過半数となる326議席を大幅に上回る、364議席を獲得しました。保守党にとってはサッチャー政権時に行われた1987年の総選挙以来、最大の獲得議席となります。
有権者が「労働党を不支持」としたことが大きな要因
保守党は約40議席を積み重ね、364議席を獲得しました。直近の選挙では最大の議席数ですが、注目すべきは総得票は前回の選挙からそれほど伸びていない点です。
2017年 | 2019年 | |
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保守党 | 317議席 (約1364万票) |
365議席 (約1397万票) |
労働党 | 262議席 (約1288万票) |
202議席 (約1027万票) |
保守党が上乗せに成功した得票数は約30万票。割合では +2.4% です。この数値で約40議席を “奪取” できた理由は「労働党が前回よりも得票を約250万票も下げた」からです。
前回の総選挙で記録した得票数から 20% も下げているのです。「有権者に見放された」と言える状況にあるだけに、『労働党が掲げた政策や方針』が支持されなかったことは明らかと言えるでしょう。
「党としての立場・考え方」を鮮明にしない労働党の姿勢に嫌気が差した
保守党が『EU離脱』で党の方針が定まっていたことに対し、労働党は「党の方針が曖昧」でした。
「EU と離脱交渉を行い、離脱の是非を問う国民投票を行う」では “丸投げ” していることと同じです。「国政政党は総選挙で『政策』に対する信を有権者に問うべき」であり、決断を他者に委ねるようでは嫌気が差すことは避けようがありません。
労働党が掲げた主張が容認されたのは「2017年に行われた前回の総選挙」でしょう。今回は「離脱か残留かで “宙ぶらりん” になった状況」で選挙が行われたため、立場を明確にしなければならない状況にあったのです。
トップとして決断が求められる状況にあるにも関わらず、「有権者の意向を尊重する」との理由で “批判を呼ぶ決断” を回避するようではトップを任せられないでしょう。なぜなら、そのような気質の人物は『ポピュリズム』に傾倒する可能性が高いからです。
『表面的な支持される政策』に注力し、『中長期的な視野を欠いた情緒的な政策』が軽視されたツケを払うのは「先のことを考えた行動できる知的な有権者」です。そうした知識層からの支持を失えば、歴史的な大敗を喫するのは当然と言えるでしょう。
「EU を離脱するかどうか」の混乱が終息に向かうだけでも収穫
今回の選挙では「EU から離脱する」と宣言した与党・保守党が大勝したことで、「イギリスはそもそも EU から離脱するのか」という根本的な部分で生じていた混乱に(ようやく)終止符が打たれることになりました。
もちろん、実際には「離脱を実行した後の混乱」はある程度の範囲で起きることでしょう。しかし、「離脱するかどうか」が理由で起きていた混乱は終息するため、それによる疲労感は解消されるはずです。
また、『合意なき離脱(= ハードブレグジット)』は回避されたのですから、この部分を市場は評価すると考えられます。労働党に投票したイギリスの有権者は結果に対する不満は持つものの、多くは総選挙の結果を好意的に受け止めることでしょう。
次の注目点は「イギリスが正式に EU を離脱する時期」と「それによって生じる世界経済への影響」の2つと考えられます。離脱後の動きに向けた準備を最終確認する必要が関係各所に求められていると言えるのではないでしょうか。