石炭火力廃止宣言国を社説などで褒め称える毎日新聞など『脱石炭派』が隠したい不都合な現実

 毎日新聞が12月13日付の社説で「脱石炭は世界の潮流」と持ち上げています。石炭火力発電を止めるなら代替手段が必要不可欠なのですが、毎日新聞は「原発はダメ、再生エネで何とかなる」と無責任な主張を展開しています。

 社説の内容そのものは問題ですが、毎日新聞などの『脱石炭派』が隠したい不都合な現実があることは指摘しておく必要があると言えるでしょう。なぜなら、石炭火力発電の廃止宣言が詐欺的なものだからです。

 

■ 毎日新聞の社説

 毎日新聞が12月13日付の社説で主張したのは以下の内容です。

 「脱石炭」は世界の潮流だ。欧州を中心に、2030年までの石炭火力廃止を宣言する国が相次いでいる。だが、日本のエネルギー基本計画が規定する将来の電源構成は、石炭に過度に依存している。

 (中略)

 基本計画を見直し、温暖化対策に真剣に取り組む姿勢を示すべきだ。基本計画は30年の原子力への依存度についても「20~22%」と明記するが、再稼働が困難な現状から目をそらすものだ。再生可能エネルギーの活用にかじを切る時だ。

 「温暖化対策に取り組め」と主張するものの、具体的な提案はありません。代替手段として最も現実的かつ効果的な原子力発電には否定的で、「再生可能エネルギーに注力すべき」と無責任極まりない内容となっています。

 研究開発や電気代高騰などのコストをすべて若い現役世代に押し付ける主張であり、知性が養われるきっかけになることは残念ながらないと言わざるを得ないでしょう。

 

■ 毎日新聞や脱石炭派が意図的に触れない事実

1:欧州委員会に『2030年までの石炭火力廃止宣言』を提出したのは “わずか” 8カ国

 まず、毎日新聞が社説で「欧州を中心に2030年までの石炭火力発電の廃止を宣言する国が相次いでいる」と報じている部分ですが、「欧州委員会に宣言を提出したのは8カ国に留まった」との指摘が伏せられています。

 ECの呼びかけに応じ2030年までの石炭火力廃止宣言を提出したのは、フランス(22年まで)、イタリア、アイルランド(以上25年まで)、スペイン、オランダ、デンマーク、ポルトガル、フィンランド(以上30年まで)の8カ国にとどまった。

 EU の現加盟国は28カ国ありますが、その中の “わずか” 8カ国なのです。また、これらの国は「石炭火力発電が占める割合が低い」という特徴がありますし、EU 全体から見ても微々たる数値であることを指摘する必要があると言えるでしょう。

 

2: 東欧に位置する EU 加盟4カ国での石炭火力発電量よりも『廃止が発表された発電量』は少ない

 次に、2030年までに石炭火力発電を廃止すると欧州委員会に宣言した8カ国の発電電力量構成に目を向ける必要があります。

画像:ヨーロッパ主要国の発電電力量構成(2016年)

 2016年に EU 域内での石炭火力発電による発電量は 800TWh を超えています。

 一方で『2030年までの石炭火力廃止宣言』を提出した8カ国の合算値は 170TWh 弱。これは東欧の EU 加盟4カ国(= ポーランド、チェコ、ルーマニア、エストニア)の合算値である 203TWh を下回る数値なのです。

 EU 内で最も石炭火力に依存しているドイツは『2030年までの石炭火力廃止宣言』をしていません。“石炭火力の重要度が低い国” が他の発電方法に移行しているだけなのですから、石炭火力発電が重要な位置付けにある国がそうした流れに追従する必要はないと言えるはずです。

 

 日本国内では「石炭火力」と「原子力」はトレードオフの関係にあります。これは現在の技術では「温室効果ガス削減」と「脱原発」を両立することはできないからです。

 もちろん、「大規模停電(= ブラックアウト)の発生」と「電気代高騰」を消費者が受け入れるなら、再生可能エネルギーを主体にすることは可能です。ただ、この場合は製造業が国外への逃げ出し、国内経済は成り立たなくなるでしょう。

 「コスト面」や「お膝下の欧州でも石炭火力は依然として主力」という現実を無視し、『脱石炭派』の宣伝機関として活動するマスコミの主張はデータを疑う習慣を使える必要があると言えるのではないでしょうか。