沖縄県の杜撰な管理・警備体制が浮き彫りなる中で首里城関係の補正予算が13億円も認められるのは時期尚早

 13日に今年度の補正予算案が閣議決定され、沖縄振興予算の中に火災で焼失した首里城関連の13億円が含まれていると朝日新聞が報じています。

 火災によって発生したがれぎの撤去費用などは「いずれ必要となる項目」でしょう。しかし、火災原因の追求が終わっていない中で “管理責任者ではない国” が費用拠出することは間違いです。項目にも疑義がありますし、時期尚早であると言わざるを得ないでしょう。

 

 正殿などが全焼した那覇市の首里城に関連する費用として、政府は13億円を今年度補正予算案に盛り込む方針を固めた。予算案は13日夕に閣議決定する。

 補正予算案での沖縄振興予算は総額で80億円。首里城関連の13億円は、この一部だ。内訳は、がれきの撤去費用や遊歩道の整備といった公園の整備事業に8億円、火災を踏まえた観光振興に5億円。

 (中略)

 政府は11日、復元のための関係閣僚会議を催し、正殿などの復元に向けた工程表の年度内策定をめざすことを決めた。防火対策の強化といった基本方針も取りまとめた。有識者を交えた会議の初会合を年内にも開く。

 

撤去などの費用は「首里城の管理責任者である沖縄県」が全額負担しなければならない

 まず、火災によって発生した瓦礫の撤去や観光振興予算を拠出すべき立場にあるのは沖縄県です。なぜなら、沖縄県が首里城の管理責任者だからです。

 “沖縄県の基準” で管理が行われていた際に発生した火災による損害を補填するための予算は「管理責任者である沖縄県」が最初に拠出しなければなりません。

 毎年3000億円を超える沖縄振興予算を得ているのですから、「予算に回す原資がない」との言い訳は通用しません。賄うことができない正当な理由がある場合に限り、沖縄県のトップである玉城知事が政府に頭を下げてお願いするというプロセスであるべきです。

 まともな管理体制を構築・運用できなかった現実への反省もなく、改善策の提示もない現状なのです。今の沖縄県に『再建した首里城』を託したとしても、今回の火災と同様に「杜撰な管理体制」が原因で再び首里城を毀損することは時間の問題と言わざるを得ないでしょう。

 

侵入者を知らせる警報が鳴っても「1人が確認、2人は仮眠を継続」という絶望的な運用体制

 首里城火災で管理の体制が疑問視される理由は沖縄タイムスが報じています。

  1. 火災発生時に侵入者探知センサーが作動
    → 警備員は「侵入者」を想定し、現場に向かう
  2. 仮眠中の2人は起こさず、1人で『正殿』へ
  3. 実際は「侵入者」ではなく「火災」
    • 『正殿』内部にある「消火器」や「監視室への連絡ボタン」は火災で使えず
    • トランシーバーを保持していたが、奉神門との連絡用
  4. 警備員は奉神門に戻り、仮眠中の2人に火災発生を伝える

 致命的なのは「警備員が1人で対応している」という点です。“侵入者” を想定しているにも関わらず、もしもの場合への対応があまりに雑です。

 「警備員2人で確認に向かうべき」ですし、「1人で向かうなら、仮眠中の1人を起こして連絡が取れる体制を作っておくべき」でした。それをしない運用体制だったのですから、杜撰との批判を免れることはできないでしょう。

 また、上述の項目は県議会で行われた質疑で明らかになったことですが、首里城の管理を行っている財団が「消火設備の稼働時間を把握していない」との答弁を行ったことも批判されています。このような無責任な組織に首里城の管理を委託したままでは問題が再発することは避けられません。

 したがって、今回の火災原因を追求するとともに、管理を担っている組織の運用体制も見直すことが不可避と言わざるを得ないでしょう。

 

「復元に向けた工程表」を作るのは時期尚早であり、具体的な復元の目処を立ててはならない

 政府は「首里城復元に向けた工程表の年度内策定を目指す」とのことですが、復元の起点となる時期を明言することは明らかに時期尚早です。

 なぜなら、火災原因の特定が完了していない上、杜撰な管理体制が改善される見通しすら立っていないからです。「首里城の復元」を否定する人はほぼいないでしょう。しかし、焼失原因や再発防止策を曖昧にしたままの状態で復元へと突き進む状況に批判があるのは当然です。

 有識者を招いて「復元に向けた具体的な工程」の結論を出したとしても、工期の起点となる時期は「首里城の管理責任者である沖縄県の管理体制が改善されてから決定される」との “条件” を付かなければなりません。

 「責任の所在」や「問題点の改善を何も施さないままでの幕引き」では問題の再発を許すことになります。支出用途としては明らかに不適切なのですから、首里城復元が先走りする現状を批判する声を上げ続ける必要があると言えるのではないでしょうか。