アメリカが外国人妊婦へのビザ発給を厳格化、子供にアメリカ国籍を与えるための『出産ツアー』を抑制へ

 「アメリカ国務省が妊娠中の外国人女性の入国を厳しくすると発表した」と日経新聞が伝えています。

 アメリカは出生地主義ですから、正当な理由でアメリカ滞在中の外国人女性から生まれた子供は自動的にアメリカ国籍が与えられます。この制度を悪用した移民が問題となっていたため、『遠征出産』の取り締まりに当局が本腰を入れることになったのでしょう。

 

 米国務省は23日、妊娠中の外国人女性の入国を厳しくすると発表した。在外米大使館の職員に対して、出産のために観光ビザを使って米国を訪れようとする人へのビザ発給を拒否するよう伝達する。米国籍の獲得を目的とした「バースツーリズム(出産旅行)」を抑制する狙いがある。

 

『遠征出産』という形で以前から(一部で)横行していた手口

 出産が迫った妊娠中の外国人女性がアメリカを訪問する理由は「アメリカで我が子を出産するため」です。そうすることで生まれた子供はアメリカ国籍を取得し、自分たちは家族ビザで合法的にアメリカの滞在資格を得られるからです。

 「アメリカ国籍を有する子供の実親」ですから、アメリカ滞在が拒絶されることはないでしょう。しかも、通常の移民申請のように「アメリカが求める何らかの技能を有しているか」を審査されることは回避できます。

 だから、アメリカに移住したい(主にアジア系の)妊娠中の外国人女性が観光ビザで訪米して出産しようとするのです。

 もちろん、受け入れ側であるアメリカにも “協力者” がいます。観光ビザで訪米した外国人妊婦に対し、宿泊先などを有償で提供したり、身の回りの世話をするビジネスが成り立つからです。

 彼らは「外国人妊婦がアメリカで子供を出産すること」で利害が一致しています。妊婦は子供が生まれれば、アメリカに永住が可能になります。一方で受け入れ側は「ノーリスクで滞在費収入が得られる」ため、拒む理由はありません。

 例えば、中国人妊婦がアメリカでの出産を希望するなら、中国系アメリカ人が現地でサポートしてくれれば安心でしょう。新規顧客が絶えずやってくる環境は整っているため、政府が何らかの対応をすることは不可避な状況だったのです。

 

抜け穴を使われることが常態化すると、移民審査が意味を成さなくなる

 アメリカは移民国家ですから、移民に対する門戸は開かれています。ただし、移民申請を経ることが条件であり、外国人妊婦の出産で生まれた子供にアメリカ国籍が付与されるのは例外という位置付けでした。

 ところが、その例外を意図的に使うケースが目立ち始め、移民申請の意義が損なわれる事態になっているのです。

 最近ではリベラル系のメディアが不法入国者を「ドリーマー」と命名し、「アメリカ国籍を与えるべき」と主張しています。『遠征出産』が「ルールの抜け穴の突く行為」なら、『ドリーマー』は「ルールそのものを無効にする要求」です。

 規則を歪めることを要求する人々は “規則を歪めたことで生じた弊害” に対する責任を負わないのですから、そうした声に配慮を示すと政府や国民全体がツケを支払うことになるでしょう。

 

不法移民に理解を示すセレブやマスコミは自らの立場が脅かされない安全地帯にいる

 アメリカで不法移民に対して理解を示しているのはセレブやマスコミが中心となっています。彼らがそうした主張を繰り広げるのは「自らの立場が脅かされないことが大きい」と考えられます。

 不法移民としてアメリカで生活する人々がマスコミやハリウッドで仕事を得る可能性はほぼゼロです。

 メディア産業や映画産業には “専門的な技能がなくても働けることができる仕事” はありますが、不法移民がそれらの仕事を手にすることはないでしょう。なぜなら、コンプライアンスを理由に就労希望を雇用者側が拒絶できるからです。

 しかし、生活費を稼ぐことが必要です。そのため、不法移民が就労する単純労働は賃金が低下する傾向が強まりますし、職を得られない不法移民は犯罪行為に手を染めることでしょう。低賃金と治安悪化のダブルパンチを受ける層が移民に反発するのは当然なのです。

 不法移民に対して理解を示す発言をするも、彼らとの “競争” は徹底して避けるリベラル派の主張が世間で多数派となることはないでしょう。負担を他人に押し付けて “いいとこ取り” をするから嫌悪感を招くのです。

 まずは受け入れを主張する産業で職を斡旋するなど責任を負った行動を起こし、主張内容は適切であることを世間に実証する必要があると言えるのではないでしょうか。