首里城の火災焼失問題: 新型コロナウイルス問題のドサクサに紛れて「火災原因の特定はできず」と県警が発表し、幕引きを図る

 琉球タイムスによりますと、首里城の火災焼失事件の出火原因を調査していた沖縄県警が「出火原因を特定できず火災の刑事責任は問えない」と発表したとのことです。

 世間の注目は中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎に集まっています。そのため、このまま幕引きを図ることは可能です。

 誰も責任を取らず、首里城を再建することは問題点が残ったままですから、『何らかの改善策』が必要と言わざるを得ないでしょう。

 

 昨年10月に発生した首里城火災の捜査終結を発表した県警は29日の発表で「火災の刑事責任は問えない」とも明かした。火災原因が判然としない状況に、県民は「次の防火対策に生かせるのか」と疑問を呈し、国や県、沖縄美ら島財団の責任を問う声も上がる。同時に一定の区切りが付いたとして、十分な防火対策で再建に注力すべきだとの見方もある。

 

『放火』や『重過失による失火』の証拠がなければ、刑事責任を問うことはできない

 2019年10月に首里城が焼失した火災ですが、防犯カメラの映像などから「外部の第三者が侵入しての放火」という可能性は否定されている状況でした。警備員も『放火の容疑者』には含まれますが、容疑を裏付ける証拠はありませんでした。

 そのため、「(火元として有力視されていた)配電盤の鑑定」を県警科学捜査研究所で鑑定するも、火災の発生要因になり得るショート痕は見つからず。結果として火災原因を特定することができない状況となりました。

 状況からは「配電盤がショートしたことで火災が発生」したことが濃厚です。しかし、「配電盤がショートを起こした痕跡が残っていない」のです。

 したがって、鑑定を行った沖縄県警は「出火原因は不明」との結論を出さざるを得ません。『鑑定結果』を世論に “忖度” してしまうと捜査の信憑性に疑念が付きまとうことになるため、結果は結果として受け入れる必要があると言えるでしょう。

 

玉城知事が「再現実験」を関係各所に指示し、県の予算を付けるべきだ

 首里城の火災焼失は「今回は火災の刑事責任を問えるだけの証拠がないだけ」であって、「管理者である沖縄県や美ら島財団の対応に問題はなかった」との “お墨付き” を与えるものではありません

 だから、一定の区切りが付いたことを理由に首里城の早期再建に向けて旗振りをしようとする立場の人々に対する不信感があるのです。

 なぜなら、県のトップである玉城知事は「再焼失を防ぐための再現実験」を関係各所に指示することができる立場にあるからです。『配電盤のショートによる火災』が疑われるのですが、「同じ環境を準備して出火するかどうか」を確認する意味は大いに存在するでしょう。

 「出火時点では配電盤にあったショート痕が火災で焼失した」というケースも考えられますし、どういう使い方が出火を引き起こす可能性が高いかを知っていれば、再建後の防火対策に活用できるからです。

 もちろん、「再現実験は不要」との立場で『早期再建』を指示することも可能です。どちらの選択肢を採るかは玉城知事の価値観次第ですが、「首里城焼失」という “大失態” を繰り返さないためにも現時点で有力視される火災原因は潰しておくことが現知事の責務と言えるでしょう。

 

『新型コロナウイルスによる肺炎』に世間の注目が向いており、早急な幕引きを図る上で絶好の状況ができている

 沖縄県は『首里城焼失』の他にも『豚コレラの発生』や『新型コロナウイルスによる観光客激減』という問題に直面しています。そのため、県の責任が追求される可能性が最も大きい『首里城焼失』の幕引きを図ったとしても不思議ではありません。

 他の2件は「沖縄県の責任ではない」と議会やメディアの前で主張できるため、そちらの対処に尽力している姿を世間に向けてアピールするでしょう。

 一方で「管理体制の不備」に対する責任が追求されかねない『首里城焼失』については「早期再建で一致した」との決議などを通しすことで「責任追求を後回し」にし、責任の所在そのものを有耶無耶にする戦術を採ることができる千載一遇の機会が訪れています。

 再建の道筋を付けてしまえば、「重要なのは再建後の防火対策だ」と論点を変えれますし、責任追求の声を「的外れ」と逆に批判することで封殺できます。こうした “姑息な手段” に打って出ることが可能なだけに玉城知事の判断が大きなポイントとなると言えるのではないでしょうか。