新型コロナウイルスによる肺炎が『指定感染症』となるなら、(中国人などの)外国人も日本の公費による入院治療が可能になってしまうのでは?

 NHK によりますと、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を防ぐため安倍首相が1月31日の衆院予算委員会で『指定感染症』および『検疫感染症』に指定する政令の施行を2月1日に前倒しすると表明したとのことです。

 『指定感染症』は患者(やその疑いのある人)を医療機関に入院勧告することが可能です。入院費は公費負担となるため、患者の負担も少なくなるでしょう。ただ、『患者』という括りでは外国人も含まれるため、医療制度のタダ乗りを防ぐ法改正が必要となるはずです。

 

 新型のコロナウイルスによる肺炎について、政府は先に国内での感染拡大を防ぐため、感染症法の「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定するための政令を閣議決定し、来月7日に施行するとしていました。

 これについて安倍総理大臣は、31日の衆議院予算委員会の集中審議で「WHO=世界保健機関が緊急事態を宣言したことを受け、あす2月1日から施行することにした」と述べ、施行日を2月1日に前倒しする方針を示しました。

 (中略)

 指定感染症は、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。

 入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

 

『指定感染症』とは

 指定感染症とは感染力や重症度によって 1〜5 類に分類されており、1類と2類については「都道府県知事が必要と判断した際は入院措置を取ることができる」と法律で定められています。

  • 一類感染症
    • エボラ出血熱、ペストなど
  • 二類感染症
    • 結核、SARS、MARS、鳥インフルエンザなど
  • 三類感染症
    • コレラ、細菌性赤痢など
  • 四類感染症
    • E型肝炎、A型肝炎、狂犬病、マラリアなど
  • 五類感染症
    • インフルエンザ、梅毒、麻しんなど

 今回の政令は「新型コロナウイルスによる肺炎を臨時で『指定感染症』のいずれかのカテゴリに入るもの」として扱うものです。過去には SARS、 MARS 、 H7N9 型の鳥インフルエンザも同様の措置を取られていました。

 “臨時期間” は原則として1年ですが、延長も可能です。中国・武漢で見つかった “新型コロナウイルスによる肺炎” は SARS などと感染力や重症度が似ているため、最終的には『指定感染症』の「二類感染症」に分類されるでしょう。

 これは「暫定措置」が「正式措置」となるだけで患者が得る恩恵に変化はありません。ただ、その “患者” の定義については見直す必要があると言えるでしょう。

 

「患者の医療費が公費負担」であるなら、外国人に “タダ乗り” されてしまう問題がある

 『指定感染症』の患者の医療費が無料(= 公費負担)となる根拠は感染症予防法の第37条に以下の記述があるためです。

第三十七条 都道府県は、都道府県知事が第十九条若しくは第二十条(これらの規定を第二十六条において準用する場合を含む。)又は第四十六条の規定により入院の勧告又は入院の措置を実施した場合において、当該入院に係る患者(新感染症の所見がある者を含む。以下この条において同じ。)又はその保護者から申請があったときは、当該患者が感染症指定医療機関において受ける次に掲げる医療に要する費用を負担する。

  1. 診察
  2. 薬剤又は治療材料の支給
  3. 医学的処置、手術及びその他の治療
  4. 病院への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

 患者かその保護者から「医療費を支払うとの申請があった場合」は当該患者が入院治療費などを支払うという形が原則として定められています。

 都道府県側も第37条2項で「患者やまたは扶養義務者が費用の負担ができる場合は限度において同項の規定による負担をすることを要しない」とありますが、『指定感染症』の患者に医療費の請求が来ることは稀と言えるでしょう。(それをすると次回の選挙で批判される格好のネタになるため)

 ここで問題となるのは「患者の定義」です。患者は「『指定感染症』の感染者」という意味で使われていますが、国籍による区別はありません。医療界では適切ですが、新型コロナウイルスによる肺炎のように潜伏期間がある場合は外国人患者にタダ乗りされる恐れがあるからです。

 

「主に外国人旅行者が日本国内で『指定感染症』を発症する」というケースが想定されていないのでは?

 日本の永住権を持つ外国人が『指定感染症』になる場合は日本人と同じ割合で発生するでしょう。その場合、同じ基準の保険料を支払っているはずですから、公費負担の適応対象となることに不満の声は上がらないはずです。

 しかし、外国人旅行者という立場で来日中の人が『指定感染症』の患者となった場合は別です。

 なぜなら、彼らの治療のために費やされる医療費は(主に日本人が納めた)税金からの持ち出しとなるからです。これでは納税者の不満が溜まるのは当然でしょう。

 しかも、今回の新型コロナウイルスによる肺炎は “潜伏期間” があるため、入国時の検疫で発見できる保証はありません。ツアー客や留学生の中に発症する患者がいるのですから、外国人患者(やその疑いがある人)を日本に招き入れた挙句、無料で治療しなければならない現行の法制度があることは要改善項目と言わざるを得ません

 『指定感染症』の患者を受け入れることができる病院数には限度がありますし、国外にいる日本人が『指定感染症』を発症した状態で帰国するケースに備えて病床に余裕を持たせる必要があるからです。

 「保険証の貸し借り」などモラルを破る行為を平気でする人は国籍に関係なく存在します。そうした悪事自慢をする人もいますし、その手の風説が流布することでモラルハザードが引き起こされる元凶にもなるのです。

 “抜け穴” が明らかになっている現行法については適宜修正を施していく必要があると言えるのではないでしょうか。