中国・武漢で発生した新型コロナウイルスで現代自動車が韓国国内全工場の操業停止に追い込まれる

 韓国の中央日報によりますと、中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによって中国国内での部品製造に支障が生じた結果、韓国国内にあるヒュンダイ自動車の全工場が一時停止(= シャットダウン)に入るとのことです。

 グローバル体制で構築していたサプライチェーンが予想外の形で “切断” されることになりました。自動車の製造に欠かせない部品の調達に支障が生じたことで経営へのダメージも無視できないものとなる可能性があると言わざるを得ないでしょう。

 

 現代車のシャットダウンは中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染病により一部の部品調達が滞っているためだ。車両内の配線をまとめる装置「ワイヤリングハーネス」が底をついた。

 (中略)

 現代車関係者は「中国のワイヤリングハーネス工場が中国政府が稼働中断を指示した9日以降に再稼働するという前提の下に再稼働する時点」としながら「9日以後、中国部品工場が稼動しなければこれも確信を持ってお話できない」と説明した。

 11日の現代車シャットダウンは予定されていた。現代車グループはすでに現代・起亜車乗用車20種類の部品が6日午後3時を基点に底をつくだろうとの内部報告書を作成していた。

 現代車グループはその後、部品企業を通じて国内および東南アジア工場でワイヤリングハーネスを増産して事態に備える形で解決策を見出そうとした。しかしそれでは追いつかないという判断を下したことが分かった。

 

「春節明けは2月9日まで操業再開を見合わせよ」との当局からの要望

 まず、現代自動車が苦境に立たされる原因となったのは「当局からの要請」です。これは現代自動車だけを対象にしたものではなく、トヨタなども「春節休暇後の操業再開を延期するように」との通知を受けています。

 工場が操業を再開すると、大勢の作業員が同じ場所で勤務をすることになります。新型コロナウイルスの感染者が工場作業員にいると、休憩時間での雑談などで感染拡大が現実味を帯びる訳ですから、当局が「待った」をかけるのは止むを得ないことです。

 そのため、中国に製造拠点を持つ企業は業種に関係なく影響を受けることになりました。ただ、中国で製造をしている物の活用方法によって影響に差が出ていることも事実です。

 現代自動車(と起亜自動車)は「中国の工場で製造している自動車部品を韓国の完成車工場に送る」という形であったため、中国での製造ストップが韓国にまで影響してしまっているのです。この状況は経営的戦略の見直し対象と言えるでしょう。

 

人件費に安い国や地域で「一括・大量生産」が最も効率的だが、今回のような脆弱性もある

 中国・武漢は『自動車製造のハブ』としての成長し、日産・ホンダ・PSA(プジョー)、GM などが組み立て工場を持っています。そのため、自動車部品を製造する企業も “セットで” 武漢に進出する動機がある状況です。

 現代自動車のケースでは「韓国よりも中国国内の方が生産性が高い」ため、自動車部品を武漢の製造工場から調達し、それを韓国の最終車工場に輸送して製造を行っていたのでしょう。

 (韓国よりも)人件費が安く、生産性の高い工場で一括生産した方が収益はアップします。現に、現代自動車もワイヤリングハーネスの8割を武漢で製造していたのですが、新型肺炎の問題で操業が完全にストップ。東南アジアでの代替製造は「短期的な解決にはならない」との理由で却下されました。

 全車が同じワイヤリングハーネスを使っているなら、製造拠点を移すことは容易でしょう。しかし、それができなかったのですから、製品が車種ごとに異なっていて製造ラインの切り替えるコストが見合わないと判断されたのだと考えられます。

 とは言え、製造ができなければ商品を完成させることはできません。「一括・大量生産」は収益を最大化するためには欠かせませんが、生産拠点が災害などでストップしてしまう可能性があるため、バックアップが必要不可欠です。

 この部分におけるリスク管理ができているかは自動車産業以外ででも確認が必要と言えるでしょう。

 

プロ野球も「中国国内にあるミズノの工場」が操業していないと、『NPB 統一試合球』の供給が途絶えることになる

 例えば、日本のプロ野球で使用されている『NPB 統一試合球』はミズノが中国国内の工場で生産しています。そのため、該当の工場が可動できない状況が続くと、「試合で使う公式球が供給されない」という事態が起こり得るのです。

 ボールがなければ、日本国内でのプロ野球の興行が成立させることは不可能でしょう。ミズノ製ではない公式球を使用する国際大会では日本代表の投手が「ボールへの適応」に苦しむ姿が多く見られるからです。

 シーズン中に「公式球が変更」となると、選手の個人成績に大きな影響が出てしまいます。そうならないための『プランB』が準備されているかはスポーツ記者が関係各所に取材するだけの価値はあるはずです。

 リスクマネジメントの観点からも、経営的な痛手を最小限にするための方針が定められているかを確認する意味はあると言えるのではないでしょうか。