“危険を顧みずにパンデミックを報じる勇敢なジャーナリスト” になりたいマスコミが「クルーズ船での感染者数を除外するな」との批判を展開中

 「クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』で新型コロナウイルスに感染した患者数を “日本の感染者数” に加えるな」と日本政府が報道機関に周知することに躍起だと毎日新聞が報じています。

 マスコミ的が政府の方針に否定的なのは「感染者数が多いほど『パンデミック発生』という特大ネタになるから」です。しかし、日本経済や日本人にとっては大問題となるのです。人道的な意味でも「除外」を求めることは適切と言えるでしょう。

 

 横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新型コロナウイルスの感染者が急増する中、政府がクルーズ船の感染者を「日本上陸前だ」として日本の感染者数に含めないよう報道機関への周知に躍起となっている。クルーズ船分と国内分の合計は約160人で、中国以外では突出して多い。世界で日本での感染拡大のイメージが広まり、観光や経済に打撃が出かねないと警戒している。

 (中略)

 政府関係者は「クルーズ船は日本にたまたま寄港しただけだ。日本の感染者数に含めるなら船を受け入れる国はなくなる」と不満を示した。外務省幹部は「中国と同様に日本に対しても入国制限措置を取る国が広がりかねない」と警戒する。

 

危険を顧みずに報道を続けるジャーナリストは『ピューリッツァー賞』に輝く可能性が高い

 マスコミが「クルーズ船での感染者数を『日本での感染者』に加えろ」と要求する理由は「事態を大きくさせたいから」です。

 新型コロナウイルスの感染者数は多ければ多いほど、社会的な注目度が大きくなります。だから、マスコミにとっての “書き入れ時” が訪れることになるため、『クルーズ船での感染者』を『日本国内での発症例』としたがるのです。

 今回の新型コロナウイルスが最初に発見されたのは中国・武漢であり、「中国発の報道」が最も価値があります。

 しかし、中国は情報統制が極めて厳しい国であり、マスコミの取材活動は著しい制限がある状態です。一方で日本は選挙期間中に特定候補の応援を露骨にしない限り、マスコミの取材は自由です。

 しかも、横浜港に “リトル武漢” が出現した状態なのですから、取材合戦が勃発するのは避けられません。なぜなら、「危険を顧みずに報道をする」というジャーナリストの承認欲求が最も満たされやすい状況が目の前にあるからです。

 したがって、“危険な状況下で真実を伝えようとするジャーナリスト” を描くことが優先され、受け入れ義務がないにも関わらず人道的観点から入港を認めた日本政府の対応を批判する論調の記事が数多く配信されることになるでしょう。

 

「『外国船籍のクルーズ船』を日本に入港させなければならない責務」は存在しない

 まず、マスコミの報道内容で問題なのはクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』の船籍に言及していないことでしょう。

 『ダイヤモンド・プリンセス』の船籍は「イギリス」であり、保有者は「P&O (イギリス企業)」です。また、運用者は「プリンセス・クルーズ(アメリカ企業)」です。

 船内は「基本的に国外」ですから、公海上で『カジノ』や『(実弾を使った)射撃』をすることもできます。そのため、船長には大きな権限が与えられているのです。

 つまり、日本は「国として支援・協力をする立場」に過ぎません

 『ダイヤモンド・プリンセス』は「移動型ホテル」と同じです。「アメリカ企業によって運営されているイギリスにあるホテルで新型コロナウイルスによる感染者が確認され、宿泊客の多くが日本人だった」という状況です。

 日本政府が “外国にあるホテルの運営企業” を監督・指導することはありません。ところが、クルーズ船の日本人乗客は「そうしろ」と要求し、マスコミは「要求相手が違う」との苦言を呈することもなく、そのまま報じているのです。

 善意で入港を許可している日本政府を批判したところで得られるのは「マスコミや乗客らのストレス発散効果」と「政権批判をしたい層への満足感」だけでしょう。クレーマーの言いがかりに理解を示すマスコミの姿勢は問題と言わざるを得ないでしょう。

 

『クルーズ船での感染者』が『入港国での感染者数』で計上されると、入港や上陸を拒む国が続出することは避けられない

 マスコミが期待する「『クルーズ船での感染者』を『入港国での感染者数』に加算」が行われると、クルーズ船の入港や乗客・乗員の上陸を拒絶する国が続出することでしょう。

 なぜなら、“入港を許可した国” が機械的に他国から入国制限や渡航制限を受けることになるからです。そうなると経済面に大きな影響を受けることになります。受け入れを拒絶する国が出てくることは止むを得ない状況と言えるでしょう。

 外国船籍のクルーズ船での感染者がカウントされるなら、「船籍国に帰港せよ」と命じることが正解になります。“自国民のための医療リソース(= 病床や医療費)” を観光客に食い潰されることを回避できる上、自国経済や自国民が国外で不利益を受けずに済むからです。

 公衆衛生や経済に対する責任を負う立場にないマスコミは文句を言うことが予想されます。

 ただ、マスコミが新型コロナウイルスの影響度を大きくするほど寄港を許可する国が減少し、乗客・乗員が全滅した “本物の幽霊船” が出現する可能性が現実味を帯びることになるのです。

 

 報じた内容に対する責任を負わないマスコミに配慮を示す必要はありません。「新型コロナウイルスに感染しているかの検査」をするにも多額の費用が必要となりますし、感染者の入院費は公費負担です。

 イギリス船籍のクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』は2月5日に厚労省から「極力自室に留まり、レストランや船内イベントで集まることは自粛するように」との “要請” を受けるまで乗客・乗員による濃厚接触は起き放題だったのです。

 責任を問われるべきは「クルーズ船の運行会社」であり、日本政府ではありません。クレーマー化した一部乗客の要求を公費で受け入れることは論外であり、理解を示す無責任なマスコミにも責任の一端を背負わせるべきと言えるのではないでしょうか。