日産に続き(配当で収益を膨らませていた)ルノーも赤字を計上、新型肺炎の直撃を受ける2020年度に向けて大きな不安を残す

 NHK によりますと、ルノーの2019年度の決算が1億4100万ユーロ(約170億円)の最終赤字になったとのことです。

 「中国事業での損失」と「日産からの配当金の大幅減少」が理由に挙げられていますが、2020年度はさらに厳しい経営環境になるでしょう。なぜなら、新型肺炎による中国経済の停滞が決算書に影響を与えるのは「これから」だからです。

 開発能力に秀でているとは言えないルノーにとっては2019年度よりも厳しい状況下に置かれることは避けられないと言わざるを得ないでしょう。

 

 ルノーは14日、去年1年間の決算を発表しました。

 それによりますと、売り上げは555億3700万ユーロ、日本円でおよそ6兆6000億円となり、販売が前年を下回ったことや日産向けの生産が落ち込んだことによって、前年より3.3%減少しました。

 また最終的な損益は、黒字を確保した前年より大幅に悪化して1億4100万ユーロ、日本円でおよそ168億円の赤字となり、2009年以来10年ぶりの最終赤字に転落しました。

 これは中国での事業の損失に加え、連合を組む日産の業績が大幅に悪化した影響で、ルノーが大株主として受け取る利益が前年の6分の1にまで落ち込んだためです。

 業績の立て直しに向けルノーは、日産や三菱自動車工業の3社連合で車の開発など連携の強化を目指していますが、その具体策はまだ打ち出せていません。

 

「日産の “2019年10月から12月までの3ヶ月” で260億円の赤字」がルノーにも影響

 ルノーの経営は「株式の約4割を持つ日産の経営状況に大きく左右される」という特徴があります。これはルノーが製造した部品を日産に購入させたり、ルノーの工場で日産車を製造させたりしているためです。

 つまり、ルノーは配当金などで直接的に日産の収益を確保すると同時に、自社設備を日産に使用させること等で間接的に日産の収益を得ていたからです。

 ところが、カルロス・ゴーンの子飼いであったホセ・ムニョスが販売奨励金をバラマキ続けていた『北米市場』と『中国市場』で日産の売り上げが失速。生産能力のダブつきも生じるなど、大幅な赤字を計上する事態となりました。

 そうなると無配を余儀なくされるため、ルノーは(日産からの)『直接的な収益』を手にすることはできません。また、販売台数が減少したのですから、「ルノーからの部品購入」や「ルノー工場の稼働率」は低下します。

 この影響がルノー本体にとっても無視できないレベルにまで達したことがニュースと言えるでしょう。

 

『配当重視』にしたため、日産の開発能力は大きく低下している

 ルノーは「日産や三菱自との3社連合による車両開発などでの連携強化」を立て直し策として掲げていますが、肝心の “車両開発環境” が大きく悪化していることが問題です。

 日産の筆頭株主となったルノーは『配当重視』を要求し、カルロス・ゴーン路線で「コストカット」を推し進めました。研究開発は「コストパフォーマンスが悪い分野」であり、予算が削減されていることでしょう。

 その結果、時代のニーズに合致した車両開発が “以前と変わらないペース” で行われることを期待するのは酷と言わざるを得ません。

 配当重視の環境では「『将来への投資』は消極的になり、『現在販売中の商品』を売ることへの比重が高くなる」からです。

 日産の場合はホセ・ムニョスらが「現行車種の販売促進」に注力していました。電気自動車など次世代車両を開発できるかは疑問符が付いている状況と言えるでしょう。

 

「新型コロナウイルスによる中国市場の失速による影響が生じるのは2020年度から」という現実

 ルノーや日産にとって厄介になるのは「『新型コロナウイルス』によって中国市場に生じた停滞による影響が現れるのは2020年度の決算から」という部分でしょう。

 中国経済の影響を受けるのは自動車メーカー全体であり、ルノーや日産だけではりません。中国市場が占める割合の大きい企業ほど、影響度は大きくなります。

 韓国の現代自動車(と起亜自動車)は中国・武漢の工場が操業停止になった影響で『部品供給網』が寸断されています。ルノーや日産が「中国の人件費」に魅力を感じて『サプライチェーン』を構築していれば、韓国勢と同じ影響を受けることになります。

 こうした影響が実際に生じるのは「中国での都市の封鎖が本格化した2020年の春節明けから」ですから、経営環境は「2019年よりもネガティブな要素がある」という状況を余儀なくされるのです。

 したがって、テコ入れ策を実行する企業体力が低下しているルノー・日産・三菱連合にとっては厳しい1年となるでしょう。

 

 日産の保有資産を『配当』を通して吐き出させた “投資会社” であるルノーの業績は方針転換をしない限り、低迷し続ける可能性が高いと言えるのではないでしょうか。