太陽光パネルの廃棄問題で再利用のための技術開発が必要なら、その予算は太陽光発電事業者に負担させるべきだ

 日経新聞が「太陽光パネルの廃棄が2030年代後半に大きな問題となる」との記事を掲載しています。

 寿命を迎えた太陽光パネルは廃棄物となるため、適切な方法で処分することが不可欠です。ただ、「環境に配慮した発電方法」と売り込んでいるのですから、「廃棄」ではなく「再利用」が前提となるでしょう。

 しかし、現状は「再利用には技術の確立が不可欠」との指摘が出ているのです。本当にエコであることを示すためにも太陽光発電事業者がパネル再利用のための技術を確立させるための研究予算を立てる必要があると言えるでしょう。

 

 太陽電池パネルのカバーガラスは、光の透過性を高める目的で製造工程において酸化アンチモンという物質が入れられる。製品中の含有度は1000PPM(PPMは100万分の1)を超え窓ガラスなど通常のガラスより2桁多い。この酸化アンチモンがリサイクルの妨げになる。

 (中略)

 加えてやっかいなのは、中国でつくられた一部のパネルのガラスにヒ素が含まれていることだ。ヒ素はアンチモンと同様、透明度をあげる目的で製造工程において使われ、製品にも残留している。

 

太陽光パネルの安全な廃棄に懸念が生じていることが問題

 日経新聞の記事で懸念されているのは「太陽光パネルのカバーガラスには有害物質を含むものもあり、安全な廃棄が課題となっている」という点です。具体的に指摘されているのは以下の2つです。

  • 酸化アンチモン
    • 光の透過性を高める目的で太陽光パネルのカバーガラスに用いられる
    • 窓ガラスにも使われる物質だが、太陽光パネルの含有量は2桁多い
    • 酸化アンチモンの濃度が高いと再利用時に問題が生じる
      1. 炉の温度計で使われている白金を腐食させる
      2. 板ガラスの表面に “くすみ” を生じさせる
  • ヒ素
    • 透明度を上げる目的で使われる
    • 中国で製造された一部のパネルに含まれており、製品にも残留している
    • リサイクルのためにカレット(= 砕いたガラスのくず)を溶融する際に気体となって拡散する恐れ
    • 外見からは「ヒ素が使われた太陽光パネルか」の判別は不可能

 太陽光パネルは「電池部分」と「ガラス」の “複合製品” であり、『処分』をするには「分解」が必要不可欠な状況です。低コストで分解ができた後に「再利用」が現実味を帯びるからです。

 日経新聞が指摘しているのは “分解後” の問題点が中心となっていますが、パネル処理の全体を見通しても確立された技術が見当たらないことが現状と言わざるを得ないでしょう。

 

原発以上に廃棄方法が何も決まっていない太陽光発電を称賛する野党やマスコミは異常

 太陽光発電への称賛レベルは異常です。なぜなら、発電に利用した製品の廃棄方法やプロセスが原子力発電よりも決まっていないからです。

 原子力発電は「安価な電気代」という恩恵を電力消費者にもたらす一方で、「使用済み核燃料の取り扱い」という課題を残します。ただ、他の電源よりも収益力が高いため、処分方法の研究開発費を “自前で” 用意する能力が備わっています。

 一方で太陽光発電は全量固定買取制度(= FIT)で高額な買取価格が保証された補助金産業であることに加え、「使用済み太陽光パネルの取り扱い」は何も決まっていないことが現状です。

 2030年代の後半には大量の “使用済み太陽光パネル” が発生することは決まっているのですが、処分場所どころか集積場所も確保されていないのです。しかも、上述したように「再利用のためには技術の確立が必要」という状況なのです。

 強制的に高い料金設定で太陽光発電による電力を消費者に購入させている発電事業者が「太陽光パネルの再利用のための研究開発費」を負担すべきですし、パネルを廃棄せずに逃げる事業者が現れた際の処分費用がデポジットされている仕組みも必要なはずです。

 だから、野党やマスコミの「10年以内に問題となることが確定的な要素から目を背けて太陽光発電を称賛する姿勢」は大きな問題なのです。

 

今後に発生することが確定している問題こそ、国会での議論を通して事前にルールを定めておくべきだ

 技術の “タネ” が転がっていたとしても、利用方法が確立できる見込みでなければ、企業は研究開発に乗り出すことはありません。なぜなら、アスベストのような問題が従業員に降りかかるリスクが現実的にあるからです。

 こうした警鐘が専門家から発せられているのですが、政治が今のうちに国会で議論をし、処分や費用負担のルールを決めておくべきでしょう。

 しかし、今の野党やマスコミは「政権批判ができれば良い」という考えですから、社会問題となるまで動くことはないと考えらます。そして、問題となった後に「政府は今まで何をやっていたのか」と難癖を付けるはずです。

 その時には「自分たちが太陽光発電を推進していたこと」など “なかったこと” として扱うのでしょう。声が大きいだけで無責任な立場にいる者の主張を「世論」として扱うことで得られるメリットはありません。

 少なくとも、原発と同じ「業界内で適切な廃棄や処分に向けた予算確保」を義務付け、実際に収益を手にしている事業者に対応を迫るべきと言えるのではないでしょうか。