中国・全人代が延期となった現状では「シー・ジンピン(習近平)総書記による来賓訪日」も見送りとすべきだろう

 中国共産党の指導部が全人代(全国人民代表大会)の延期を正式に決めたと日経新聞が報じています。

 新型コロナウイルス感染症への対策が真っ只中ですし、パフォーマンス色の強い全人代を開催する状況とは言えません。新たな開催日が定まっていない状況なのですから、4月に予定されている習総書記の国賓訪日も延期にすべきと言えるでしょう。

 

 中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部は24日、全国人民代表大会(中国の国会に相当、総合・経済面きょうのことば)の常務委員会で、3月5日に開幕する予定だった全人代の延期を正式に決めた。新型コロナウイルスによる肺炎の収束が見通せず、新たな開幕日も示せなかった。全人代の先延ばしは極めて異例。習氏の4月の国賓訪日にも影響する可能性がある。

 

全人代は「『共産党の方針』を “追認” すること」が目的

 3月に予定されている中国の全国人民代表大会は「中国の国会」という位置付けです。憲法上は「最高の国家権力機関」と定められていますが、実際には「中国共産党の方針を容認するだけの機関」となっています。

 そのため、全人代が延期されても影響は少ないのです。

 中国の政策動向は「共産党の内部で決定」されます。にも関わらず、国内外の報道機関から高い注目を集める理由は「中国の政策動向が公式発表される場だから」です。

 実質的な指導部である共産党の政策提言能力が保たれていれば、中国は問題なく動くことができるでしょう。“共産党の指導部” が「全人代の延期」を決定したのですから、全人代の位置付けは中国では高くはないと言えるでしょう。

 

中国船が尖閣諸島周辺での領海侵入が常態化していることに加え、新型コロナウイルス問題がある状況での国賓訪日は不適切

 シー・ジンピン(習近平)総書記を国賓で迎えることには疑問符が付いている状況です。なぜなら、以下の2点で相応しくないと言えるからです。

  1. 尖閣諸島周辺の領海内に中国船の侵入が常態化
  2. 新型コロナウイルスの問題に収束の目処が立っていない

 まず、日本の領土である尖閣諸島の領海内に中国船の侵入が常態化している点です。「尖閣諸島が中国領」という既成事実を作るために自国船を送り込んでいると見るべきであり、それを追認する行為は慎まなければなりません。

 また、中国は国内の新型コロナウイルス感染症が収束の見通しができず、全人代が無期限延期となっている状況です。そのため、トップが日本を訪日することも同様に延期とすべきでしょう。

 

「国賓訪日の先送り」に適した理由を作り出す必要がある

 現時点で両国の外務省が「予定に変更はない」と言及するのは当然です。ただ、そのまま押し切ろうとする姿勢は嫌悪感を招く要因になるでしょう。

 日中の両政府は「感染拡大を食い止めるため」に “国民の生活” を制限している状況にあります。国民が自粛などで我慢を強いられている中で指導層が『国賓』という形で「浮世離れしている姿」を見せることはマイナス面が大きくなります。

 もし、習総書記を『国賓』として迎えるなら、その時点で日本国民の生活に何ら支障が出ていないことが必須条件でしょう。

 中国は「日本から国賓として招かれた」と説明できますが、“招いた側” の日本では有権者が不満を溜め込む原因になります。選挙による審判がある日本で『習近平の国賓訪日』をすることの弊害が大きいだけに、現状では「見送り」の理由探しをする必要があるはずです。

 3月中旬には “何らかの決断” を下せるように準備をしておく必要があると言えるのではないでしょうか。