新型コロナ患者の発生が確認された『グランド・プリンセス』、オークランドに着岸した上で乗客・乗員を軍施設とクルーズ船で隔離へ

 運航中に新型コロナウイルスの患者が発生していたことが明らかになったクルーズ船『グランド・プリンセス』ですが、「(目的地サンフランシスコの対岸にある)オークランドに着岸し、乗客・乗員の隔離が開始される」と『サンフランシスコ・クロニクル』が報じています。

 45名の検査で陽性反応が出たのは21名だったのですが、その内訳が乗客2名・乗員19名と感染拡大を強く懸念させる事態となっています。そのため、感染確認者数は増加することになるでしょう。

 

クルーズ船はサンフランシスコ湾に面するオークランドに到着予定

 サンフランシスコの地元紙である『サンフランシスコ・クロニクル』によりますと、クルーズ船『グランド・プリンセス』はオークランド港に着岸する予定とのこと。

画像:クルーズ船の到着予定港・オークランドの位置関係

 オークランドはサンフランシスコ湾に面する都市で、サンフランシスコとはベイ・ブリッジで結ばれています。

 「クルーズ船のオークランド寄港」はニューサム・カリフォルニア州知事とシャーフ・オークランド市長が表明したのですが、市民は反発。「サンフランシスコができない案件に対処するリソースはオークランドにない」など “最もな理由” で決定を批判する状況となっています。

 

『グランド・プリンセス』のオークランド到着後の予定

 『グランド・プリンセス』がオークランド港に到着した後に開始される隔離については以下のようになると言及されています。

  • 乗客: 2421名(2名に陽性反応)
    • カリフォルニア州の住民: 962名
      • “優先順位付け” がされ、トラビス空軍基地で隔離
      • ミラマー海兵隊航空基地(サンディエゴ)も隔離先の候補
    • その他: 1459名
      • ラックランド空軍基地(サンアントニオ、TX)またはドビンズ空軍基地(マリエッタ、GA)で隔離
      • 外国人が母国に帰国する場合は空港まで送り届けられる
  • 乗員: 1113名(19名に陽性反応)
    • クルーズ船内で隔離

 基本的には「日本の当局が『ダイヤモンド・プリンセス』に対して行った措置と同じ」です。感染確認者は「乗客・乗員に関係なく下船」させた上で、乗客はアメリカ軍施設で隔離。乗員はクルーズ船内で隔離措置を採る方針となっています。

 『グランド・プリンセス』はバミューダ船籍ですから、アメリカから見れば外国船籍です。外国で働く従業員の健康状態にまで寄港国が面倒を見る必要はないため、このような立場になったのだと言えるでしょう。

 

チャーター機が飛ばされないと、“検疫未完了の外国人” が母国に帰ることは実質的に不可能

 『グランド・プリンセス』の乗客には日本人も何人かはいるはずですが、帰国には「アメリカで検疫および隔離措置を終えること」が不可避となるでしょう。

 外国人(= アメリカ以外の国籍保持者)は帰国の選択肢が用意されているものの、「乗客が一般市民と触れ合うことはない」とニューサム・カリフォルニア州知事が発言しています。つまり、一般市民と触れ合う定期便で帰国するのは難しい状況にあります。

 したがって、「母国がチャーター機で(検疫未完了の自国民を)アメリカまで迎えに行く」か「米軍施設での検疫を終えて自力で帰国する」かの二者択一なのです。

 この状況で「自国民をアメリカまで迎えに行く」という決断は下されないでしょう。

 『ダイヤモンド・プリンセス』の件では運航会社が「料金の倍返し」を乗客に提示しましたから、『グランド・プリンセス』でも同様になるはずです。また、感染が確認された場合は運航会社に医療費を出させれば良いのですから、多くの国は動かないものと思われます。

 

 「乗客よりも乗員に多かった」という事実は「想定以上の感染者」が発生する確率は多いにあります。乗員と乗客の接点は多いですし、運航会社が新型コロナウイルスを甘く見た対応をしていたことは『ダイヤモンド・プリンセス』での対応から明らかです。

 “感染済みの乗客・乗員” を『完璧な環境』で隔離しても「発症」するのです。この認識がないと効果的な対策を講じることはできないでしょう。日本よりも介入しやすい条件が整っているアメリカ当局が上手く対処できるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。