新型コロナウイルス(covid-19)による死者が5000人を超えたイタリアで亡くなった人の傾向
新型コロナウイルスによる死者がイタリアで5000人を超え、現地22日付で5476人になったと発表されています。
亡くなった方のサンプル調査を行った結果をイタリア国立衛生研究所が発表していましたので、内容を紹介いたします。なお、数値は現時点で最新版である3月20日(PDF)のものです。
死亡者の平均年齢と中央値
亡くなった方の平均年齢は 78.5 歳。中央値は80歳で、31歳から103歳の方が死亡しています。また、下図に示すように「死亡者の平均年齢」は「患者の平均年齢」よりも15歳以上高いと記されています。
なお、年齢・男女別の死者数は以下のとおりです。
死亡者は男性が約7割を占め、女性は亡くなった3200名の中で942名と言及されています。ただ、90歳以上での死者は女性が多く、女性死亡者の平均年齢が82歳となっています。(男性は79歳)
基礎疾患や持病(pre-existing condition)
「イタリアで亡くなっている人の多くは複数の基礎疾患を抱えていた」との論調が出ている根拠となっているのは本項目でしょう。
報告書では新型コロナウイルスで亡くなった3200人中、病院で亡くなった481名の基礎疾患の有無についての言及が下表のようにされているからです。
数 | % | |
---|---|---|
虚血性心疾患 | 145人 | 30.1% |
心房細動(不整脈) | 106人 | 22.0% |
脳卒中 | 54人 | 11.2% |
高血圧 | 355人 | 73.8% |
糖尿病 | 163人 | 33.9% |
認知症 | 57人 | 11.9% |
慢性閉塞性肺疾患 | 66人 | 13.7% |
過去5年以内のガン発症歴 | 94人 | 19.5% |
慢性肝疾患 | 18人 | 3.7% |
慢性腎不全 | 97人 | 20.2% |
疾患数 | ||
なし | 6人 | 1.2% |
1 | 113人 | 23.5% |
2 | 128人 | 26.6% |
3以上 | 234人 | 48.6% |
基礎疾患を多く抱えていた人が多くなっていることは事実です。
ただ、高齢になるほど “基礎疾患” が多くなるのは普通です。そのため、「平均的な(イタリアの)高齢者がどれだけの基礎疾患を抱えているか」との比較をする価値もあるでしょう。
タイムライン
患者が死亡するまでの平均的な日数は次のとおりです。
- 発症から死亡まで: 8日
- 発症から入院まで: 4日
- 入院から死亡まで: 4日
- 入院から死亡まで(ICU なし): 4日
- 入院から死亡まで(ICU あり): 5日
- 入院から死亡まで: 4日
「発症から死亡まで8日」というのは短い印象がありますが、死者の多くが「複数の基礎疾患を持った高齢者」であることに留意すべきでしょう。
日本でも3月4日夕方に「コロナをばらまく」と言って飲食店を訪れた愛知県の50代男性は入院後に容体が悪化し、18日に死亡しました。
「基礎疾患を持っている人が新型コロナウイルスに感染し、症状が悪化するも必要な医療サービスを受けれずに亡くなる」という症例が他よりも(圧倒的に)多いのでしょう。
だから、8日で死亡という数値が出ていると考えられます。
50歳未満の死亡について
最後に若者についての言及があります。
今日(3月20日)まで新型コロナウイルスの死亡者3200名の中で50歳未満の死者は36名。特に、40歳未満は9名で、男性8名・女性1名(年齢は31歳から39歳)。
40歳未満の死者2名に関する医療情報はなし。残る7名は深刻な疾患を抱えていた。(心血管、腎臓、精神疾患、糖尿病、肥満)
“疾患持ちの弱者” にとって、新型コロナウイルスは年齢に関係なく「トドメを刺す存在」になり得るでしょう。重症化や死亡のリスクがそれだけ高くなっている状態だからです。
参考資料にはなるものの、新型コロナウイルスへの見解が根本的に見直されるほどのデータが確認されるまでには至らなかったという評価が妥当と言えるのではないでしょうか。