読者や視聴者など顧客離れに苦しむメディアによる “煽り報道” が新型コロナウイルスの拡大を深刻な状態にしている

 政府や自治体などの行政と専門家が新型コロナウイルスの感染拡大および流行を食い止めるために様々な要請をしていますが、「逆張り」をするなど “煽り報道” をするマスコミが散見される状況となっています。

 「人の往来」を減少させる必要がある状況下で「陽性反応者が出ていない地域への避難」を呼びかける毎日新聞の記事がその代表例です。

 イタリア北部やアメリカ・ニューヨークで発生した問題を日本でも発生させようとしているのですから、「マスコミが感染拡大に寄与している」と糾弾せざるを得ないでしょう。

 

「感染の確認されていない地方に避難しよう」と感染拡大を煽る毎日新聞

 感染拡大を煽る記事を書いたのは毎日新聞の阿部絢美記者と前田葵記者です。

 これまでに感染者が確認されていない鳥取、島根両県。羽田便だけが就航している鳥取空港(鳥取市)は、東京の「外出自粛」を受け、閑散としていた。ただ、都市部で外出自粛が呼び掛けられているなか、「安全」というイメージのある両県をあえて訪れる観光客もいるという。

 (中略)

 自宅のある東京と仕事先のある鳥取をほぼ毎月往復しているという広告代理店の男性(40)は「会社はテレワークを強化しているので、来月は鳥取に来られないかも……」と羽田行きの便に乗り込んだ。

 一方、千葉県の50代夫婦は旅行のため鳥取を訪問。「鳥取砂丘を見て気分転換したい」と笑顔を見せた。

 28日付で書かれた記事は29日に「地方への旅行を勧めるように取られかねない記事内容と見出しだった」との理由で削除されています。

 感染が拡大している首都圏などの都市部からの旅行客や帰省者が(無自覚の状態で)新型コロナウイルスを地方に運ぶことになるという認識が欠落しているのです。この記事を始めとするマスコミの報道はあまりに無責任と言わざるを得ないでしょう。

 

人口の少ない過疎地には『感染症用の指定医療機関』の絶対数が少ない

 日本の指定医療機関は人口を基準に設置されています。つまり、人口の多い都市部には感染症用の病床数は多く、過疎地は病床数が少ないのです。

表: 感染症指定医療機関の病床数(2019年4月1日時点)
特定 第1種 第2種 合計
鳥取   2 10 12
島根   2 28 30
沖縄   4 20 24

 毎日新聞が “推薦” した鳥取県の感染症病床は「10」、島根県は「28」です。(両県の結核病床はそれぞれ「16」)

 ここに首都圏など新型コロナウイルスの感染が広がっている都市部からの避難が起きれば、何人かはウイルスを運ぶことになるでしょう。

 つまり、運んだ本人が周囲に感染させた上、旅行・帰省先の住民用に用意されている貴重な病床数を潰すことになるのです。地方の病院は「都市部(や外国)からの旅行者のため」に設置されているのではありません。

 この大前提を無視して地方にウイルスを拡散する行動を助長する記事を掲載するメディアは論外と言わざるを得ないでしょう。

 

『外出自粛』は「不要不急の往来を控える」との意味であり、「対象地域から出ても良い」との意味ではない

 また、マスコミが使用する言葉を「受け手側が都合良く解釈していること」も感染拡大・深刻化に寄与していることが問題です。

表: 東京都からの『外出自粛要請』
  期待される認識 誤った認識
東京に行く
東京から出る
(東京以外はOK)

 東京都が要請した『外出自粛』は「不要不急の往来を自重すべき」という意味です。それを「東京都内を出歩かなければ問題ない」との “誤った認識” があるから、「感染者が発生していない鳥取や島根に行こう」という発想になるのです。

 新型コロナウイルスの感染が拡大するのは「人の往来」が大きな理由です。

 「感染しているかが極めて分かりにくい」という特徴を持つウイルスなのですから、「自分がすでに感染している可能性がある」との認識を持って活動を自粛する人が大多数にならない限り、感染は長々と続くことになってしまうでしょう。

 

「治療を行う医療機関」が “ボトルネック” なのだから、検査機関を拡充することに意味はない

 最後に未だに『PCR 検査』の積極的な実施を求める人々の “考え” を言及することにしましょう。

 新型コロナウイルスの『PCR 検査』を実施して陽性反応が出た場合、「感染者(= 患者)」としてカウントされます。「患者は医療で 100% 救えるのだから、早期発見することが重要」と考えているから、『PCR 検査』の積極実施派が今も存在しているのでしょう。

 しかし、これは間違いです。

 まず、新型コロナウイルス感染症に対する『特異な治療法』は存在しません。そのため、新型コロナの患者を検査を実施してまで早期に発見するメリットは何もありません。

 次に、医療機関のリソースは「有限」です。医療機関の最優先事項は「治療を行うこと」であり、「隔離を提供すること」は二の次です。

 新型コロナウイルス以外の疾患による急患は “普段どおり” の頻度で発生している状況であるにも関わらず、新型コロナに全ての医療資源を投入することを強いるなど愚行以外の何物でもないと言わざるを得ません。

 

 日本でも医療崩壊が発生してくれた方がマスコミは「大スクープ」として安倍政権批判ができる訳ですから、“世間の景気に左右されない高給取りで元気な記者たち” が新型コロナウイルスの感染拡大を助長する記事を掲載することは合理的です。

 世界中が混沌としている現状を「痛快」と評するのがメディアの “本音” であり、それに流されてしまうと一般庶民は『医療崩壊』や『大不況』で代償を支払うことになってしまうことを肝に銘じておく必要があると言えるのではないでしょうか。