「10万円給付」に世間の注目が集まる中、「日本政府が『抗体検査』を実施する方向で調整中」と読売新聞が報じる

 読売新聞によりますと、日本政府が『抗体検査』を月内にも実施する方向で調整に入っているとのことです。

 世間の注目は「現金10万円の給付」に集まっていますから、粛々と検査をすることが可能でしょう。「検査キットの精度および信憑性」には不安が残る現状ですが、実施概要などが発表される続報を待つ価値はあるはずです。

 

 政府は、これまでに新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べる抗体検査を月内にも実施する方向で調整に入った。地域ごとの感染の広がりをより正確に把握する狙いがある。数千人程度を抽出して調査する方向で、来週にも実施概要を発表する方針だ。

 

抗体を持つ人が多ければ、自粛要請や都市封鎖をする必要がなくなる

 抗体検査を実施する理由は「自粛要請や都市封鎖に区切りを付けることが可能になるから」です。これは抗体が体内に侵入したウイルスを倒すため、抗体をどれだけの人が保持しているかが重要になるのです。

抗体 備考
IgM IgG
陰性 陰性 「未感染」または「抗体切れ」の状態。
風邪の抗体は1年ほどで切れるため、風邪を引きがちな人が「抗体切れ」の代表例
陽性 陰性 感染初期の段階
陽性 陽性 感染中期から後期の段階。『IgM 抗体』の後に出現する『IgG 抗体』が現れているため
陰性 陽性 「抗体あり」を意味する状態。一般的に再発症する可能性は低い

 過去記事で言及したように、「過去の感染履歴を示す『IgG 抗体』を保持している人」がどのぐらいの割合でいるかが最大の注目点でしょう。

 「再発の可能性が低い」と言える人が多ければ多いほど、自粛や都市封鎖(ロックダウン)などの措置を解除する根拠となるからです。そのため、『抗体検査』はどこかのタイミングで実施しなければならないことだと言えるでしょう。

 

検査の対象人数は十分だが、精度の信憑性には疑問が残る

 抗体検査の対象人数は「数千人程度」で調整されるとのことですが、これは十分な数値と言えるでしょう。「感染の程度」を把握するためには全数調査は無意味だからです。

 例えば、NHK が月ごとに発表している内閣支持率や政党支持率は「2000人強が調査対象で解答率は 55% 前後(= 回答が得られるのは1200人ほど)」です。

 誤差は生じますが、それは『層化無作為二段抽出』など最小限する方法は存在します。したがって、「検査の対象人数」が問題になることはないでしょう。

 しかし、一方で『検査キットの精度』は疑問が残る状況です。なぜなら、4月初旬に国立感染研が行った検証では「市販(の抗体検査)キットは不十分な出来」との結論が出ているからです。

 要するに、「抗体検査の結果は信用に値するものなのか」という根本的な指摘が出されている状況なのです。

 「新型コロナウイルスの症状から回復した人から『IgG 抗体』の陽性反応が出た」など『検査キット』への信憑性を確保しておかないと、“しっぺ返し” を受けるリスクがあるでしょう。

 

ゴールデンウィーク明けには『フェーズ2』に体制を変更しないと手遅れになるだろう

 新型コロナウイルスの感染拡大に対する安倍政権の本命策が何なのかは確定していませんが、5月のゴールデンウィーク明けには『現行の対応方針』を “アップデート” させた『フェーズ2』に移行する必要があると言えるでしょう。

 なぜなら、現状の対応方針は様々な要因で不都合が生じているからです。

  • 『現行方針(= 第一段階、フェーズ1)』
    1. 重症者への対応を優先し、医療リソースは極力温存
    2. 『PCR 検査』は「医師の診断」など条件を厳格化
    3. 感染の急拡大を防ぐため、不要不急の外出自粛を要請
  • 『フェーズ1』で浮き彫りになった問題点
    1. 医療用具(=防護服やマスクなど)の消費が著しく、物資不足が深刻な状況
    2. マスコミが「『PCR 検査』を受けれずに不安な人」を擁護し、『医療用具不足』と『医療崩壊』に拍車をかける
    3. 通常業務に「新型コロナへの対応」が上乗せされている
      → 現場の疲弊度が深刻
    4. 経済活動が停止状態のため、収入が途絶えた状況が発生
  • 『フェーズ2』

 マスコミが新型コロナウイルスに対する不安を日夜煽り続けていますから、「『PCR 検査』をして欲しい」との理由で救急出動要請を出す人々が後を絶たないでしょう。しかし、この行為は「『医療対応の限界値』を下げる “自爆テロ”」と同じです。

 「発熱が続く」や「強い倦怠感または息苦しさがある」という検査要件を満たしていない人が「自らの不安を解消するために複数の医療機関を受診する」という行為が感染拡大に寄与しているのです。

 この問題は速やかに是正しなければならないですし、「医療資源の制約」を無視した論調を繰り広げるマスコミや識者には “相応の代償” を支払わせる必要があるでしょう。

 

 『抗体検査』を『フェーズ2』での対応を決めるための判断材料として使うのであれば、歓迎すべきことと言えるのではないでしょうか。