コロナ禍が発生する前の2019年度決算で2年連続赤字を計上したサガン鳥栖、クラブ存続の危機が現実味を帯びる

 サッカー・J1のサガン鳥栖が2年連続で当期純損益が赤字になったと佐賀新聞が報じています。

 2018年度は6億円の赤字でしたが、それが2019年度20億円に拡大しています。サガンが設定している年度末は「2020年1月末」ですから、2年連続赤字は新型コロナウイルスの影響によるものではありません

 クラブの経営戦略が上手く機能しなかった結果であり、コロナ禍が発生している状況下での立て直しは普段よりも難易度が高いと言わざるを得ないでしょう。

 

 サッカー・J1サガン鳥栖の運営会社サガン・ドリームス(竹原稔社長、鳥栖市)は26日、第16期(2019年2月~20年1月)の決算を発表した。広告収入の大幅減が響き、当期純損益は20億1486万円の赤字となった。赤字は2期連続。株主による第三者割当増資を行って債務超過は回避した。

 

拡大戦略に舵を切ったことで支出額は増大したが、必要分の収入額を維持することができなかった

 サガン鳥栖が公式サイト上で発表しているクラブ決算の数値(の概要)は下表のとおりです。

表: サガン鳥栖の決算(各年2月〜1月期・単位:千円)
項目 2018年度
【14位】
2019年度
【15位】
入場料 678,034 760,496
分配金 346,631 353,987
広告料 2,296,015 810,529
売上高 4,257,816 2,561,604
トップチーム人件費 2,570,360 2,427,075
試合関連費 419,053 412,826
販売管理費 3,744,882 3,669,418
営業損益 (136,014) (1,898,596)
当期損益 (581,789) (2,014,869)

 まず、指摘する必要があるのはサガン鳥栖は「2018年度から高コスト体質になったこと」です。これは2018年7月に元スペイン代表のフェルナンド・トーレス選手が加入したことが理由です。

 2017年度の人件費は18.1億円でしたが、2018年度には25.7億円にまで上昇。J1 の中でも5番目に高いチーム人件費であり、人件費と成績が比例していない状況にありました。

 ただ、トーレス選手が連れて来た形になっていた広告スポンサーの存在が大きかったため、赤字額の幅は限定的でした。特に、「リーグ分配金制度」がありますから、チームが好成績を上げていれば、2019年度は黒字で終えることができた可能性はあったと言えるでしょう。

 

トーレスは不調でチームは不振、選手に約束した年俸の支払い債務だけが残った

 要するに、サガン鳥栖は経営戦略プランを間違えて描いてしまったのです。その代償が大赤字であり、自業自得の面が強いと言わざるを得ません。

 サガン鳥栖のような “地方クラブ” が夢を描くなら、イタリアのアタランタを参考にした『スタイル』を構築し、それを機能させ続けることを条件に拡大すべきでした。

  • 本拠地はミラノ近郊の街・ベルガモ
    ※ ミラノはインテルやミランの本拠地
  • 「育成の名門」としてイタリアでの地位を確立
  • 「上位を狙う方針」に改め、ガスペリーニ監督を招聘
    • 2016/17 シーズンを4位で終え、UEFA EL の出場権を獲得
    • 強豪に定着し、2019/20 シーズンは CL でベスト8

 大口スポンサーを得られなくても、強豪になる術は存在します。それをイタリアで実証したのがアタランタです。

 インテルやミランといった超有名チームの本拠地があるミラノの近郊がホームタウンですから、「多額の広告収入」を見込めるクラブではありません。

 しかし、今シーズンのチャンピオンズリーグで準々決勝にまで駒を進めているのです。

 チームの推定年俸はセリエAのボトムハーフに入る水準なのですから、『チームのコンセプト』と『年俸の費やし方』はフロント陣の手腕が問われる部分と言えるでしょう。

 

サガン鳥栖の2期連続赤字は新型コロナウイルスとは全くの無関係

 2020年4月時点では日本のサッカー・Jリーグが新型コロナウイルスの感染拡大のため、中断しています。そのため、「新型コロナの問題でサガン鳥栖が大赤字になっている」という “デマ” を流す人もいるでしょう。

 しかし、サガン鳥栖の決算期は「各年の1月末日締め」です。かなり特殊ですが、これは天皇杯の関係でそのように設定しているのでしょう。

 Jリーグの年間最終戦は元日(= 1月1日)に開催される天皇杯の決勝です。決勝戦で得られる収益はクラブの決算に計上する項目であるため、「1月末日を最終日」とすることに不自然な点は何もないのです。

 コロナ禍が発生する前の時点で2期連続赤字だったのですから、これは「経営戦略に問題があった」と判断がされなければなりません。

 新型コロナウイルスによる影響で先に支援の対象となるは「健全経営をしていたJリーグのクラブ」です。(巨額の)赤字計上中の企業が『コロナ禍を理由に経営再建用の特別融資を得られる状況』は起きてはならないことと言えるのはないでしょうか。