高齢化社会による社会保険料の重荷を抱えた状態で「内需主導による経済回復」は絵に描いた餅

 NHK によりますと西村経済再生担当大臣が26日の記者会見で「内需主導による経済回復を期待したい」と述べたとのことです。新型コロナウイルスの感染拡大からの再始動としては『内需』に頼るしかないでしょう。

 ただ、経済回復を実現することは望み薄です。日本はコロナ禍前から高齢化社会を維持するための高い社会保険料で購買力が低下しているのですから、ここにメスを入れないなら掛け声倒れに終わるでしょう。

 

 西村経済再生担当大臣は26日の記者会見で、緊急事態宣言の解除を受けた今後の経済の見通しについて、輸出が大幅に増える状況にはないとして、まずは国内需要を中心に回復を目指すことになるという考えを示しました。

 この中で西村経済再生担当大臣は、今後の経済の見通しについて、「感染防止策をしっかり講じてもらいながら経済を引き上げていくことになる。これまで止めてきた観光やイベントなどを段階を追って活性化していき、いわば内需中心に経済は動き出していく」と述べました。

 

多くの国が国境を封鎖したままなのだから、『内需中心』で経済を再始動させるしかない

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界中の国が国境を事実上封鎖をしています。「入国後の14日間隔離」や「陰性証明書」が根拠であると言えるでしょう。

 つまり、どの国も経済を再始動させるには『内需』を活用するしか選択肢がない状況なのです。

 もちろん、輸出を通して『外需』に頼ることは可能です。ただ、外需は「自国で生産体制」と「輸出先での需要」の双方が必要です。そのため、『外需』は “二の矢” として位置付けるべきでしょう。

 

保険料率が 30% になる日本で『内需』による経済回復は非現実的

 西村大臣は「当面は内需主導で回復を期待していきたい」と述べていますが、これはミッション・インポッシブルです。なぜなら、現役世代は保険料率 30% の重荷を既に背負っていて余裕がないからです。

 新型コロナの感染拡大を抑制するため、国は対策予算を惜しみなく投じました。「フリー・ランチ」は存在しないのですから、“誰か” が投じた予算を捻出しなければなりません。

 これまでの政治を見ると、十中八九で会社員の給与所得から天引きされることになるでしょう。つまり、現役世代が使える資金が今以上に減少することが予想されるのです。

 使える金額の上限が下がることが濃厚なのですから、需要が高い水準で維持することは期待できません。したがって、今の日本で「内需による経済回復」は非現実的と言わざるを得ないでしょう。

 

社会保険料の上昇に歯止めをかけられず、原発再稼働もできない政権には経済回復は無理

 安倍政権による経済回復は無理でしょう。「コストパフォーマンスに対する認識が軽薄すぎること」が理由です。

  • 医療費は年43兆円
    • 70歳以上が21兆円を消費
    • 後期高齢者の自己負担は1割(* 現役世代は3割)
      → なぜ、野放し?
  • 新型コロナ対策の費用対効果は?
    • 薬価の決定に用いる『QALY(質調整生存年)』で経済的な妥当性は計算可能
    • 「42万人が死ぬ」という根拠に疑問符が付く状況
  • エネルギー問題からの逃避
    • 原発再稼働から逃げて追加燃料費が年3兆円
    • 再生可能エネの FIT で高額買取によって年2兆円

 割高なコストを放置し続けてきた現政権が「内需主導で経済回復」と言い出したところで結果は目に見えています。

 日本国内の居住者は「70歳以上の高齢者2000万人」の余命を1年でも伸ばすために、会社員であれば所得の 30% を社会保険料として払うことを強いられます。今後はさらに身動きが取れなくなりますから、需要には貢献できないでしょう。

 だから、“割高なコストを払う必要がない訪日外国人観光客” に依存する経済になるのです。

 「新型コロナの感染者や死者を減らしたことで得られた(医療面での)経済的な金額は?」との問いがタブーですから、医療費負担は増大する一方と予想せざるを得ません。

 バラマキによって歳出を増やすだけの政府に経済回復は無理でしょう。もちろん、反対ばかりの野党は「言わずもがな」です。

 

 医療分野は「コスト度外し」でしたが、高齢化の進行で「ない袖は振れない」という現実に直面しているのです。

 コロナ禍で「医療面での充実を」との現場の声が大きくクローズアップされていますが、「年43兆円」という現実を突きつけた上で「総額は削減しなければならない」と “政治が” 通告できないようでは「内需主導による経済回復は不可能」と言わざるを得ないのではないでしょうか。