軍属≠アメリカ軍兵士であるが、無関係とは言い切れないだろう

 沖縄県うるま市の女性(20)が行方不明になっていた件で警察はアメリカ軍関係者の男(32)を逮捕したと NHK が報じています。

 アメリカ軍兵士という立場ではありませんが、日米地位協定の適用範囲内である “軍属” の立場であることから、事態が混乱する可能性はあると言えるでしょう。

 

 テレビ朝日はアメリカ国防総省のコメントとして「事情を聴かれている男性はアメリカ軍の所属ではなく、民間業者に雇われ、嘉手納基地で働いている」と伝えています。

 しかし、次のような内容のニュースも報じているため、アメリカ軍が無関係であると主張するのは厳しい状況にあります。

 公開捜査が始まって1週間、捜査線上に浮上したアメリカ軍、軍属の男性の情報から事態は少しずつ動き出しています。

 (中略)

 これまでの警察関係者への取材で、重要参考人として元アメリカ海兵隊員で現在は嘉手納基地で働く軍属の男性から任意で事情を聴いていることが分かりました。

 

 在日アメリカ軍基地で民間人が働いていても不思議ではありません。組織が活動しているのですから、民間企業と同じような業務を行う必要性が生じるからです。

 在日アメリカ軍が現地採用の民間人が起こした事件によってアメリカ軍が批判されるのなら、“とばっちり” だと受け止める人もいたでしょう。しかし、「元アメリカ海兵隊員」という経歴を持っている人物であることが事実であるなら、無関係だと押し通すことは反感を買う恐れがあります。

 

 沖縄で反基地活動を行っている活動家たちは今回の事件を最大限利用しようとするでしょう。そのためには「事実に基づく真っ当な批判」をどれだけ主張できるかにかかっています。

 まず、在日アメリカ軍を真正面から非難できるケースは「今回の事件が任務中に行われていた場合」です。この場合は「アメリカ軍の軍規やコンプライアンスはどうなっているのか」と軍のトップを責め立てられますし、トップの管理責任を問い詰めることができます。

 また、「沖縄にアメリカ軍基地が存在することが地元の大きな負担になっている」という反基地活動家の主張を第三者に向けて訴えた際に大きな説得力を持つでしょう。

 ですが、犯行が任務外(≒勤務時間外)であった場合はアメリカ軍の責任を問うことはできますが、責任の所在がアメリカ軍にあることを認めさせることは非常に難しくなります。個人が起こした犯罪を所属組織にその責任を負わせることはできないからです。

 「もし、そうすべきだ」と主張するのであれば、反基地活動に寄り添う左派メディアの社員が起こした不祥事によりテレビ局や新聞社が解散していなければならないことになります。“米軍憎し” だけが先走り、現実離れした主張を繰り広げるようなことは避けなければならないことです。

 

 1番マズい主張は「在日米軍の犯罪率は下がってもいないし、凶悪犯が非常に多い」というものです。なぜなら、この主張は永江一石氏が自身のブログ内でデータを用いて否定しているからです。

 沖縄で人口比率3%のアメリカ軍関係者が占める犯罪検挙率は1%。犯罪に関与する比率が低いだけでなく、ピークだった1977年から犯罪率・凶悪犯罪件数ともに下がっていることが数値で示されているのです。

 この事実を無視して、アメリカ軍批判をするようでは「件数というデータからも、アメリカ軍は(犯罪が少ないことで知られる日本よりも)規律を守っていることが証明されている」と反論され、意見は平行線のままになるでしょう。

 

 では、どうやってアメリカ軍を批判するのか。それは「アメリカ国内でも逮捕されるような事件を起こした犯人を “軍属だから” という理由でアメリカ軍は守るのか?」と口撃すれば良いのです。

 ただし、その対象を向けるのはアメリカ軍のトップではありません。

 どの先進国でも軍の暴走を防ぐという名目で文民統制が行われています。つまり、“文” のトップという位置づけのキャロライン・ケネディ駐日大使に対し、「民間人が被害を受けたのだが、庇い続けるのか」と問い詰めるべきなのです。

 女性の人権を軽視したと見られることはリベラルにとって致命的となりますし、在日アメリカ軍には軍人の家族も生活しているのです。「女性兵士や男性兵士の妻や子供に被害が出たリスクもあったのだから、再発防止策は不可欠だ」と相手がNOと言えない主張で具体的な対応を明言させることがポイントになるでしょう。

 「アメリカ人への損害は出ない」と主張するなら、「日本人への被害はOKという明らかな差別思想だ」と叩く根拠になります。また、再発防止策を渋るなら、「兵士の人権を尊重しない政治家」と批判する理由にすればよいのです。

 

 与党政治家に難癖をつけることを日課にしている左派メディアからすれば、アメリカ軍批判など朝飯前でしょう。しかし、批判の手順を間違っては本来の効果が得られなくなるのです。

 世間がアメリカ軍が関連する事件・事故で “特別待遇” あるように感じるのは逮捕された容疑者が実名報道されていないことでしょう。日本人なら逮捕された時点で実名が晒され、卒業アルバムまで取り上げられているからです。

 それがどういう訳か、名前は伏せられた形で報道されるのですから違和感だけが広がる原因となるです。こうした不公平感をなくすこともメディアには求められていると言えるでしょう。

 今回の事件については、日頃から慰安婦問題で日本政府を批判している人権意識の高いアメリカ人記者にコメントを出させるべきです。彼らはオキナワの民意に寄り添い、日本政府に求めてきたようにアメリカ軍やアメリカ政府に対し、謝罪と反省を要求してくれることでしょう。

 もし、それをしないのであれば、彼らは人権意識が高いのではありません。“人権派” を語るだけの白人優越主義者か、ご都合主義者なのです。

 そうした考えを持った人物が多くなるほど、日本人へのリスクが高まっていくことになるのですから、厳しい指摘を行い、1つ1つの振る舞いに注視する必要があると言えるのではないでしょうか。