自民党内の規定で総理大臣が資格を失うことは奇妙なこと

 自民党は総裁の任期として定められている「連続で2期6年まで」とする党則を改正するための議論が本格化する見通しがあるとNHKが報じています。

 与党・自民党の総裁が日本国の内閣総理大臣という形態になっているのですが、自民党内の規則により、内閣が退陣することになるという事態はあまり望ましいものと言うことはできません。

 

 安倍総理大臣の自民党総裁としての任期の延長をめぐり、党執行部からは安倍総理大臣に限らず、総裁の任期を「連続で2期6年まで」としている党則を改正して、「3期9年まで」とする案が出ていて、今後、党内の議論が本格化する見通しです。

 

 自民党の党則で定められた「連続で2期6年まで」という総裁の任期がクローズアップされることはほとんどありませんでした。

 55年体制で万年与党になった自民党でしたが、派閥の権力争いが激化していたため、総裁を長く務める政治家はほぼ皆無に近いものでした。“回転ドア” と揶揄されるほど、国のトップが頻繁に変わってきた歴史があったのです。

 しかし、安倍首相の政権運営を見ていると、「連続で2期6年まで」と定められた自民党総裁の任期を総理大臣として満了する可能性は非常に高いと言えるでしょう。

 

 仮にそうなった場合、(任期が設けられている)他国の首脳と比較すると短命政権であることは明らかです。

 アメリカの大統領は2期8年。それに対し、日本は実質的に自民党総裁任期である「連続2期6年」が上限として設けられていることは望ましいこととは言えません。

 安倍首相だけのケースではなく、長期政権が成り立たない土壌があることが問題の根幹と言えるでしょう。例えば、「総理大臣就任後は連続3期9年までを総裁の任期とする」という規定であれば、多選による弊害を防止するという意味でも妥当な範囲ではないかと思われます。

 ですが、「連続2期6年まで」の現行規則は野党時代ででもカウントされるため、タイミングによっては政権奪還後すぐに総裁(=総理)の座を退かざるを得ない状況が起きることが考えられるのです。

 

 このような問題がある規定をそのままにし、自民党総裁任期の変更に難色を示す政治家は問題がある制度を改善する意識が薄い人物と言えるのではないでしょうか。

 他の野党と比較すると圧倒的にまともな政党である自民党に所属していると、大臣や総理の椅子は目の前です。政治家として、大臣や総理になることは大きな実績です。しかし、有権者は大臣や総理として成果を出してくれることを望んでいるのです。

 実績を残している政治家を政党内のルールを根拠に政権から外すことは有権者からの支持を失う恐れがあることを自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。