トランプ米大統領候補の「国境壁構想」を批判するなら、英仏が建設済のフェンスも批判すべき

 イギリス政府が海底トンネルを通過して入国しようとする自称・難民の流入対策として、フランス政府の同意を得て、港町カレーに高さ4メートルのフェンスを建設する方針を明らかにしたとNHKが報じています。

画像:BBCが報じたフランス・カレーに建

 このニュースで注目すべき点は既存のフェンスに加えて新たに約1キロの壁が建設されることでしょう。

 

 英仏海峡に面したフランス北部の港町のカレー近郊には去年夏以降、中東などからの移民や難民が押し寄せ、キャンプをつくって滞在していて、支援団体によりますと、その数は9000人を超えています。これらの移民や難民が目指すのはイギリスで、海底トンネルを通るトラックに飛び乗ったりして国境を越えようと試みる人が後を絶たず、死傷者も出ています。

 イギリスの内務省は、海底トンネルを通って移民や難民が入国するのを防ぐため、フランス政府の同意を得て、トンネルに向かう幹線道路沿いにおよそ1キロにわたって高さ4メートルの壁を建設する方針を明らかにしました。

 

 NHKが報じたニュースだけでは、「イギリスが新たに壁を建設する」という情報だけです。

 これはアメリカのトランプ大統領候補が「メキシコとの国境沿いに壁を建設する」と主張した内容と同じ効果を持つことを実行に移したと言えるでしょう。しかし、BBCが伝えた上空からの写真を確認すると、既存の壁(= Exsiting fence)が存在していることが分かります。

 つまり、既存の壁に加え、新たに約1キロに渡って高さ4メートルの壁が(イギリス政府の負担で)建設されるということなのです。

 

 日本に対し、「移民・難民を積極的に受け入れよ」と主張する欧米圏出身者などがいますが、彼らは自分たちが祖国や母国に対し、同様の訴えを繰り広げているでしょうか。

 「移民・難民は来るな」というメッセージを物理的な障害物を建設することで発信している国家が存在しているのです。この点に気づいていないならジャーナリストや論客として能力不足ですし、意図的に無視しているなら論説を聞くに値しない程度の人物と言えるでしょう。

 密入国を目論む人物に対し、その犯罪行為を “人道的に許される” などとメディアが称賛し続けることが移民・難民問題の温床になっているのです。

 社会で禁じられた行為をしたにも関わらず、何のお咎めも受けない。それどころか、称賛される場合が多い。その結果、「自分のやりたいことをやっても許される」と間違った学習をする人物が多数出てくることになるからです。

 

 ルールを堂々と破ってくる輩が称賛される社会ほど、正直者がバカを見る結果となります。当然、社会秩序も揺らぎ、ギスギスした関係が構築される要因にもなることです。

 それを予防するという点で「既存ルールに従い難民申請を行うべきで、規則を意図的に破った者は国外追放すべき」と主張すると、“レイシスト” や “差別主義者” とレッテルを貼られるのですから、社会が分断して当然と言えるでしょう。

 移民・難民の発生源となった社会問題や政治問題の原因特定をせず、受け入ればかりを優先すると新たな問題の火種となります。移民・難民の発生国で生じていた問題がそのまま受け入れ国にも到達するからです。

 問題に対する原因特定を行い、受け入れ国で問題が再発しないよう対策を講じることが最優先されるべきことなのです。仮に対応策が移民・難民の権利を一部制限することになったとしても、国家・国民の安全のためには断固として実行すべきと言えるのではないでしょうか。