「派遣の雇い止め」を批判する前に「派遣会社のピンハネ」を批判せよ

 厚労省の調査により、全国にある派遣会社の 15% がマージン率を非公開になっていることが明らかに なったとNHKが報じています。

 また、公開されているマージン率も高く設定されている様子を見てとることができ、この部分に対しても批判の声をあげる必要があると言えるでしょう。

 

 厚生労働省は、ことし4月までの3か月間に全国にある派遣会社の1112の事業所を対象に、法律で義務づけられている情報の公開を行っているかなど調査しました。

 その結果、労働者を派遣して企業から支払われた料金のうち、労働者の賃金を差し引いて派遣会社が受け取った割合、いわゆるマージン率を公開している事業所は73%でした。

 

 どのぐらいのマージン率を設定しているかの割合は下図のとおりです。

画像:NHKが報じた派遣会社のマージン率

 マージン率は 20〜40% に設定している派遣会社がほぼ9割です。マージン率を公開している企業は 73% ですから、派遣業界の 65% が 20〜40% のマージンを取っていると言えるでしょう。

 

 1番の問題は「全体の 15% に該当するマージン率を公開していない派遣会社」です。

 人材管理を行う上で一定のコストがかかることは当然です。しかし、“中抜き” の割合が高くなり過ぎている点に対しては批判の対象となるでしょう。

 ネット上で “ピンハネ” の代名詞として批判にさらされている日本ユニセフが活動費として充てているのは募金額の約20%弱(注:日本ユニセフ協会発表)。日本ユニセフの発表内容が事実とすると、この数値以上のマージン率をほとんどの派遣企業が設定していることになるのです。

 日本ユニセフからすれば、「自分たちより高いマージン率を設定している業界が堂々と存在しているのに、なぜ自分たちだけが批判を受けなければならないのか」と感じることでしょう。

 日本ユニセフ協会の中抜き率(=マージン率)をアウトと主張するのであれば、派遣業界が一般的なマージン率として適用している数値についても同様にアウトとすべきなのです。

 マージン率の公表を行っていない企業は「答えたくない」というような数字を設定しているものと思われます。そのような問題のある企業を育むことになっている土壌にメスを入れることは不可欠であり、規制を設ける行政の役割と言えるでしょう。

 

 派遣労働者の厳しい生活水準の解決を求めるのであれば、彼らの給与から 20〜40% を天引きしている派遣企業にマージン率の引き下げを要求すべきです。

 この割合が日本ユニセフ協会と同じ約20%弱に下がるだけでも、派遣労働者の生活水準は楽になることでしょう。もし、現状の高いマージン率を保つのであれば、派遣先から打ち切られた場合でも、マージン率による金銭的な蓄えを保つ派遣企業が派遣労働者の面倒を見ることが絶対条件です。

 批判の矛先を間違えてしまうと、単なる活動家のパフォーマンスになってしまうことに注意が必要と言えるのではないでしょうか。