対話による解決が困難であるから訴訟に発展するという現実から目を背ける朝日新聞

 在日アメリカ軍の普天間飛行場を辺野古に移設することを巡る裁判で、国側が全面勝訴となる判決が福岡高裁那覇支部から出ました。

 これに対し、朝日新聞は9月17日付の社説で「辺野古判決 それでも対話しかない」と主張しています。対話による解決が不可能であるから、どちらの言い分が正しいかを訴訟で判断するという法治国家の形態を否定する論説は問題があると言えるでしょう。

 

 一日も早く普天間の危険をなくしたい。その願いは政府も県も同じはずだ。対立ではなく、対話のなかで合意点を見いだす努力を重ねることこそ、問題解決の近道である。

 (中略)

 政府が直視すべきは、県民の理解がなければ辺野古移設は困難だし、基地の安定的な運用は望み得ないという現実だ。

 県民の思いと真摯(しんし)に向き合う努力を欠いたまま、かたくなな姿勢を続けるようなら、打開の道はますます遠のく。

 

 朝日新聞が主張するように「普天間の危険をなくしたい」というのであれば、辺野古移転を妨害する理由はありません。なぜなら、辺野古に移転すれば、普天間の危険はなくなるからです。

 しかし、翁長知事は仲井真前知事が許可した承認を取り消しました。それが今回の訴訟の発端であり、敗訴という結果を招いたのです。

 正当な法的根拠もなく、合意事項をひっくり返す行為を平然と行う相手と何を話し合うのでしょうか。

 

 “対話” というオブラートに包んでいますが、朝日新聞は「沖縄の主張をすべて受け入れよ」と述べているだけです。

 沖縄が直視すべきは国民の理解がなければ、沖縄振興予算の維持は困難であるという現実でしょう。国側と真摯に向き合おうともせず、頑なに被害者ぶる姿勢を続けるなら、沖縄経済の疲弊度だけが増すことになり、失業率や貧困率の悪化が進むことになります。

 経済政策という点においても、沖縄は税制優遇など多くの配慮が行われています。ゴネる相手を甘やかしたところで、“食い逃げ” をすることは目に見えています。

 そもそも、沖縄県の税収では県の職員の人件費を賄うことがやっとのレベルであり、ゴネ得を許す姿勢を改めなければならない時期に来ていることは明らかです。翁長知事は違法と認定された自らの手法を反省することなく、ありとあらゆる手を使って辺野古移転を妨害する姿勢をアピールしています。

 クレーマーの言いがかりを真摯に対応するほど、コスト高となり割に合わなくなるのです。財政再建が必要となる中、沖縄だけに多額の資金援助を行う意味は存在しないと言えるでしょう。

 

 国防に関する部分であれば、国の予算から資金を拠出する意味は理解できます。しかし、関係しないのであれば、国が特別に予算を計上する必要はないでしょう。

 “振興予算” という名目であるなら、なおさらです。自然災害による復興に要する多額の資金を必要とする人々や地方自治体が沖縄以外には多数存在するのです。そちらに予算を割りあてる方が価値を生み出すはずです。

 対話で解決する問題であれば、訴訟にまで発展することはありません。仮に最高裁に上告したとしても、結果は見るも無残な完全敗訴となることが濃厚であるから、対話という形で “沖縄の民意” に対する誠意を求めたいのだと思われます。

 少なくとも、その必要はないでしょう。なぜなら、訴訟になった段階でその選択肢は除外されたのですから。