“角度を付けた記事” を売り物にしていた朝日新聞、経営の傾きが強くなる

 週刊ポストが朝日新聞の社外秘資料を入手したところ、「3年で500億円の減収」が起きると社員に危機感を抱かせようとしている内容が記述されていたと報じています。

画像:週刊ポストが報じた朝日新聞の社外秘とされる文書

 “クオリティーペーパー” を自称し、高級紙としての地位を確立していた朝日新聞ですが、その前提が根幹から揺らぎ続けていることが失速の大きな原因と言えるでしょう。

 

 朝日新聞だけが苦境にある訳ではありません。情報伝達経路が多様化したことにより、先進国の新聞社はどこも苦しい状況なのです。

 特に苦しいのは英語圏の新聞社でしょう。

 インターネットを通して、世界中の誰もが情報発信源となることができるからです。特派員が現地で少し調べた情報でも以前は重宝されました。しかし、“上っ面だけの取材に基づく記事” は即座にネット上で指摘されることが当たり前の時代になりました。

 

 特に、英語は学習が比較的容易な言語で、ビジネスシーンで多く利用されることから、世界各地から様々な情報が発信されている現状なのです。

 数日程度の薄っぺらい取材で得た情報など、現地で生活し、英語での情報発信力をそれなりに兼ね備えた人々に即座に矛盾が指摘される原因となります。つまり、先進国の新聞社が築いてきた “信頼性” が揺らぐ原因となる訳ですから、読者離れが起きることは当然と言えるでしょう。

 

 朝日新聞はネット戦略に注力し、活路を見出そうとしていますが、あまり効果が出ていない状況です。10月27日から朝日新聞デジタルの分類を次のように変更するとのアナウンスが提示されていることからも見て取ることができます。

 最新の速報ニュースは、原則として無料でお読みいただけるようにします。スポーツの結果、天気・災害情報や社説、&マガジンなどはこれまで通り無料です。

 一方で、朝日新聞独自の深掘り記事や特集記事は「有料記事」とします。全文をお読みいただくには、有料会員になる必要があります。

 この変更に伴い、無料会員が、有料記事を読める本数を1日3本から、1日1本に改定させていただきます(新たに設ける「有料会員限定」の記事は対象外です)。

 速報ニュースを扱うメディアは朝日新聞だけではありません。事実のみをフラッシュニュースとして報じるのであれば、ツイッターのようなSNSで十分と言えるでしょう。

 朝日新聞の取材による独自記事は「有料記事」と「有料会員限定記事」に分類されるとのこと。“角度を付けた記事” にお金を払ってまで読みたいと考える読者は少ないのではないでしょうか。

 

 多種多様な分野の情報がネット上に存在し、玉石混交である現状を考えると、情報を整理・整頓し、編集した上で伝達するという役割が消え去ることはないと言えるでしょう。

 重要情報や必要な情報を的確に見つけることができる個人もいます。しかし、手間・暇を要することですので、信頼性を持ったメディアがその役割を担うことは十分に可能なことです。

 そのための大前提が角度を付けることなく、事実に基づいた情報を整理して伝達するということなのです。

 「角度を付けることが朝日新聞の持ち味」などと考える記者やデスクがいる限り、朝日新聞の読者離れは止まることはないでしょう。朝日新聞の思想に基づくストーリーを新聞で読みたいとは考えないからです。

 

 自分たちの主義・主張に沿った内容は大きく煽動する記事を掲載する一方で、それが間違いであった際に訂正を滅多に出さないという業界体質を改めることが求められているのです。

 訂正の動きが遅く、小さな記事で、何を訂正しているのか分かりにくい記事で誤魔化す姿勢を続けているのですから、読者が信用しなくなることは当然でしょう。誤報・捏造の被害にあった人やその関係者から新聞離れが進行するためです。

 自社の論説によって世論を導くことができると思い上がりが続く限り、新聞社やメディアの地盤沈下は止まる見込みはないと思われます。既存メディアが衰退の道を選ぶのであれば、それは自業自得と言えるのではないでしょうか。