「記者が自由に官庁の執務室に入れないのは問題だ」と主張するマスコミ

 経産省が情報管理を強化する目的ですべての執務室の入口を電気キーで施錠したことに対し、NHKを始めとするメディアが「取材活動が制限されることになる」と文句を述べています。

 重要な案件を扱う部署であるにもかかわらず、“記者” であることを強弁すれば突破できてしまうセキュリティーの方が問題と言えるでしょう。マスコミ側の要求が異様なことなのです。

 

 経済産業省は27日、広報担当者と庁舎管理の担当者が記者会見し、情報管理を強化するため27日から庁舎内のすべての執務室の入り口を夜間だけでなく、日中も電子的に施錠する措置を始めたと説明しました。

 経済産業省の担当者が取材者と面談する場合は事前に内線電話で連絡を取ったうえで、執務室内とは別の場所にある応接スペースで対応するとしています。また、取材内容を記録する別の担当者を同席させたうえで、内容は広報室に報告するとしています。中央官庁ですべての執務室を日中も施錠するのはあまり例がないということです。

 

 「アポイント(=約束)は不要で、取材対象者に取材内容を記録することを許さず、重要な案件が取り扱われている場所で取材に応じろ」と要求しているのです。

 これは明らかにおかしい状況と言えるでしょう。マスコミは様々な取材情報が集まる本社を “情報を求める” 一般の読者に解放しているのでしょうか

 マスコミの本社に読者が「この件の報道はどうなっているのか」という “取材” に訪れれば、入口で門前払いにすることでしょう。経産省が実行したのはそれと同じことなのです。

 

 もし、マスコミが経産省に “従来の取材体系” を要求するのであれば、自分たちの本社でも同様の対応を採らなければなりません。

 アポ無しで “取材” にやって来た読者に対し、自由に建物内への立ち入りを認め、取材内容の記録をする自社の者が付くことは認めず、編集部内で取材に応じることで対等な関係となるのです。

 さて、そのような対応を行っているメディアやマスコミは存在するでしょうか。読者が「マスコミは自分たちにとって都合の悪い情報を隠しているのではないか」という視点での取材活動に対し、制限をかけているのは他ならぬマスコミ自身なのです。

 違うというなら、「本社へのアポ無し取材および編集部への突撃取材は容認されている」と堂々と宣言する必要があります。

 

 マスコミやメディアが「価値はない」と判断したネタであっても、読者にとっては重要な情報である可能性は十分に存在します。そうした事態が起きていないかを確認するために “取材” をしたい読者も存在することでしょう。

 『読者の知る権利』をマスコミ・メディアが阻害するようなことはあってはありません。「官庁が隠し事をできるようにする体制は許さない」と主張すれば、「マスコミが隠し事ができる体制は許さない」とブーメランになるのです。

 「先ず隗より始めよ」という故事があるのですから、マスコミやメディアが自分たちが隠し事をしていないことを読者がガラス張りで確認できるよう本社への立ち入りを容認することから始めるべきなのではないでしょうか。