科学的根拠を否定し、風評を理由に石原慎太郎氏を叩くマスコミの姿勢は問題だ

 豊洲市場への移転を巡り、元東京都知事の石原慎太郎氏が記者会見を開いたとNHKなどメディアが報じています。

 この記者会見で明らかとなったのはマスコミが “マスゴミ” と揶揄される理由でしょう。メディアが科学的根拠を否定し、風評を流す側に回ってしまえば、存在価値はゼロになってしまうからです。

 

 東京都の石原元知事は3日午後、記者会見を開き、豊洲市場への移転について、決断した責任を認めた一方、「都庁や都議会、専門家が論議して決めたことを認めただけで、私だけに責任がある訳ではない」と述べ、一連の問題の責任は、都の担当局や都議会にもあるという認識を示しました。

 そのうえで、築地市場の移転延期を判断した小池知事の対応について、「やることをやらないで、業者を生殺しにしてほったらかして、混迷の責任は小池知事にある」と述べて批判しました。

 

 「科学が風評に負けるのは国辱」と述べた石原氏の発言がすべてを現していると言えるでしょう。

 科学を軽視し、素人感覚を優先する姿勢をメディアが繰り返し報じているのです。ノーベル賞を受賞した日本人科学者が異口同音に「研究予算が足りない」と警鐘を鳴らすことは当然です。

 なぜなら、研究費という形で科学が軽視されていることを肌で実感しているからです。定められたプロセスを踏んだ上で科学的に導き出された結論が “感情” によって全否定されてしまうのです。これは『人治国家』の所業と言わなければなりません。

 

1:豊洲市場は7兆円の予算を扱う都知事の案件ではない

 建設費が大きく、都知事案件という色合いが強く描かれている豊洲市場ですが、東京都の予算が7兆円規模であることを考えると都知事案件とは言えないでしょう。

 都知事が認可しなければ、事業がスタートすることはありません。しかし、定められたプロセスを経ており、「石原氏に全責任がある」と主張することは言いがかりです。

  • 専門家:豊洲市場は技術的に問題なし
  • 東京都の担当局:(要件を満たしており)許可
  • 東京都知事:GOサインを出す
  • 東京都議会:知事の判断を承認

 専門家が「問題はない」と判断し、都の担当局も許可をした案件であり、都知事は認可したのです。これは法治国家では当然のプロセスであり、瑕疵は見当たりません。

 専門家から問題点が指摘され、都の担当局も懸念を示す中で石原氏が強引に許可を出していたのであれば石原氏の責任は問われるべきでしょう。しかし、実際には実務の担当者が問題ないと報告した案件に対し、実行に移す許可を与えたにすぎません。したがって、承認責任以外を問うことは難しいと言えるでしょう。

 

2:現在の混乱を招いたのは小池百合子都知事という指摘は正しい

 アスベスト問題に加え、土壌汚染、老朽化に耐震化の問題と築地市場が限界に達していることは明らかなことです。

 石原氏は都知事時代に独断で豊洲市場への移転を決めたのではなく、専門家・都の担当局・議会と定められた通常プロセスに従い判断を下したのです。その一方で、小池都知事は安心を求める “空気” を理由に独断で移転を止めています。

 「科学的な根拠を理由に通常プロセスで移転に向けた動きを許可した石原氏」と「風評を理由に移転をストップさせている小池都知事」のどちらに問題があるかは明らかです。

 問題なのはマスコミが風評を流す側に加担し、小池知事の応援団になっていることです。福島に対する風評を流し、儲けた記憶を持つマスコミは豊洲で “二匹目のドジョウ” を狙っているのでしょう。

 マスコミ的には書いた記事がセンセーショナルで売れれば良いのであり、風評被害が起きたとしても気にしません。なぜなら、被害者への補償を行う責任がなく、当事者意識はゼロだからです。これは煽動目的と報道と言うべき問題のある内容と言えるはずです。

 

3:土壌汚染対策をした上での瑕疵担保責任であることをメディアは無視している

 石原氏が行った記者会見では “瑕疵担保契約” に焦点を当てていましたが、根本的な部分で大きな誤解をしているように思われます。

  • マスコミの思い込み:
    • 東京ガスの負担は瑕疵担保契約にある78億円だけ
  • 実際:
    • 条例に基づき土壌汚染対策約100億円の処理を実施
    • 公益性が高い施設という理由で、78億円の対策費を追加拠出

 豊洲市場の土地を保有していた東京ガスですが、法律に基づく土壌汚染対策は自費で完了しています。マスコミが騒いでいるのは「追加で拠出された分」についてなのです。

 法律で定められた分の対策はすでに完了しており、東京ガスは元所有者としての責任は果たしています。にもかかわらず、メディアが「不安だから」と騒いだことに対する風評被害の穴埋めを無限責任で負わされることは酷な話であり、“ゆすり” や “たかり” と同じことと言えるでしょう。

 

 “福島デマ” でオイシイ思いをしたメディアは豊洲市場への移転問題でも同じことをするはずです。マスコミ関係者は風評被害で苦しむ立場にはいない訳ですし、イジメなどの問題が起きれば何食わぬ顔で「被害者の気持ちに気づかなかったのか」と役所批判をすることでしょう。

 『不安ポピュリズム』で一儲けができると学習したマスコミは “手痛いしっぺ返し” を受けるまで方針転換をすることはありません。

 情報発信のできる時代になったのですから、マスコミが風評ビジネスで儲けようとする姿勢を批判することが必要であり、メディアに騙されないようなリテラシーを身につける必要が高まっていると言えるのではないでしょうか。