ベトナム籍の女児殺害事件から学ぶべきは「事件を起こす人物はどこにでもいる」ということだろう

 「犯人は身近にいる」という推理小説の中で良く見られるストーリーが現実でも起きていたようです。

 千葉県で発生したベトナム籍の女児殺害事件で、女児が通学していた小学校の PTA 会長を務めた経歴を持つ人物が逮捕されたと NHK が伝えています。ただ、衝撃度が大きいだけに、慎重な捜査を進める必要があると言えるでしょう。

 

 先月26日、千葉県我孫子市の排水路脇でベトナム国籍の小学3年生の女の子が殺害されているのが見つかった事件で、警察は、近くに住む46歳の男を遺体を遺棄した疑いで逮捕しました。男は女の子が通っていた小学校の保護者で作る会の会長を務めていたこともあり、警察は、事件のいきさつなどを詳しく調べる方針です。

 

 「現場の遺留物の DNA の型が容疑者のものと一致した」ことが逮捕の決め手と NHK は報じていますが、朝日新聞では「容疑者の DNA 型が酷似している」と報じています。

 そのため、容疑者を犯人と決めつけることにはリスクがあることを自覚する必要があるでしょう。なぜなら、大阪・東住吉区で発生した火災による女児死亡事故と同じ顛末を迎える可能性があるからです。

 保険金殺人の容疑者として女児の母親と内縁の夫が逮捕されましたが、証拠不十分で無罪となりました。状況は「限りなくクロに近いグレー」でしたが、クロとは断定するだけの十分な根拠がなかったことが理由です。

 同じ展開を招かないことが今後の捜査に求められていることは言うまでもないことです。

 

 逮捕された容疑者が事件の犯人であるなら、事件の動機を解明する必要があるでしょう。容疑者は黙秘を続けていると報じられていますが、犯行に至る理由が存在しているはずだからです。

 遺体が遺棄されていますので、“通り魔” 的な犯行である可能性は限りなく低いと判断できます。通り魔であれば、犯行の対象は誰でも良く、遺体を別の場所に運ぶ必要はないからです。

 しかし、今回の事件ではベトナム籍の女児が被害者となっていますので、「容疑者との接点」を確認する必要があります。“子供同士のいざこざ” や “保護者間でのトラブル” が犯行の引き金となっている可能性は十分にあるため、あらゆるシナリオを考慮した上で捜査を行うべきでしょう。

 

 被害者側の狼藉度合いがあまりに酷く、加害者側に同情が寄せられるというケースもあるのです。山口県周南市(旧鹿野町)の集落で発生した事件がその例と言えるでしょう。

 殺人という行為を支持することはできませんが、これは「しわ寄せ」の影響を受けていない第三者だから述べることができる無責任なもの。実際に不利益を被る “ごく一部の立場” に置かれた場合にそれを受け入れ続ける人は例外中の例外です。

 千葉県の事件では「容疑者が “板挟み” になっていなかったのか」を調査する価値はあるでしょう。

 文化・価値観の違いからトラブルが生じ、クレームが PTA 会長にまで届いていた。注意をしたが聞き入れられず、逆に一部の保護者から「ヘイトスピーチだ」などと被害者擁護の声が上がり、クレームを入れた側の保護者からも「なぜ、対処されないのか」と叱責された。

 このようなケースは決して珍しいケースではありません。類似のトラブルは全国で確認することができることでしょう。

 

 動機が解明され、事件の犯人である証拠が固まらない限り、有効な再発防止策が打ち出されることはないと思われます。マスコミ的にはワイドショーネタができたことでオイシイ思いをするでしょうが、世間一般からすれば、歓迎できない話題であると言えるのではないでしょうか。