テロ等準備罪、いわゆる “共謀罪” が成立しないことによるマイナスは何が考えられるのか

 国会で審議が行われている『テロ等準備罪』を含めた『組織犯罪処罰法の改正案』のことを一部マスコミは “共謀罪” と報じ、成立に反対するキャンペーンを展開しています。

 断固反対の立場を採る人々やメディアも存在しますが、成立しないことのデメリットがあることを見落としてはなりません。もし、野党などが主張するように廃案となった場合、日本がどのような不利益を被るかを確認しておくことにしましょう。

 

1)テロ対策等の法案整備において、日本は後進国

 “安全な国・日本” で生活していると、自覚することすらないでしょう。日本はテロ対策など組織犯罪に対する法整備の進捗が世界でも類を見ないほど遅い国なのです。

 2008年に財務省から発表された『対日相互審査報告書概要(仮訳)』からも、確認することができます。

  • パレルモ条約を未締結
    • 多国間条項に基づく法律上の相互援助が欠如
      → 一般法に基づく対処が強いられる
    • 事件ごとに共助の要請を強いられるため負担増
  • 刑罰が緩いことの弊害
    • 訴追権限なしでの犯人引き渡しは非現実的
    • 例)資金洗浄やテロ資金供与罪など
  • テロ資金提供に対する問題点
    • “資金” の定義が限定的
    • 非テロリストのテロリストのための資金調達が合法
    • 間接的な資金の提供・収集がカバーされているか不明確
    • テロ以外であれば、資金の提供・収集が違法であるかは不明確

 

 パレルモ条約』とは国際組織犯罪防止条約のことなのですが、世界180以上の国・地域が締結する中、日本は未締結です。上述のように、日本の現行法では問題があるため、対応に乗り出すことは必須であると言えるでしょう。

 「日本ではそのような犯罪は起きていないため、不要である」との意見はグローバルで人・金・物の移動が容易になった現代の基準では認められないものなのです。

 

2)“共謀罪” を廃案に持ち込んだ場合、具体的なデメリットとは?

 『パレルモ条約』に加盟するために必要な『テロ等準備罪』の成立を取りやめた場合、国際社会から “ハイリスク国” に指定されるリスクが極めて高くなります

 FATF(金融活動作業部会)から「テロリストなど国際犯罪組織に資金調達で協力している可能性が高い」と認定されてしまうのです。これは日本人や日本企業にとって大きなデメリットとなるでしょう。なぜなら、次のようなことが起きることが懸念されているからです。

  • 国際社会から日本の信用が低下する
  • 銀行に対する現地当局からの監視が強まる
    • 金融取引に遅れが生じる
      → ビジネス機会の損失
    • コルレス条約の解除リスク
      → 海外送金、信任状の授受、手形成立などに影響
  • 日本人の渡航に対しても、悪影響を及ぼす

 資源の乏しい日本が貿易など国際取引を制限されてしまうと、経済に対する甚大な影響が出ることになります。

 「反社会的組織との取引は行わない」という動きが日本であるように、世界では犯罪組織の利益につながる恐れのある人物・組織との取引は敬遠する流れが確立しているのです。なぜ、テロリストや犯罪組織のために日本人や日本企業が悪影響を被る必要があるのでしょうか。

 「共謀罪廃案」などと訴える人はこの点に対する回答をする責務があります。

 

3)なぜ、一部の外国人記者などは “共謀罪” の成立に反対するのか

 国会で『テロ等準備罪』の議論が進む中、一部の外国人記者やマスコミは法案成立に反対を表明しています。しかし、これには大きな裏があります。

 なぜなら、彼らは外国人。日本がハイリスク国に指定されたところで、日本以外のパスポートを持つ外国籍保有者には何の悪影響もないからです。

 “共謀罪” を廃案に追い込むことで日本がハイリスク国に指定されるリスクが高まります。それにより、『パレルモ条約』を批准済みである中国企業や韓国企業が国際市場で日系企業を駆逐できる可能性が高くなる訳ですから、日本政府との対決姿勢を打ち出す野党やマスコミと歩調が合いやすくなるのです。

 また、一部の外国人記者が “共謀罪” に反対する理由は「脛に傷があるから」です。

 アイルランド共和軍、ドイツ共産党、赤い旅団(イタリア)など本国で “お尋ね者” となっているテロ組織と近い人物が日本に流れ着いているのです。このような人物からすれば、『テロ等準備罪』が整備されることは迷惑な話であり、反対意見を表明することでしょう。

 なぜなら、非テロリストという立場で執筆活動を行い、本国のテロリストに資金提供しても罰せられる恐れのない “天国” だからです。その特権を守るため、識者のふりをして、日本を危険にさらす真似をする不届き者が紛れ込んでいることを忘れてはならないのです。

 

4)共謀罪廃案ではなく、対案の提示が不可欠

 日本人の海外渡航に不利益が生じ、日系企業が国際取引や資金調達でデメリットを被ることは明らかであり、『パレルモ条約』の批准項目を満たすことは不可欠です。

 そのため、「共謀罪を廃案に追い込む」というだけでは不十分であり、対案を提示することは不可欠です。“共謀罪” に反対する野党やマスコミはその事実を報じているでしょうか。

 日本テレビ・ニュースゼロの村尾信尚氏は「国連事務総長宛に批准を通告するだけで良い」と無責任なことを述べていますが、不備を指摘されれば元も子もないのです。

 テレビで誤った情報を伝えたにもかかわらず、アナウンサーがお詫びの文言を読み上げる程度で免罪されるマスコミとは求められる水準が違うのです。“ハイリスク国” に指定されると、マスコミの国外取材も難しくなり、スポンサーも逃げ出すという現実に目を向ける必要があります。

 平和ボケの進行が著しいのはマスコミでしょう。ただ、“在日” が多く在籍しているのであれば、ハイリスク国認定は無関係ですから、日本の国益を損なうことに熱心であることに矛盾はありません。しわ寄せを受けるのは一般の日本人であり、そのことは決して忘れるべきはないと言えるでしょう。