ジェフ千葉のボールボーイが “本来の仕事” をできていないことに対する処分は科さないの?

 サッカー・J2 の千葉対徳島戦で選手がボールボーイをこづいて一発退場になったと朝日新聞が伝えています。

 ヨーロッパでは時折耳にするケースですが、Jリーグでは初めてのことでしょう。しかし、問題のきっかけとなるのは「ボールボーイが相手チームにボールを渡すことを意図的に拒否するから」です。フェアプレーを掲げるのであれば、Jリーグはジェフ千葉側に注意を与える責任があります。

 

ボールボーイの姿勢を容認するJリーグ公式スポンサーの朝日新聞

 問題の退場処分は前半14分。徳島が千葉陣内でスローインを得た場面だった。球とともにタッチラインの外に出た馬渡が、近くにいたボールボーイに対し、別の球を渡すよう要求。反応がやや遅れて球を渡されたため、いらだった様子でこづいた。高山啓義主審はこれを「乱暴な行為」と判断し、すかさずレッドカードを提示した。

 

 文字による情報だけだと、徳島の馬渡選手が 100% 悪者にされるでしょう。しかし、映像で確認すると、そうは言い切れない状況です。

 「やや遅れてボールを渡された」ということは千葉の見解を鵜呑みにしたものであり、それほど興味のない第三者や徳島サポーターは全く別の印象を抱くはずです。

 

千葉が不利にならないよう妨害行為をしたボールボーイ

 問題のシーンは前半14分のこのプレーで起きました。

画像:千葉のGKがボールをクリア

 徳島(ユニフォーム:白)が相手陣内の深い位置でスローインを獲得します。この時、ボールを外に出したのは千葉の GK であり、ゴールはガラ空きです。すぐにプレーを再開したい徳島は手前にいたボールボーイに持っているボールを要求。

画像:馬渡選手がボールボーイにボールを要求する

 ところが、ボールボーイはボールを手渡すことを拒否。馬渡選手が近づいてくると、1メートル足らずの距離から馬渡選手にボールを投げつけます。

画像:この距離に近づかれて、ボールを投げつけるボールボーイ

 ボールの要求を拒否された上、至近距離に近づいたところでボールをぶつけられた馬渡選手はボールボーイをこづいてしまい、“乱暴な行為” としてレッドカードが提示されることとなったのです。

 

千葉対徳島戦の MOM はこのボールボーイ

 サッカーでは採点を付けることが一般的ですが、このボールボーイは10点満点で満点に近い評価を得て、マン・オブ・ザ・マッチに選出されることでしょう。

 なぜなら、スローインではオフサイドはありません。そのため、前半14分に訪れた所属チームの大ピンチを「ボールを相手チーム(徳島)に渡さない」ことで防いだ上、馬渡選手の挑発にも成功し、退場に追いやりました

 ジェフ千葉の勝利に多大な貢献をした訳ですから、クラブからは大きな称賛を受けるはずです。

 しかし、ボールを要求されているにもかかわらず、それに応じていない時点で “フェアプレー精神” が欠如していることが明らかになりました。Jリーグは「ルールに違反されていないなら、何をしても良い」という “ダーティーなプレー” を認める方向性で発展を考えているのでしょうか。

 「こづいた選手は論外」と批判するのであれば、プレーの進行を意図的に妨げたこのボールボーイに対する批判もしなければなりません。彼の “仕事” は「ジェフ千葉が有利になるように働くこと」なのでしょうか。

 

徳島はホームでのリターンマッチで報復する権利がある

 ジェフ千葉のボールボーイがチームが不利にならないよう露骨に介入してもセーフという状況なのですから、徳島がホームでのリターンマッチで同様の報復行為に出たとしても、千葉側に文句を言う資格はありません。

  • 相手チームからのボール要求はタッチラインに置くか、選手の身体にぶつける
  • 詰め寄られたから、向こうに行けと手で追い払う仕草をする
  • 接触があれば、大げさに倒れる
  • 文句を言われたら、言い返すなど選手への挑発を行う

 上記のようなフェアプレーとはかけ離れた手段が OK となったのです。堂々と報復すれば良いでしょう。

 ボールボーイがいるのは「複数のボールを利用して、プレー時間を少しでも長くするため」です。Jリーグの掲げる方向性とは逆の働きをした千葉のボールボーイを容認するなら、現行のマルチボール制を止め、プレミアリーグ(イングランド)で用いられているシングルボール制を採用すれば良いことなのです。

 

 チームのために、ボールボーイも “グル” になることは珍しいことではありません。しかし、「ボールを渡せ」と言われて渡さない時点で “仕事” ができていないのです。

 「どちらのチームのスローインか」を判断するかは審判の仕事であり、ボールボーイの仕事ではありません。間違ったチームがスローインを入れれば、審判がプレーを止めるのですから、ボールボーイが判定する余地は皆無なのです。ジェフ千葉のユースはそうした当たり前のことも教えていなかったのでしょうか。

 こづいた行為で馬渡選手がクラブから処分を受けることは当然です。アドレナリンが全開であったとしても、周囲の状況を把握する冷静さは持ち合わせていなければなりません。

 しかし、それと同時に “仕事” ができないボールボーイを公式戦で働かせたジェフ千葉も同様に処分を受けるべきなのではないでしょうか。