すでに輝いている “ダイヤそのもの” を探すというコンセプトは「オスカーには育てる力はありません」と宣言していることと同じでは?

 Yahoo! の子会社である THE PAGE が「原石よりも輝くダイヤ探し」と題し、芸能事務所オスカーの方針を絶賛する記事を書いています。

 これは単なる提灯記事でしょう。なぜなら、カッティング技術に相当するものを持っていれば、宝石の原石を発掘すれば十分だからです。完成されたダイヤモンドを探すことに本腰を入れ始めたということは「原石を宝石として輝かせる術がない」と認めたも同然と言えるでしょう。

 

 昨年、芸能界において”美の殿堂”といわれる名門事務所オスカープロモーションが、「ミス美しい20代コンテスト」を開催したことが話題になった。約4万名の応募の中から、福岡大学在中で空手が得意という是永瞳(21)がグランプリに輝いた。

 (中略)

 「ミス美しい20代コンテスト」は、20代女性を対象に”ダイヤの原石”ではなく、すでに輝いている”ダイヤそのもの”を探すというコンセプトで開かれた。その背景には、「同世代の女性に支持される女優の発掘」という、オスカーの緻密なマーケティング戦略がのぞく。

 

 10代女性の中にいる “ダイヤの原石” を20代女性に共感される “ダイヤそのもの” に磨き上げる能力に長けているなら、“ダイヤそのもの” を発掘する必要はありません。

 マーケティング戦略は「ダイヤの素晴らしさを世間に知らしめること」が本来の役割であり、「ダイヤを輝かせること」や「輝いているダイヤを見つけること」は範囲外なのです。売り出し方に難を抱えるオスカーの方針は曲がり角に差し掛かっていると言えるでしょう。

 

1:“ゴリ押し” は誰もが情報を発信できる時代ではマイナス面が大きすぎる

 オスカーのオーソドックスな売り出し方は『全日本国民的美少女コンテスト』で “10代の原石” を発掘し、それを猛プッシュして地位を確立させる手法になるでしょう。

 問題はこのやり方が曲がり角に差し掛かっていることです。その理由は「誰もが情報を発信できるため、実力の伴わない女優・モデルを一流と強弁できなくなったこと」が最も大きいと言えるでしょう。

 実力があることを証明できれば、“ゴリ押し” ではなく、先見性があったと評されることになります。

 しかし、所属する女優やモデルに可能なかぎり平等にチャンスを与えず、(実力が示されていない状況で)特定の人物だけを過剰なまでにプッシュしていれば、嫌悪感が広がる原因になります。これはライバルの芸能事務所を利することしかメリットはないと言えるでしょう。

 

2:“ダイヤそのもの” は他の芸能事務所に所属している

 オスカーが “ダイヤそのもの” を一般の中からコンテスト形式で発掘できると信じていることは奇妙と言えるでしょう。

 対象が一般人なのですから、“ダイヤの原石” であることに変わりありません。10代よりも、ダイヤに近い原石を発掘できる可能性はありますが、それは「10代女性へのスカウト力に欠ける」、「原石をダイヤとして輝かせる技術がない」などを示すことにもなり、諸刃の剣となる恐れがあります。

 芸能事務所で磨き上げられたことで “ダイヤそのもの” となるのです。そう割り切れば、他の芸能事務所で磨かれたものの、なぜか十分に評価されていない “ダイヤそのもの” をオスカーが引き抜き、得意のマーケティング戦略で売り出す方が良い経営戦略と言えるでしょう。

 能年玲奈さんに十分な給与を支払っていなかったことが明るみに出たレプロのような芸能事務所から『金の卵』を引き抜き、上手く売り出す方針を貫くこともありと言えるはずです。

 

3:過大評価されている俳優・女優が駆逐されることは良いこと

 実力が伴っていない俳優や女優を主役として起用する傾向が顕著になるほど、情報発信が双方向から行われる現代社会では人気の凋落に歯止めがかからなくなります。

 娯楽が多様化した現代では本物でなければ、生き残ることが難しいのです。逆に言えば、“実力を持った本物” はネットなど思わぬ所から援軍が訪れるケースもあり、事務所の力で過大評価されている俳優・女優にとっては厳しさが増す時代になったと言えるでしょう。

 熱心なファンでなければ、簡単に財布の紐を緩めてはくれません。「演技のレベルが “学芸会” と変わらない」と芸能情報に疎い大勢の第三者が感じているようでは業界全体が苦境に陥って当然です。

 “まぐれ当たり” ですべてを賄ってきた既存の芸能事務所のビジネスモデルは限界に達しており、根本的にやり方を変える必要があるのではないでしょうか。