調剤薬局を1カ所に限定することは生活保護受給者の “小遣い稼ぎ” を防ぐ意味がある

 厚労省が生活保護受給者が利用する調剤薬局を1箇所に限定することを検討していると毎日新聞が報じています。

 「利便性が損なわれる」との懸念を記事に掲載していますが、メリットの方が大きいでしょう。なぜなら、医療費が無料の生活保護受給者が “小遣い稼ぎ” をしていた手法を根絶することが期待できるからです。

 

 厚生労働省は、生活保護受給者が利用する調剤薬局を1カ所に限定する検討に入った。複数の医療機関にかかって同じ薬を重複して受け取るのを防ぎ、生活保護費を節減するのが狙い。受給者は決められた薬局でしか薬を受け取れなくなる。受給者数が全国最多の大阪市などで6月にも試行し、効果や課題を検証する。

 (中略)

 生活保護受給者数は約214万人。医療費は15年度実績で1.8兆円かかっており、保護費全体3.7兆円の半分を占めている。

 

 同じ薬を重複して受け取ることができる現行の制度には問題があります。それは生活保護受給者が無料で手に入れた薬を転売し、“小遣い稼ぎ” ができるということです。

 病気を理由に医療機関を訪れれば、薬が処方されるでしょう。

 3割負担であれば、セカンドオピニオンを求めて、複数の医療機関を受診することはあっても、複数の調剤薬局から同じ薬を入手することは全く意味のないことです。しかし、その薬を無料で手に入れられるなら、大きな意味を持つことになります。

 

 例えば、次のようなケースです。

  • 医療機関Aで診察を受け、処方箋を受け取る
    → 調剤薬局Xで薬を受け取る
    → 自分で使う
  • 医療機関B・Cで診察を受け、処方箋を受け取る
    → 調剤薬局Y・Zで薬を受け取る
    → 他人に転売する

 タダで医薬品が手に入るなら、上記のことに手を染める輩は多数出てきます。おそらく、メルカリのようなオークションサイトで出品する “怖いもの知らず” は多くいることでしょう。

 医薬品の出品は薬事法違反ですので、少数派の行動となるはずです。しかし、「この前、病院で処方された薬があるから安く売ってあげる」と近隣住民や親しい人などに持ちかけて小銭を稼ぐ輩が存在しており、こちらが本丸となっているのです。

 

 「ジェネリックは嫌だ、正規品を出せ」と文句を言い、無料で手にした医薬品を転売して生活保護費とは別に “小遣い稼ぎ” を行う。

 このようなケースが目に付き、医療費による支出が増加する一方では「諸悪の根元」にメスが入ることは避けられないでしょう。処方箋を出す方もキックバックを受け取ることでグルになっていれば、支出に歯止めをかけることは不可能になるからです。

 生活保護費は税金ですから、世間からの風当たりは強くなります。また、自分勝手な “小遣い稼ぎ” が横行すれば、手を差し伸べられるべき対象にまで支援が届かないことの要因にもなり得ることでしょう。

 

 性悪説に基づき、不正ができる土壌があるなら、抜け穴を防ぐことに乗り出す必要があるのです。生活保護受給者の利便性を理由に、不正の温床が維持されることの方が問題だと言えるのではないでしょうか。[]