「大阪府大に獣医学部がある」と報じてしまう毎日放送(本社:大阪市)は大丈夫か?

 加計学園が国家戦略特区の認定を受け、愛媛県今治市に獣医学部を創設しようする件を政局化しようと報じる動きがあります。

 毎日新聞もその一角なのですが、大阪に本社を置く毎日放送(TBS 系列)が「京産大の申請が認められなかったのは安倍政権の “意向” を官僚が “忖度” したからだ」と主張しています。しかし、ツッコミどころがある記事で批判することは明らかな問題です。

 

 京都産業大学が加計学園と同じタイミングで獣医学部の新設を求めていたんですが、国が示したたった1行の条件によって不認可、設立が認められなかったことがわかりました。

 (中略)

 「獣医学部の新設は近くに獣医学部がない地域に限る」(規制緩和の条件)

 この条件によって同じ関西に大阪府立大の獣医学部があることから、京産大は認可がおりないことが濃厚に。さらに「来年4月に開設」という実現不可能な条件まで追加されたことから新設を断念したと言います。

 

 この記事での “ツッコミどころ” は大阪市に本社がある毎日放送が「大阪府立大の獣医学部がある」と言い切っている点でしょう。

 大阪府立大学に獣医学部はありません。あるのは『大阪府立大学生命環境科学域獣医学類』です。旧称でも「大阪府立大学農学部獣医学科」です。

 正式名称を記述するか、「大阪府立大に獣医学部に相当する獣医学類があることから、〜」と表現すべきなのです。

 

 陰謀論を唱えたいのであれば、「産近甲龍の一角から抜け出したい京産大の動きを潰した動きがある」という視点でストーリーを展開すべきでしょう。

  • 京都業大学:京都府京都市
  • 畿大学:大阪府東大阪市
  • 南大学:兵庫県神戸市
  • 谷大学:京都府京都市

 関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)に次ぐ立場にある上記の4大学ですが、医学部を持ち、“近大マグロ” で名前が一気に茶の間に広まった近畿大学が少し抜け出ていると言えるでしょう。

 京産大は同じく京都市に本部を置く龍谷大が直接のライバルとなります。「獣医学部の設置」が認められれば、京産大は龍谷大との差別化に成功します。逆に、龍谷大からすれば、避けたい事態と言えるでしょう。

 ちなみに、龍谷大学には民進党の有力者・福山哲郎参院議員が理事として名を連ねています。

 また、衆院岡山1区を地盤とする高井崇志議員(民進党・比例選出)が自身のブログで「加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を設置できるように奔走した」と報告しているのです。政権の意向に対する忖度があったという安易なストーリーには無理があることは明らかです。

 政局批判のために、今治市が長年誘致してきた獣医学部開設を手続き上の問題がないにもかかわらず、政権と近いことを理由に中止させようと言いがかりを付ける手法は論外です。違法行為である証拠を示せないのであれば、政局化に利用した責任をメディアは負わなければなりません。

 

 現状では森友学園の問題と同様に野党および一部マスコミの “言いがかり” と判断されるでしょう。しかし、今治市がこれまで続けてきた努力はまったく報われず、政局に利用され、焼け跡だけが残ることになるでしょう。

 医師会や獣医師会はどちらも学部の新設や定員増には反対の立場を鮮明にしています。獣医学部がすでにある地域に新設すれば、大きな反発を招くことは当然です。

 協力要請に難色を示されれば、疫学的に問題が生じることになれば、損を被ることになるのは国民なのです。「獣医学部の空白地域」が存在するのであれば、そこを “特区” に指定することが自然な流れでしょう。反発が最も少ないからです。

 

 マスコミは日本農業新聞が配信したニュースを読み、事態を把握することから始めるべきではないでしょうか。地方は獣医師確保に苦しんでいるのです。違法ですらない陳情を問題であるかのように騒ぎ、地方をさらに疲弊させる野党や都心のマスコミに対する反感は強くなることを自覚する必要があると思われます。

 統計では畜産の盛んな県を中心に公務員獣医師1人当たりの畜産農家戸数が多く、負担感を増している。獣医師1人当たりの戸数が少ない県でも「広大な地域をカバーできる人員数に満たない」(高知県)状況もある。農水省によると、獣医系学部の大学生は首都圏など都会出身が多く、地元の都会で獣医師職に就く場合が多い。団塊世代の退職もあり、地方部で公務員獣医師の恒常的な不足に陥っている。

 (中略)

 獣医系学部に通う大学生の資金支援も活発だ。北海道や東北、中国・四国、九州などの17道県は、学生に修学資金を貸与し、卒業後に県内で公務員や獣医師として従事すれば返還を免除する制度を導入。北海道、青森県、高知県は、獣医系学部に進学する県内高校生に入学金などの資金を支援し、地元出身者の囲い込みを狙う。