ニューヨーク・タイムズ、新聞辞めてブログになるってよ

 ニューヨーク・タイムズがデスクや編集者をカットし、現場記者を最大で約100名増やす方針であると朝日新聞が報じています。

 「電子版が好調」と強がっていますが、新聞が儲かっていないことは事実でしょう。ブログ化を進めることを対策としているのですが、記事の信憑性は著しく低下する形を採用しているため、記事の信憑性は著しく低下することになりそうです。

 

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は5月31日、記事をチェックしたり見出しを付けたりするデスクや編集者を対象に、早期退職を募ると明らかにした。一方で、現場の記者らは最大約100人増やす。読者の声に基づき同紙に注文を付けるパブリック・エディター職は廃止し、電子版のコメント欄を充実させる。

 (中略)

 パブリック・エディター職は、2003年に発覚した若手記者による記事の盗用・捏造(ねつぞう)事件を受けて設けられた。廃止の理由について、同紙発行人のアーサー・サルツバーガー・ジュニア氏は「社内の監視役として中心的な役割を果たしてきたが、今やソーシャルメディアやネット上の読者がより用心深く強力な監視役になった」と説明。読者がコメントを投稿できる記事は現状では1割ほどだが、今後は大半の記事に拡大するという。

 

 

内容の正確さより、スピードを優先する方針に舵を切った NYT

 1本の記事を何人もの編集者が関わっていることが現状でした。この方法は正確性に強みがありますが、時間とコストがかかるという弱みがあります。

 正確性を犠牲し、スピードを優先する決断をしたのですから、ブログと大差はないと言えるはずです。

  • 現行体制
    1. 現場記者が記事を執筆
    2. デスク・編集者が記事を確認
    3. 記事を配信
    4. パブリック・エディターがチェック
  • 今後の体制
    1. 現場記者が記事を執筆
    2. 記事を配信
    3. チェックは読者がコメント欄で実施

 確実に言えることは「雑な内容の記事が増える」ということでしょう。コメント欄に批判が寄せられたところで、管理者権限はメディア側にある訳ですから、コメントを削除することで誤報そのものを握りつぶすことが可能であることを忘れてはなりません。

 

コメント欄で誤報の指摘を受けた際、訂正・謝罪ができるかが鍵

 ニューヨーク・タイムズの取り組みが成功するかは「コメント欄に読者から誤報の指摘があった際の対応次第」と言えるはずです。

  • 反論する
  • 無視する
  • コメントを削除する
  • コメント欄を閉鎖する

 「記事のチェックは読者がコメント欄で行う」と宣言したのであれば、すべての記事を対象としなければなりません。なぜなら、『コメント欄が存在しない=記事のチェックは行われない』ということになるからです。

 また、対応方針で最悪なのは「読者から誤報の指摘を受けた際に、記事をこっそり修正した上でコメント削除やコメント欄の閉鎖を行うこと」でしょう。証拠隠滅をした上、開き直りが可能である運用体制が良いものとは言えないからです。

 

NYT が儲かっているなら、注力すると宣言する調査報道で正確性を犠牲にする意味はない

 調査報道や国際ニュースの発掘、デジタル配信に力を入れると宣言したニューヨーク・タイムズですが、要するに儲かっていないだけです。

 調査報道は速報性ではなく正確性が重要視されることは言うまでもありません。調査対象に対する知識を持った人物が不可欠ですし、通常報道よりもコストが必要となります。主に発表する媒体が紙からウェブに移行したところで費用の大部分は変わらないと言えるでしょう。

 国際ニュースの発掘にしても、伸びしろの大きい途上国のメディアが英語でウェブ配信されれば、現地支局を持たないニューヨーク・タイムスは太刀打ちできる要素は皆無となるのです。

 雑な内容のニュースを配信する方向に舵を切った “主要紙” は報道機関と言うより、“主要紙の看板を使ったブログ” に格下げすることを自ら選択したと言うべきでしょう。これからはジャーナリストと呼ぶより、ブロガーと呼ぶ方が適切と言えるのではないでしょうか。