TPP の合意事項に当事者が納得しているから、EPA が大枠合意に達したのではないだろうか
NHK によりますと、日本と EU との間で交渉が進んでいた経済連携協定(EPA)が大枠合意を達成できたとのことです。
互いの利害が一致した結果だと思われますが、TPP と同じ合意内容があるにもかかわらず、それほど大きな反対運動が起きなかったことです。これは意外だったと言えるでしょう。
日本とEU=ヨーロッパ連合のEPA=経済連携協定を巡って、5日ベルギーのブリュッセルで閣僚協議が行われ、協議のあと岸田外務大臣は、記者団に対し、「閣僚間で大枠合意の達成を確認できた」と述べて、日本とEUのEPA交渉が大枠合意に達したことを明らかにしました。
EPA で大枠合意した主な項目は以下のとおりです。
品目 | 現行の関税 | 合意内容 | |
---|---|---|---|
欧 ↓ 日 |
ワイン | ・15% / L ・125円 / L |
即時撤廃 |
豚肉 | 安:482円 / kg 高:4.3% |
段階的に撤廃・削減 | |
パスタ | 30円 / kg | 10年かけて撤廃 | |
チーズ | 29.8% | 3〜5万トン低関税輸入枠を設定、15年で域内関税はゼロに | |
日 ↓ 欧 |
自動車 | 10% | 発行後、7年で撤廃 |
自動車部品 | 3〜4% | 9割超の品目で即時撤廃 | |
電気製品 | 最高14% | 多くの品目で即時撤廃(テレビは5年の猶予) |
日本側は主力の輸出品である「自動車や家電関連での関税撤廃」を勝ち取り、ヨーロッパ側は「農作物を中心とした関税撤廃」を手にする形で合意しました。
ここで注目すべきは TPP で “重要5項目” と位置付けられた農産物の内、2項目が EPA で締結されたということです。
- コメ
- 麦
- 牛肉
- 豚肉
→ TPP での合意内容:従価税(4.3%)は10年目で撤廃、従量税(482円/kg)は10年目までで撤廃 - 乳製品など
→ TPP での合意内容:段階的に16年目で関税撤廃
農水省が管轄する TPP の合意事項はこちらから確認が可能です。EU と合意に達した EPA は TPP の基本事項とほぼ同じと言えるでしょう。
TPP では豚肉にセーフガードの条項があると記載されていますので、EPA でも同様にセーフガード条項が存在しているかを確認する必要があると思われます。
ヨーロッパでは米食は盛んではないため、関税撤廃で揉める要因にはなりません。また、牛肉の輸出大国という訳ではありませんし、農林畜産の全分野が反対活動を展開する理由がなかったことが交渉がスムーズに進んだ理由の1つと言えるでしょう。
もう1つの大きな理由は「TPP の合意事項」が存在しており、“交渉時の撤退ライン” が非常に鮮明だったことです。
大幅な譲渡を要求された際に、「これ以上は国民の理解が得られない」、「譲歩に対する明確な見返りは何か」と突っ撥ねることができるからです。「TPP で合意した基準を満たすべき」と相手が主張すれば、「そちらも TPP 基準まで緩和するという認識でよろしいか」とカウンターを出していたことでしょう。
関税が下がるということは「消費者が大きな恩恵を受けること」を意味しています。生産者は厳しい生存競争にさらされることになりますが、関税や補助金に依存しすぎている状況は適切な形とは言えません。
時代は変化しており、EPA もその1つと言えるでしょう。消費者のニーズを掴むことは農業でも重要であるはずです。競争原理の波が農業などにもようやく押し寄せたと言えるのではないでしょうか。