NHK はニュースをネットで無料配信し、同時配信の足がかりを築くべき

 NHK が希望するテレビとネットの同時配信を行うための放送法の改正に対し、高市総務相が否定的な見解を示したと朝日新聞が伝えています。

 自らの利権を失う民放が反発することに加え、現行の受信料制度を維持したままでは視聴者からの反感も極めて強いままです。少なくとも、NHK が思い描くプランは理解が得られないことを自覚する必要があると言えるでしょう。

 

 高市早苗総務相は28日の閣議後会見で、NHKがテレビ番組のネット同時配信を行うための放送法改正について「現時点で速やかに改正するべきだとは思わない」と述べた。NHKと総務省は東京五輪に間に合うように2018年に放送法を改正し、19年の同時配信実現を目指してきたが、民放の反発が強く、受信料制度への視聴者の反感も広がっているため、議論を尽くす姿勢を示した。

 

 テレビ視聴からネット配信へと視聴形態が変化していることを否定することはできないでしょう。

 NHK がその流れに乗ろうとする経営判断は正しいものです。しかし、“受信料制度” という「過去の利権」を維持したまま、ネット配信に対する受信料を徴収するという制度は論外と言えるでしょう。

 

1:まず、報道ニュース番組をネット配信すべき

 NHK のネット同時配信には民放が反発するでしょう。しかし、“反発しない分野” がある訳ですから、「その分野に限って先行配信」をするという形できっかけを作ることは可能です。

 反発が起きない数少ない分野はニュース番組です。

 高校野球や大相撲の中継で挟まれる『ニュース番組』をネット上で同時配信すれば良いのです。事実を伝える “報道” であり、識者やコメンテーターのような人物は登場しません。

 また、民放各局も報じることが可能な番組内容であり、すでにネット配信のプラットフォームを持つ民放が反発する理由が存在しないからです。“フラッシュニュース” として簡潔に伝えるのですから、有料にする必要性もないと言えるでしょう。

 

2:キャスターなどの論評が入ったニュース番組は有料のネット配信で十分

 記者やキャスターの “想い” や “伝えたいこと” は千差万別な訳ですから、これを受信料という形で万人から徴収することは間違いです。

 NHK の記者やキャスター、番組制作者の “想い” や “伝えたいこと” はお金を払ってでも知りたいという視聴者に限定して放送すべきであり、それを予算付けする必要はありません。そうした番組はテレビ放送では B-CAS カードを使ったスクランブル化を導入し、ネット配信は有料視聴契約を結んでいるユーザーのみに制限する形を採るべきです。

 見る時間すらない視聴者に受信料制度という形で強制的に支払いを求めることができる現行制度が維持されていることは明らかな “岩盤規制” と言えるはずです。

 

3:ネット時代に粗末な “切り貼り” は容認されない

 ネット配信は優良なコンテンツを作り続ける能力を有していれば、一人勝ちすることは可能です。しかし、ネットを利用できる環境にある人全員が情報発信をできる立場にある訳ですから、いい加減な内容を流すと手痛い反論を受けることになるのです。

 これを理解していない限り、ネット上で失態を続けることになるでしょう。

 一次情報へのアクセスがネットを利用することで格段に容易になったとは言え、そうした人は少数派です。テレビの内容を信じて疑わない “情報弱者” が多数派なのですから、メディアの “切り貼り放送” が有効であることが証明されたのです。

 BPO は放送業界の自主組織ですから、取り締まりに消極的なのは当然です。公正取引委員会のような独立した組織を作り、公平な立場でのチェックを行う状況が整ってから、NHK が希望するテレビとネットの同時配信に向けた法整備を始めるべきなのではないでしょうか。