マスコミがコンサルのリサーチ業にシフトできるという朝日新聞の考えは痛すぎる

 朝日新聞の丹治吉順氏がマスコミの将来像として「ジャーナリズムがコンサルタント業にシフトし、料金を払えるか否かで情報量に差が出るだろう」とツイートしています。

画像:丹治吉順氏によるツイート

 “置いていかれる大衆” と丹治氏は述べていますが、(ネット上などに)タダで落ちてる情報ですら朝日新聞の記事レベルを上回っている現状なのです。実状を正しく把握できていないのは丹治氏だと言えるでしょう。

 

1:情報は金がかかるものもあれば、無料のものもある

 丹治氏の考えで致命的なのは「情報に金がかかる」と決めつけていることです。なぜなら、有益な情報であっても無料で公開されているものは多数存在するからです。

 その代表例は行政が公開している『〇〇白書』といった類の報告書です。

 世界中の政府・行政が税金で調査を行い、その結果を世間に対し、ネットなどを通して無料で公開しているのです。「金をかけずに有益な情報を得ること」が可能になっている時代であることを自覚する必要があるのはマスコミ自身と言えるでしょう。

 

2:企業などが情報に予算をかけるのは “より詳細なデータ” を得るため

 確かに企業(や富裕層)は “情報” を得るために資金を注ぎ込みます。それは自分たちが「特定事項に対する判断を下すために必要となる情報」を求めているからです。

 ここで注意が必要なのは企業や富裕層が金を出しても良いと考えている情報は「データ+正しい解析結果」であり、新聞などのメディアが得意とする “取材で得られた情報” ではありません。

 個別分野では素人程度の知識しか持たないジャーナリストに “自分たちが本業で使用する情報” の収集を依頼する企業がいるでしょうか。企業であれば、新入社員に情報収集をアサインし、知識の集積を促したりするでしょう。

 また、コンサルタント会社にはリサーチ部門がある訳ですから、そちらにデータ収集を委託すれば専門性の高い情報をデータ付きで得られます。つまり、ジャーナリストの出番そのものが存在しない状況なのです。

 

 

3:どんなデータが売れるのかはスポーツが分かりやすい

 企業に売れる情報は “対象者の動向が示されたデータ” です。

 野球であれば、「打球の飛ぶ方向とその確率」が状況別に分類されていれば、プロ野球球団が買い手となるでしょう。サッカーでも状況別に選手やチームの動向が分類されたデータなら高い値段で販売することが可能です。

 一般的な企業で言えば、顧客の購買データに該当する情報です。コンビニの品揃えが良いのはバーコードで「いつ・誰に(どの年齢・性別に)・どのような商品が・どれだけ売れたか」をデータで管理しているからです。

 これらと同等の情報をマスコミが取材で得られるのであれば、ジャーナリストがコンサルタント業にシフトすることは可能でしょう。しかし、データを自力で得ることはできず、取材という名の主観に基づく情報しか提示できないマスコミに料金を払う企業は極めて例外的なケースと言えるはずです。

 

4:公式発表すら正確に報じることのできないマスコミに料金を支払って情報を得るのか

 丹治氏が有望なシフト先と見ているコンサルタント業ですが、「経営結果に責任を持たない」ことを理由に悪評が出ている状況です。

 新聞などのマスコミと同じで「調査をしただけ」、「経営改善案を立案しただけ」と安全圏にいるだけであることが反感を招く要因となっているのです。このような状況の分野に既存のマスコミが参入したとして依頼主である企業が喜ぶような結果をもたらすことはないでしょう。

 データを示した既存のコンサル会社ですら、かなり嫌われているのです。政府が公式発表済の議事録に記載された内容さえ、正確に報じることができないマスコミやジャーナリストが参入したところで悪質な業者が増えるだけで終わることは目に見えています。

 

 「 “有料情報” をニーズのある顧客層に販売する」というのは雑誌・専門誌と同じです。出版不況が叫ばれる中、そちらに近い業界にシフトすると宣言したところで悲惨な結果が待ち受けていることでしょう。

 企業や富裕層に(ある程度の金額を請求する形で)情報を販売するというビジネスでは朝日新聞の現行規模を維持することはできません。「矢野経済研究所の親会社による連結売上高」が「朝日新聞・不動産部門の売上高」と同水準なのです。

 経営破綻後に一部門がコンサル業を行うというシナリオはあるでしょう。しかし、新聞社が企業体質をコンサルタントに特化するというのは絵空事と言えるのではないでしょうか。