21世紀版・新進党と呼ぶべき政治団体、『日本ファーストの会』が始動

 『都民ファーストの会』を母体とし、国政を目指す目的で政治団体『日本ファーストの会』が若狭衆院議員によって設立されたと NHK が伝えています。

 今後、本格始動する形となるでしょう。“第三極” を名乗り、メディアから好意的に取り上げられる様はかつての新進党を彷彿とさせるものです。どういった政権運営が行われるかが注目点と言えるはずです。

 

 東京都議会議員選挙で小池知事が率いる都民ファーストの会を支援し、自民党を離党した若狭勝衆議院議員は、7日国会内で記者会見し、みずからを代表とする政治団体「日本ファーストの会」を設立し、政治塾を発足させることを明らかにしました。

 この中で、若狭氏は「自民党でもない、民進党でもない、もっと新しい、内政・外交の諸課題にしっかりと対応してくれる政党を皆さんが求めていると実感した。政治のプロだけによる政治ではなく、幅広い人材のもとで政治が行われるべきだ」と述べ、みずからが代表を務める政治団体「日本ファーストの会」を設立したことを明らかにしました。

 

 『日本ファーストの会』という党名はおそらく使わないでしょう。なぜなら、“アメリカ・ファースト” を訴えるトランプ政権とイメージが重複し、マスコミ受けが悪くなることが想定されるからです。

 おそらく、かつての新進党のような形を目標としているのだと思われます。日本新党に属していた議員を中心に集め、連合と公明党を引き込めば、『新進党』がほぼ完成するからです。

 

1:新進党に所属していた議員

 新進党は1995年から1997年まで存在していた政党で、自民党を上回る勢いを見せた政党でした。

 新自由主義・小さな政府を掲げる中道右派の政党だったのですが、党内対立が激化。1996年の総選挙では解散前の議席に届かず、翌年には政党が分裂し、消滅した歴史があります。ちなみに、新進党に所属していた主な現役国会議員は下表のとおりです。

表1:新進党に所属経験がある主な現役国会議員
自民党
石破 茂
〔 ← 新生党〕
二階 俊博
〔 ← 新生党〕
高市 早苗
〔 ← 自由党〕
野田 毅
〔 ← 自由改革連合〕
船田 元
〔 ← 新生党〕
公明党
太田 昭宏
〔 ← 公明新党〕
北側 一雄
〔 ← 公明新党〕
山口 那津男
〔 ← 公明新党〕
民進党
岡田 克也
〔 ← 新生党〕
川端 達夫
〔 ← 民社党〕
中川 正春
〔 ← 日本新党〕
野田 佳彦
〔 ← 日本新党〕
原口 一博
〔 ← 新生党〕

 

2:「現役国会議員5名」のハードルはそれほど高くない

 国政政党となるための条件である「現役の国会議員5名」はそれほど難しくないでしょう。民進党の代表選の結果次第という面もありますが、『都民ファースト』をマスコミが好意的に報じているため、追い風が吹くことが考えられるからです。

  • 若狭勝(確定)
  • 長島昭久(フリー)
  • 細野豪志(フリー)

 東京都を選挙区に持つ議員を中心に『日本ファーストの会』に流れる議員が発生することでしょう。“追い風” で小選挙区での当選が狙えますし、惜敗であれば、比例区での復活も現実味を帯びているためです。

 「自民党ではない、民進党でも共産党でもない政党」というキャッチコピーは大衆受けが良く、マスコミも好意的に報じることが予想されるため、政局として一気に動く可能性が大いに存在すると考えられるからです。

 

3:政策の方向性が一致しない議員を数合わせで加えると、新進党の二の舞となる

 ただ、政党として機能するためには政策の方向性が一致していることが大前提です。

 新進党にせよ、民主党・民進党にせよ、“反・自民” という旗じるしで集合しただけで政策の取りまとめができず、瓦解する結果となりました。「小さな政府」と「大きな政府」は方向性が真逆です。真逆の発想を持つ政治家の勢力が拮抗する状況では党そのものが割れる結果となって当然なのです。

 したがって、「意見の割れる政策は党としてどちらに比重を置くのか」を先に決めておき、それを受け入れる政治家を政党に迎え入れるという形で選別することが重要となるでしょう。

 それをしなければ、同じ失敗を繰り返すことになるのです。「2度あること(新進党と民主党の失敗)は3度ある」となるのか、それとも「3度目の正直」となるのかは政党として初期段階で機能しているかがポイントになると思われます。

 

 マスコミが期待する “政局” が発生するのかを注視する必要があると言えるのではないでしょうか。