ソウル中央地裁、証拠はないが怪しいとの理由でサムスンのイ・ジェヨン副会長に有罪判決を下す

 パク・クネ前大統領に対する贈賄の罪に問われていたサムスン電子のイ・ジェヨン副会長に対し、ソウル中央地裁が懲役5年の有罪判決が下ったと NHK が伝えています。

 日本のマスコミは「有罪となった」という判決に重点を置いて報じていますが、見るべきは判決内容でしょう。なぜなら、「証拠はないが心証により有罪とした判決はおかしい」と朝鮮日報が社説で批判している有様だからです。

 

 裁判長は「面会の際、李被告が朴前大統領に明らかに請託を行った事実は認められない」との見方を示したものの、李被告には経営権継承という大きな課題があったことに加え、乗馬への支援がすなわち崔順実被告への支援になること、そしてそれは大統領への金品の提供にあたることを(李被告は)認識していたと裁判長は判断した。つまり朴前大統領と李被告の間で「以心伝心、すなわち黙示的な形の不正な請託」が行われたというのだ。李被告と朴前大統領の間で経営権継承に関するやりとりがなかったのは事実だが、李被告はこれについて朴前大統領が力を貸してくれることを期待して乗馬への支援に応じ、また朴前大統領も様々な形で経営権の継承を後押ししたというのだ。

 

 

1:パク・クネ前大統領を有罪とするための判決

 「イ・ジェヨン副会長がパク・クネ前大統領に請託を行った事実はない」としたにもかかわらず、イ・ジェヨン副会長は『贈賄』で有罪判決が下されました。

 “黙示的な形での不正な請託” というのは日本のマスコミが好んで使っている「忖度」というものでしょう。金品授受などの証拠はないが、怪しいので有罪となったのです。『忖度罪』が存在しているに等しい状況と言えるでしょう。

 今回、イ・ジェヨン副会長が『贈賄』で有罪となった理由は「パク・クネ前大統領を『収賄』で有罪にするため」だと考えられます。

 ムン・ジェイン政権はパク・クネ政権を全否定することが大きな目的です。前大統領を有罪で裁くことができれば、その目的を達成できることは明確であり、そのためには「イ・ジェヨン副会長が『贈賄』で有罪となっていること」が大前提なのです。

 

2:韓国司法を日本のマスコミは批判しないのか?

 保守系の朝鮮日報は8月26日付の社説で批判しています。“立憲主義” を叫ぶ日本のリベラル勢も朝鮮日報の主張に賛同しなければならないはずです。

 根拠に基づき判断を下すべき司法が「物証なし」の案件に対し、心証(≒国民情緒法)で有罪としてしまったのです。

 「時の権力者の意向に沿った判決を出さなければ、報復を覚悟せよ」という意図が透けて見える裁判官の人事をムン大統領は行っています。ムン・ジェイン政権の支持基盤である極左・親北路線に配慮した判決を(暗に)求めることでしょう。

 イ・ジェヨン副会長側は控訴するでしょうが、“国民情緒法” により再び有罪となったとしても不思議ではありません。パク・クネ前大統領とともに吊し上げられることになると思われます。

 

 ムン・ジェイン大統領が「徴用工問題は解決済み」との発言をしたとのニュースが流れていましたが、信用するのは時期尚早です。大法院(日本の最高裁に相当)での判決が出るまでは決めつけることは控えるべきです。

 なぜなら、ムン大統領はポピュリストであり、主張内容が簡単に変わるからです。確定するまでは発言1つ1つに一喜一憂する必要はないと言えるのではないでしょうか。