メディアの記者団、自民・竹下総務会長の「どこが不適切なのか」の問いに答えられず技量不足をさらけ出す

 自民党・竹下総務会長が「島根に(北朝鮮の弾道ミサイルが)落ちても何の意味もない」と発言したことを撤回する気はないとの考えを示したと朝日新聞が報じています。

 この記事で見るべきは、竹下総務会長から「どこが不適切ですか、指摘して下さい」と記者団が逆質問され、どの記者も不適切な部分を指摘できなかった部分です。

 これはマスコミの取材能力が悲惨であることを示した事例と言えるでしょう。要するに、「政治家の言葉尻を捉える」しか能力がないことを現してしまったのです。

 

 自民党の竹下亘総務会長は4日、北朝鮮の弾道ミサイルが島根県などの上空を通過する計画をめぐり「島根に落ちても何の意味もない」とした自身の発言について、記者団から撤回するかどうか問われ、「どこが不適切ですか。教えていただければ、考えさせて頂きますが」と撤回しない考えを強調した。

 首相官邸で記者団に語った。竹下氏は「離島だろうと島根だろうと、落ちれば日本国の安定に極めて重大な事態。その上で戦略的に考えた場合、北朝鮮が島根を狙っていることはないという思いを話した」と釈明したが、発言は撤回しなかった。

 

 竹下氏の発言は事実に基づくものです。「不適切だ」とマスコミが主張するのであれば、「どの部分が不適切であるか」と指摘しなければなりません。

 それをできなかったのですから、単なる “言いがかり” にすぎないことが結果として残ることになるのです。

 

1:日本の国土は等しく重要だが、戦略的価値には大きな差がある

 竹下総務会長の発言を批判したい人は “1億総中流” の幻想を持ち続けているのでしょう。目標として「高い平均値」を目指すことは間違いではありませんが、『価値』という点で地方や地域ごとに差が生じてしまうのです。

 「現実を把握できている竹下総務会長」と「できていないマスコミの記者団」には雲泥の差があるのです。

 『戦略的価値』という点で見た場合、先制攻撃で相手の出鼻をくじく(≒ 戦闘意欲を削ぐ)ことが不可欠です。これは相手から反撃を受けると、自分たちが大損害を被るリスクがあるからです。

  • 東京都(23区):約950万人
  • 神奈川県横浜市:約370万人
  • 大阪府大阪市:約270万人
  • 島根県松江市:約20万人

 弾道ミサイルを日本に発射して最も効果が得られるのは横浜や大阪を攻撃し、甚大な人的被害を出すことでしょう。その上で「次は東京だ」と脅せば、在京のマスコミがあたふたして「北朝鮮と話し合おう、これ以上の被害は防ぐべき」と言い出すことが考えられるからです。

 一方、島根に落とした場合、それと同じことが起きるでしょうか。おそらく、起きないでしょう。なぜなら、戦略的に攻撃する価値(=見返り)がないからです。

 

2:「島根県の戦略的価値は低い」との発言に何も反論できないマスコミの能力不足は深刻

 マスコミ記者団の致命的なのは「どの記者も竹下総務会長の主張に反論できなかった」ということでしょう。テレビや新聞で政治家の発言を勇ましく批判していますが、議論となった時点で何も主張できていないのです。

 これは安全地帯から発言の言葉尻を捉えて、文句を言っていることと同じです。

 「記者たちは “タフな質問” をしている」などと自慢するジャーナリストもいますが、大きな勘違いとしていることは明らかです。「どこが不適切なのか教えて欲しい」と言われ、問題のある箇所を指摘できないのです。

 竹島のある島根県の戦略的価値が低いということはない。北朝鮮のミサイル攻撃による攻撃目標としてのランクは低いという総務会長の意見には最もだが、何の意味もないとの見解は不適切だ

 最低でも、上記の内容ぐらいは即座に指摘しなければなりません。そうしたことすらできてないのですから、マスコミに特権的な待遇が与えられている現状は見直さなければならないと言えるでしょう。

 

 「竹下政調会長と議論になった場合に、論破されることを恐れて議論を避ける」という取材戦術は存在するでしょう。しかし、事実や根拠を示した質疑応答や議論ができないことを示していることにもなるため、取材で使うべきではありません。

 与党政治家の言葉尻を批判することに注力し、発言を切り貼りすることも厭わないのであれば、マスコミの価値はほぼゼロと言えるのでしょう。記者たちの技量不足を深刻に捉える必要があると言えるのではないでしょうか。