第二の消えた年金(約600億円)より、増え続ける年金負担の増額分(年間約1500億円)を問題視せよ

 民進党が配偶者基礎年金に特例として上乗せされる「振替加算」の支給漏れを “第二の消えた年金” と名付け、国会で追求する方針を示していると NHK が報じています。

 しかし、良い手段とは言えないでしょう。特例で加算された総額約600億円で騒ぐのであれば、毎年1000億円超で増え続ける年金の国家負担分を問題とする必要があるからです。

 

 民進党の松野国会対策委員長は配偶者の基礎年金に特例として上乗せされる「振替加算」で総額およそ598億円の支給漏れが明らかになったことを受けて「10万人に被害が出ていると報じられており、大至急なんとかしないと、社会不安が広がってくる」と述べました。

 (中略)

 松野国会対策委員長は記者団に対し「新たな消えた年金問題だ。政府の対応にいろいろ疑問があり、閉会中審査の審議を通じて明らかにしたい」と述べました。

 

 要するに、年金問題で “二匹目のドジョウ” を狙いたいのでしょう。ただ、今回は「特例」として加算されている分が支給漏れになっていたのであり、世間が民進党の姿勢を支持するかは不透明です。

 なぜなら、医療・年金・介護の分野は毎年1兆円ずつ予算が増加している状況だからです。現役世帯の負担が増え続けており、約600億円程度の支給が漏れていた程度では重要度は低いと言えるでしょう。

 

1:「年金の国庫負担増額分」>「第二の消えた年金」

 民進党は「第二の消えた年金」と銘打ち、安倍政権を批判することでポイントを稼ぎたいのでしょう。しかし、取り組むべき問題を間違っています。

 なぜなら、民進党が問題にしようとしている「第二の消えた年金」の総額は約600億円。これは厚労省が平成30年度(2018年度)の概算要求(PDF)で示した年金の国庫負担増額分の半分未満だからです。

  • 2018年度要求分:11兆5705億円
    (前年比 +1.3%、1516億円の増加)
  • 2017年度分:11兆4189億円

 消えた年金(約600億円)で騒ぐのであれば、増え続ける年金負担額(来年は約1500億円)でも騒がなければなりません。“消えた年金” の2.5倍もの額が増え続けている年金負担に取り組まない政治の方が大きな問題と言えるでしょう。

 

2:高齢者優遇政策を是正できない民進党は風前の灯火

 高齢者の絶対数が増えることは確実であり、そこに「手厚い社会保障」を用意すると、選挙で勝てるチャンスは大きくなるでしょう。しかし、しわ寄せは現役世帯を筆頭に企業などの重荷となります。

 経済活動の担い手が負担する社会保障費が大きくなる訳ですから、経済は落ち込み始めます。天引きによって、使える金額が始めから少ないため、財布の中身がない状況なのです。

 したがって、財布の紐を緩める政策を打ち出しても効果は限定的です。中身がないのですから、財布の紐を緩めたところで何も出てこないからです。

 現状の高齢者優遇政策を続けるほど、国の経済力は弱まります。経済的な貢献度が極端に低くなった高齢者に対する手厚い保障をするための予算を現役世帯や企業から税金という形で徴取しているのです。

 ここに手をつけない限り、民進党の存在意義はないと言えるでしょう。

 

 連合の支持を受けているにもかかわらず、労働者の雇用環境を良くするための政策を打ち出せない。過剰な社会保障によって日本経済が “焼け野原” になりつつある現状を変えようという声もあげない。

 巨額の「増え続ける社会保障費」を問題とせず、「消えた年金」を騒ごうとする民進党の姿勢は容認できるものではありません。安倍首相にリベラルが打ち出すべき方針を着実に実行されていることを反省し、より優れた民進党の改善策を提示する必要があると言えるのではないでしょうか。