やっちまった日産、完成車の出荷前検査を無資格従業員が行っていたことで120万台以上をリコールへ

 日産自動車が国内の全ての工場で “出荷前の検査を行う資格を持たない従業員” が検査をしていた問題で「国交省にリコールを届け出る」と NHK が伝えています。

 車両の安全性を担保することに欠かせないチェック体制に不備があることが明らかになったのです。全ての工場で起きていたということは常態化していた可能性があり、原因究明と上層部がどこまで問題を把握していたかが問われることだと言えるでしょう。

 

 日産自動車は、完成した車の出荷前の検査で資格がない従業員に検査をさせていた問題で、2日、西川廣人社長が記者会見し、すでに販売した120万台以上について、検査に不備があったとして、今週中に国土交通省にリコールを届け出ることを発表しました。

 (中略)

 西川社長はリコールに必要な費用について、250億円を超える可能性があるという見通しを示しました。日産は今後、第三者を交えて原因の究明を進めるとともに、国土交通省に再発防止策を報告することにしています。

 

 

1:不正はどこまで組織ぐるみだったのか

 「不正」という時点で世間からの印象は芳しくないことは明確です。しかし、「なぜ不正が起きたのか」という理由によっては世間の反応が変わってくることになります。

 例えば、現場から「検査資格を持つ従業員が不足し、問題が起きている」との声は上がっていれば、経営陣など上層部の問題となります。この場合、問題に対する適切な経営判断ができなかった上層部の責任が問われることとなり、品質へのダメージは少ないと言えるでしょう。

 「資格を持った従業員を新規雇用するか、従業員に資格を取らせるための時間と予算を回して欲しい」との要求が出ていたかの確認から始める必要があります。

 もし、そうした要求すら出ていないのであれば、日産という企業そのものに問題が抱えていることになります。「要求を出しても、上が取り合ってくれることはない」との声が現場にあるのであれば、他にも世間に発覚していない “不正” が存在すると見ておく必要が生じるからです。

 

2:上層部の責任問題にまで発展することは確定的

 無資格の従業員による出荷前検査を上層部が把握していたにもかかわらず、対策を講じていなかったのであれば大きな責任問題となります。

 また、現場が「コストダウンのための手段の1つ」として今回の不正に手を染めていた場合は企業としてのガバナンスを問われることとなるでしょう。いずれにせよ、上層部は何らかの形で責任が問われることが確実と言えるのです。

 日産が吸収した三菱自動車は燃費不正問題で経営状況が大きく傾きました。マズい対応をすれば、さすがの日産であっても経営が傾くリスクがあると思われます。

 

3:「問題のある車両を出荷しないための検査がザルだった」という問題は大きい

 どれだけ工場の生産ラインに資金につぎ込んだとしても、一定の割合で規格を満たさない不良品は発生します。資金を投下すれば、不良品が発生する割合は下がりますが、ゼロにすることは不可能です。

 しかし、出荷前に不良品をチェックで除外すれば、市場に不良品が流通することは防げます。

 出荷前に検査を設けている最大の理由はそれが目的であり、商品によっては検査資格が必要となるのです。日産は「最後のチェック体制」に問題があった訳ですから、規格を満たしていない車両を流通させていた可能性があるのです。

 検査資格を持つ従業員は他の従業員よりも手当などで高給を得ていたことでしょう。このコストを削減するために無資格の従業員に業務を担当させていたのであれば、会社としてそれなりのペナルティーを受けるべきです。

 

 何が今回の問題を引き起こす原因になっていたのか。第三者の調査とともに、マスコミも退職者などに取材し、問題を追跡する必要があると言えるのではないでしょうか。