「日本が同性愛者の死刑を非難する決議に反対した」と批判する松岡宗嗣氏のような人が確認すべきこと

 “LBGT の権利” を主張する活動が日本でも起きています。

 その中で松岡宗嗣氏が自身のブログで「日本が同性愛者の死刑を非難する国連決議に反対した」と批判しているのですが、これはミスリードです。なぜなら、松岡氏が見落としている条項が決議には含まれているからです。

 

■ 松岡宗嗣氏などの主張

 松岡氏など LBGT の権利を訴える(または理解を示す)人々の主張は彼がブログの冒頭に書いた内容に集約されています。

 9月29日、国連人権理事会で「同性愛行為が死刑の対象になること」に対して非難する決議が出されたが、日本はこれに反対票を投じた。

 同性間性行為が死刑になることに対して、日本は「仕方がないと思っている」という立場なのだろうか。

 松岡氏が決議の文書を意図的に見落としたのかは不明ですが、決議文書の全体を確認すると、日本政府が反対票を投じた理由が浮き彫りとなるのです。

 

 

■ メディアや松岡宗嗣氏が触れない事実

1:決議の内容

 問題の決議ですが、国連人権委員会に提出された『死刑の問題(The question of the death penalty)』という決議文(PDF)です。

 勘の良い人は “隠された狙い” にもう気づいたことでしょう。

 決議は全14項目で構成されており、同性愛に関する記述は項目6に存在します。しかし、それ以外の項目には別の要素が記述されており、そこに日本政府が反対する理由があったのです。

画像:決議に含まれた問題点

 

2:LBGT などを理由にした「死刑制度廃止の決議」が実体

 LBGT 関係で騒ぐ人がいますが、決議の全文を見た上で「日本が同性愛者の死刑を非難する国連決議に反対した」と主張しているのであれば、かなり筋が悪いものです。

 なぜなら、2項に「市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書に署名していない国への批准を求める」とあるからです。

  • LGBT は死刑
    1. 「LBGT は刑罰の対象」という刑の内容を変える
      (=死刑制度は存続)
    2. 死刑制度を廃止すれば、LGBT が死刑になることはない

 死刑制度を存続させ、「LBGT は死刑」という考えに反対することは可能です。『A』で示したように “刑の対象” から LBGT を外せば、LBGT という理由で死刑という罰を受けることがなくなるからです。

 しかし、一部で騒がれている今回の決議は『B』の考え方に基づくものです。死刑制度廃止を求める議定書である「市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書」の内容が日本政府にとって容認できないものなのですから、決議に反対することは当然なのです。

 

3:「死刑の廃止・モラトリアムの義務づけ決議ではない」という主張は “騙し討ち” である

 決議の提案国は「死刑の廃止・モラトリアムの義務づけ決議ではない」と述べていますが、項目2で『市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書』を要求しているのです。

 義務づけではありませんが、死刑廃止・モラトリアムを目論んだ内容であることは自明です。

 つまり、「決議に賛成した(議定書未締結国への批准を要求した)のだから、自分たちも批准すべき」と “手のひら返し” が行われるのは確実であり、堂々と反対票を投じた日本政府の姿勢は評価されるべきものなのです。

 

4:極左過激派と歩調を合わせることになる死刑制度廃止運動から LBGT は一線を画すべき

 LBGT で知的な人は「日本政府が決議を反対した」という今回の騒動から距離を採るべきです。なぜなら、死刑制度廃止運動の鉄砲玉として利用される可能性が高いからです。

 日本は『市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書』を締結していません。その理由は「死刑制度廃止という目的の議定書だから」です。

 この議定書を締結すると、“いかなる理由” が存在しても、誰も死刑にすることはできません。また、議定書締結国は死刑廃止に向け、必要な措置をすべて採ることを義務付けられることになるからです。

 「外患誘致罪は死刑」と定められていますが、これを無効にしなければなりません。また、武装革命を企てている極左過激派は「同士が死刑になるリスクをゼロにできる」という大きな恩恵を受けられるのです。

 つまり、LBGT を “隠れ蓑” に我田引水をする不届き者に利用される可能性が高いのです。ピュアな LBGT ほど使い勝手の良い鉄砲玉になることでしょう。死刑制度を廃止することだけが LBGT の権利を守られる唯一の方法だと思い込まないことが求められているのです。